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米中の狭間で日本はいかに進むべきか

米中関係を見抜く(4)日本は世界史の実験場になる

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
概要・テキスト
中国の「永遠の隣国」である日本は、米中のせめぎ合いの中で、一定の自立性を確保しながら、新たな理想を掲げることで、自らの生きる道を確保していくべきであろう。日本が自立性を保つためには、国力の再生が必要である。それゆえ令和の時代における日本の最重要テーマは、失った経済力を回復させ、良い意味で内向きになることである。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:14:37
収録日:2019/06/28
追加日:2019/09/04
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≪全文≫

●日中関係は宥和傾向にある


中西 対日戦略についても、ものすごくうまくいっていますね。現在ではすでに日中修復を超えて、日中再接近といった状態です。

―― 日中関係については完全に機能が戻ったという話をしていますね。

中西 戻りましたね。安倍政権の標語も、「永遠の隣国」となり、日中修復を一生懸命進めようという姿勢がみられます。こうした動きは、日米関係に亀裂を生じさせるのではないかと、私は逆に心配にはなりますけれども、恐らく中国外交のてこ入れが効いたのでしょう。日本の某政党の幹事長は、やはりこうした情勢をうまく見極めているのだと思います。そのためアメリカだけでなく、中国にも軸足を持たなければならないという判断に至ったのです。これは日本の大きな国益からいうと、これは決して間違っていません。


●中国はアメリカと対等な関係構築を目指している


中西 いずれこの勝負(米中対立)は、アメリカが徐々に宥和されていって、恐らく新型大国関係に向かっていくでしょう。新型大国関係というのは、アメリカがバラク・オバマ政権のときに、習近平が2013年に初訪米し、カリフォルニアで首脳会談を行った際に使われた言葉です。きれいごとで言えば、米中はこれから覇権を争わず、共存共栄できるような新しい関係をつくっていくのだ、2つの大国が並び立つのだ、ということを意味します。「1つの山に2匹のトラは共存できない」という中国の諺があるのにもかかわらず(笑)、こうした少しおかしいな思う標語をつくったのが習近平政権です。

 しかし私は、これは成り立つと思います。なぜかと言うと、今や戦争ができない時代だからです。宇宙開発やドローン、AIなど、あらゆるテクノロジーを用いた大国間の戦争はあり得ません。核相互抑止という次元をはるかに超えて、戦争は考えられないからです。戦争がなければ、大国としての立場を守ろうとする場合、徐々にではあれ共生共存していくしかありません。

 これはものすごく大きな、長期的な視野です。2030年代の終わりから2040年代までのタームをここでは想定しています。恐らく私は、そのときのことを考えると、「永遠の隣国」という安倍政権の標語はものすごく先見の明があり、よく考え抜かれていると思います。ただ、アメリカがしゃかりきになっている現在、この言葉は妥当なのかという政策的な疑問はありますけれども、長期戦略...
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