●世界経済は成熟し景気下降に
最後は、世界経済の展望と課題についてです。どういうことかというと総括展望です。今、長期景気が終焉しつつあります。アメリカは10年以上続きました。この夏まで続くとアメリカは歴史上最大の景気になります。日本は、すでにこの1月で日本史上最長の景気になりました。
ですが長期景気ですから、成熟するのです。成熟とはどういうことでしょうか。経済は、労働力や資本があって動くわけですが、需要がずっと続いてそれを使い切ると労働力が不足してきます。今、現に起きています。日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、ものすごく労働力不足です。特に日米は非常に不足しています。
それから、資産、お金が余っていますから、高騰します。それから、経営者がもうそろそろ終わりかなって思い出すと期待成長率が下がってくるのです。リーマンショックが終わってしばらくは、さあこれからだ、といって期待成長率が上がっていたので、一気に上がったということがあります。今はどの経営者に聞いても、これから一気に上がるとは、なかなか言わないと思います。
したがって少し下がってきます。そうすると、これでは投資が起きません。労働力不足と資産高騰と投資不足で、この景気下降は本物になります。景気が後退するかどうかというのは少し分かりません。だから、緩やかにいけば、つまりソフトランディングで、世界経済は3パーセントぐらいで成長すると言っていますけど、0.5パーセントぐらい下がってなんとかいくでしょう。
ただしハードランディングすると、とんでもないことが起きるのです。リーマンショックの時がそうでした。さらに悲観的な人は、2019年の夏にクラッシュが起きる、と言っている人もいます。それが、いつ起きてもおかしくないのが、今の状況です。
●オリンピック後に日本経済は崩壊する可能性がある
日本の場合、オリンピックが終わると、さまざまなことが終わってしまっているので、物価はどっと下がります。1964年の東京オリンピックの時は本当に下がりました。そこに至るまでずっと日本は財政規律をもって赤字国債を一切出さなかったのに、オリンピックで新幹線と高速道路をつくった後ですから、一気に落ちました。とうとう赤字国債を出して、それが今日の日本の財政問題になっているのです。
今回はそれほどひどくないでしょうが、まず、一気に落ちるのは確かでしょう。ただ、そのようなに落ちなくても、幻冬舎からでている『日本経済 瀕死の病はこう治せ!』という本の中に書いてあるのですが、あと10年か15年、おそらく真ん中を取って13年たつと、何にも起きなくても、日本が経済破綻へと進んでいくでしょう。
それは、なぜかというと、高齢化がどんどん進んでいるからです。そうすると貯蓄が減ってきます。ところが、高齢になればなるほど医療費がかかりますので出費が逆に上っていきます。
純貯蓄総額(家計純金融資産残高)が約1,300兆円あります。政府の総負債が約1,200兆円あります。あと13年で、これが逆転します。逆転するネット(純粋な)の貯蓄がなくなるので、新規の国債を買うことができません。しかし、買わないわけにはいきません。政府は30兆円以上をネットで国債を買っていますので外国に頼みます。外国は、今の日銀相場では買えません。日銀が出た国債をほとんど買ってしまうので、高値に張り付いていて金利が低いのですが、普通の値段で買うと金利はぐっと高くなります。
そうすると、金利は1パーセントもなく0.いくつなので、この財政赤字も平気で企業はジャブジャブお金があるということで、財政規律はまったくないと言っているのですが、金利が1パーセントに上がればどっと増えてきます。なんと金利が1パーセント上がると、日銀は当座預金に預かっているお金に4兆円を支払わなければならなくなって、日銀の経営が崩壊するのです。3パーセント上がると税収が全部飛びます。金利が1~2パーセント上がるとなると、中小企業に対しては3~4パーセント上がることになるでしょう。上がり出すとどっといきます。そうすると、それが静かに進んでも今から15年後に日本経済崩壊は起こり得るシナリオです。
●世界恐慌のトリガーは5つある
そういうシナリオのトリガーを引くのは誰でしょうか。とんでもないトリガーを引くものがあるのです。5つ言います。1つ目はドナルド・トランプ大統領です。トランプ氏の経済政策は、加熱している景気に減税したのです。油が湯立っている油ところにさらに加熱するようなことをしました。一気に株価が上がります。
ですから、ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度)議長がとにかく水や砂を掛けて止めようとしているのです。あれをやらなかったら、スタグフレーションが起こり、そうすると、必要もない世界恐...