●松下幸之助も着目した科学的思考
―― 先生、松下幸之助の『道をひらく』という本の中にこんな文章があります。
これは、科学的思考といえるでしょうか。
岡部 まさにその通りです。「なぜ?」、その原理、その背景にあるものを追究していく。ただ、大人になるとやらなくなるのですよね。
―― はい。ではその次の文章に進みます。
これって、科学的思考でいいですよね。
岡部 まさにそうです。今日は、「なぜ」ネタでいきましょう。
―― 是非。
●氷と塩を混ぜたらどうなる?
岡部 例えば、氷と塩を混ぜたらどうなるか。
―― 氷と塩を混ぜたらどうなるか。
岡部 考えられることはありますか。何が起こりますか。
―― 塩を混ぜると冷たさが少し持続すると思います。
岡部 なぜですか。
―― 全く分からないですね。氷枕に氷を入れて水を入れて塩を入れる、そうすると長持ちすると。
岡部 冷たくなりますね。まさにそれです。それはなぜでしょう。それを考えられたことはありますか。おそらく子どもは、氷と塩を混ぜたら、氷枕が冷たくなるとか、持続する、というのをお母さんに「なぜ」と聞くんですね。
―― なるほど。そうか、僕は「なぜ」と聞くことが全くなかったですね。
●透明な氷を作るにはどうしたらよいか
岡部 今日はそんな話をしようかなと思います。あともう一つ、用意しているものがあります。僕たちはお酒を飲む機会がありますね。透明な氷を作るにはどうしたらいいか。僕たちがバーで飲むときは、すごく綺麗な透明なロックアイスです。かたや僕は自宅で暑かったら、フリーザーから氷を取り出しますが、白くて濁った氷です。あれはなぜですか。
―― 不純物が入っていると白くなるのですか。
岡部 不純物とは何ですか。
―― 不純物って何なのかな。冷蔵庫の氷は白いですよね。バーで飲む氷は真っ白(透明)ですよね。軽井沢でとってきてもらった氷も真っ白(透明)ですよね。
岡部 なぜですか。これも今日、ネタとして持ってきました。
●高濃度のアルコールを作るためにはどうしたらよいか
岡部 あと、僕たちは、今日はワインでいくか、ブランデーでいくか、ビールでいくか、ウィスキーでいくか、と考えます。それぞれアルコール度数が違うじゃないですか。高濃度のアルコールを作るには、どうしたらいいか。これはどうですか。
―― 酵母が必要で、醸造しないとダメですよね。
岡部 醸造したら、まずは醸造酒ができますよね。それは、最大でも(アルコール濃度は)20パーセントほどです。でも、今日は濃い酒がほしい、と。ブランデーだ、泡盛だ、焼酎、いやウィスキーだとなったとき、どうしたらいいか。
―― 何回もこすんですかね。
岡部 こしますか。
―― どうやったらいいのですか。
岡部 茹でるんですね。蒸留酒です。では、なぜ茹でたら(アルコール濃度が)濃くなるのでしょうか。
―― 水分が飛ぶからですかね。それとも無駄なものが飛ぶからですかね。
岡部 無駄なものが飛ぶのか、アルコールが飛ぶのか、どっちかですね。そのあたりのことをお話をしようと思います。時間があれば、例えば塩水から純水を作るにはどうしたらいいか、ということを今日、お話のネタとして持ってきました。
―― ありがとうございます。
●水、塩、アルコール、油はどれくらい溶けるのかが異なる
岡部 まず基本的なことですが、ここに資料があります。
水、塩、アルコール、ついでに油を用意しました。これらを混ぜるとどうなるかという話です。また、混ぜたものをどうやって分離させるか。そういうことを、今日サイエンスしようと思っています。その前にいろいろ質問して、理解度チェックもやりますけども、そんな失礼が許されるのでしょうか。
―― いえいえ。とんでもないです。先生、ありがとうございます。
岡部 あと、もう一つ、常に気にしなければならないのは、水、塩、アルコールは必ず空気と共存している、ということです。場合によっては、水蒸気とも共存しています。ここらへんが大事なポイントです。
例えば、ご存じでしょうけど、水というのは、必ず空気と共存しているので、(水の)中に酸素が入っていますね。水槽の中の金魚が生きているのは、水を食べて生きているのではなく、(水に溶けた)酸素を吸って生きています。
―― そうか、水の中の酸素を吸っていますね。
岡部 水槽の中で金魚がずっと生きているというのは、水の中には酸素がありますから。そういう前提があります。あともう一つ、水の中に塩を入れると、...