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「核テロリズム」の脅威が高まっている――常万全

モスクワ国際安全保障会議(3)存在感を増す中国

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
歴史学者・山内昌之氏は、2016年4月27~28日にモスクワで開催された第5回モスクワ国際安全保障会議に出席し、討論にも参加。山内氏は、誰のどんな言動に注目したのか。また、それはなぜなのか。識者の眼力が光るレポート第3回。(全4話中第3話)
時間:07:04
収録日:2016/05/09
追加日:2016/06/30
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≪全文≫

●存在感を増す中国。常万全国防相が核テロに警鐘


 皆さん、こんにちは。モスクワで開かれた「第5回国際安全保障会議」の話を続けます。

 そこでは、中国の存在感が圧倒的に目立ちました。誇張して言えばロシア側をしのぐのではないかとも思いかねないような、人民解放軍の軍服を着た大変多くの中国人たちが会場のあちらこちらで目につき、私のおおよその見当では70人を下らず100人に届かないとおぼしき多数の中国人代表団の存在が目立ちました。

 開会セッションに引き続き開かれた「地球規模の安全保障への主要な脅威としてのテロリズム」という全体セッションにおいて、常万全国防相が登壇するに及んで、人々の関心も高まりました。常万全は、「核テロリズムの脅威が高まっている」という大変重要な指摘をしました。この核テロリズムとは、ISやヌスラやアルカイダが核爆弾あるいは核物質を入手することによって、大変危険な、国家間では制御できない、核によるテロを行うことを指したわけです。併せて二つ目には、こうした核テロなどを技術として習得したテロ組織の戦闘員が国境の外から自分たちの母国へ戻ってくるという危険性があるということに注意を向けていました。これは中国にとってはウイグル、ロシアにとってはチェチェンを意味するものと思われます。


●新疆ウイグル自治区に関する西側諸国への批判


 常万全は、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣やセルゲイ・ラブロフ外務大臣同様、テロについて西側諸国、米欧はダブルスタンダードであると指摘しました。すなわち、西側諸国はあたかも「良いテロ」と「悪いテロ」を区別するようなところがあるけれども、テロには良いテロや悪いテロという差はないということです。ここで中国が、新疆ウイグル自治区で活動している東トルキスタンイスラム民族運動(ETIM)を念頭に置いていることは言うまでもありません。このETIMに対して、アメリカ、ヨーロッパの主要国、そしてトルコなどにおいては、彼らの運動が中華人民共和国に対する抵抗権、すなわち民族自決権のあらわれだとして、活動の拠点を開設したり、あるいは印刷物の刊行、発行を認めたりする傾向があることに対して、それとなく批判したわけです。常万全は、エスニックアイデンティティと宗教的なアイデンティティが重なるような、エスニックかつ宗教的なアイデンティティが危険である...
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