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「人を容るゝ気象」と「物を蓄る器量」が誠の大臣の体

重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(11)日々の送り方がリーダーをつくる

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
東洋思想研究者・田口佳史氏による『重職心得箇条』の解説。今回は非常時に力を発揮しなければならないリーダーが、その備えのために日常で心得ておくべきことについて考える。どれも、現代のビジネスの現場で今日から心がけたいことばかりだ。(全15話中第11話)
時間:11:09
収録日:2016/02/03
追加日:2016/06/13
タグ:
≪全文≫

●経営は「区分」と「順番」が肝心


 その次、第10条です。

 「政事は大小転重(けいちょう)の辨(べん)を失ふべからず。緩急先後の序を誤るべからず。徐緩にても失し、火急にても過つ也。着眼を高くし惣体を見廻し、両三年四五年乃至十年の内何々と、意中に成算を立て、手順を遂(おふ)て施行すべし。」

 「政事」は「政治」と言ってもいいし、「政(まつりごと)」と言ってもいいですね。また、この「政」というところを、「経営」と考えていただいても結構です。

 これは要するに、非常時が前提ですから、非常時になると、いろいろなところから、いろいろなことをどんどんどんどん言ってきます。そのときに、「言われてすぐに取りかかっては駄目だ」と言っているのです。そして、まずやらなければいけないのは、「大小転重の辨」です。「辨」とは、「区分」という意味です。ですから、大きいこと、小さいこと、それから、軽いこと、重いことに区分するということをまずやってください。

 次が「緩急先後」ですが、これは、「緩」は緩やか、「急」は急いで、「先」はまず先に、「後」は後でよい。「序」はプライオリティですね。こういう順番をしっかりしてくれと、言っているのです。

 つまり、経営というのは、この「大小転重の辨」と「緩急先後の序」というものから成り立っているのです。これは、私も自分でやってみましたが、本当に完璧にできるまでは、やはり5、6年かかります。これからトップになろうという人は、今のうちから腕を磨いておかないといけないものです。


●高い視点から見て、全体を見回すこと


 「徐緩にても」は、ゆっくりしすぎても失する。「火急にても」は、急ぎすぎても駄目。そして、次が重要です。「着眼を高くし惣体を見廻し」と言っています。つまり、「着眼点を高くしろ」「見るときに高い視点が必要なんだ」と言っているのです。これは簡単に言うと、「大局観」ということを表しているのです。

 先の大津波、原発事故のようなときを一つ例にして申し上げれば、やはり着眼がもう少し高く、例えば、地球規模であるべきだったという意見は非常に多く、全くその通りだと思います。それから、惣体、全体を見なければいけない。ですから、福島なら福島のことだけ見るのではなく、全国規模でどういう状態になっていて、どういうことが福島に関係するのかという状況、...
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