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「透明な氷」を作るときの考え方は工業的に応用されている

科学的思考はなぜ大切か(3)工業的な応用

対談 | 岡部徹神藏孝之
概要・テキスト
「透明な氷」を作るときの考え方は、工業的に広く応用されているという。また、透明な氷の作り方にはいろいろな方法があり、どの方法が最適であるかは、状況によって異なる。大事ポイントは、自然科学的な理解のもとに様々な方法を考えれば、必ず適切な方法にたどり着くということだ。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:08:36
収録日:2019/08/30
追加日:2019/09/27
カテゴリー:
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≪全文≫

●「透明な氷」を作るときの考え方は工業的にかなり応用されている


岡部 こんな教養的な話ばっかりでは面白くないので、僕の関わっている金属生産についての話をします。こういう透明な氷を作ること(ガスを含まない氷を作ること)は、要は不純物が少ない氷、製品を作るということです。これは、工業的にかなり応用されています。

―― レアメタルもこの一種ですかね。

岡部 はい。

 これを応用したものはいろいろあるのですが、昨日用意する際に考えたのは帯溶融(精製)法(Zone melting/refining)と偏析法(Segregation method)というものです。僕たちの学問分野では、普通によく使う方法として、超高純度の金属や化合物を作るときに工業的に今も応用されています。

―― 今も応用されているのはすごいですね。

岡部 例えば、コンデンサーに使う超高純度アルミニウムです。アルミニウムというは、皆さんが使っているものでも十分高純度なのですが、コンデンサーなどに使うのは、電子材料ですからさらに高純度です。これは何をやるかといえば、偏析法というものを使いまして、1回アルミニウムを溶かして、ゆっくり固めていきます。氷と一緒です。ただ、どんどん固まっていき、最後に溶け残ったものには不純物が多いのですけど、それを捨てるんです。それを何回かやると、かなり純度がいいアルミニウムができます。

―― なるほど。取り除くわけですね。

岡部 はい。僕は聞いたことがないのですが、昔、水の質が悪かった頃、寒い地域では外に水を置いておいたら、外から凍っていき、最後に溶け残った水は捨てて、お昼になったらその氷を溶かして飲むと、これがおいしいそうです。

―― それで蒸留するわけですね。

岡部 まさにこれが偏析法とよばれる高純度化手法です。要は、凍ることによって不純物を外に押し出すということです。氷が空気を外に押し出すのと同じです。これは普通に工業的に使われています。

 ただ、もっと凝った方法があります。帯溶融(精製)法という方法で、金属の塊を片方から順々に溶かしていくのですね。どんどん溶かしている部分をずらしていくと、不純物が次第に外側に来るんです。

―― なるほど。同じことなのですね。


●不純物を取り除く技術は半導体の基礎となった


岡部 同じ...
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