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「WeChat」がSNSの王者に上り詰めたテンセントの衝撃

中国、驚異の情報革命(6)テンセントと革新企業群

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
アリババの後に控えるのが、「SNSの王者」ともいわれるテンセント(騰訊、Tencent)である。無料メッセンジャーアプリ「WeChat」は、今やSNSの域を超え、中国全土で人々の生活に不可欠なインフラとまでいわれている。さらに「中国のグーグル」と呼ばれるバイドゥ、シェアリング・サービスではディディチューシンと、中国を支える企業の顔は明るい。(全7話中第6話)
時間:07:29
収録日:2019/11/11
追加日:2019/12/29
カテゴリー:
≪全文≫

●テンセントのスタートはQQから


 では、テンセント(騰訊、Tencent)についてお話をします。この会社は馬化騰(マ・ホワ・タン)が創業しました。英語でポニー・マーとも名乗っています。

 SNSを起点として非常に幅広く、ゲームなどのデジタルコンテンツ、決済、金融、AI、医療サービス、AWS(アマゾン ウェブ サービス)のようなクラウドサービスと、ありとあらゆるものを手がけています。

 最初に馬氏が始めたのは、QQメッセンジャーサービスというオンラインサービスアプリです。イスラエルの会社が「ICQ」と呼んでいたのを、中国語版では「OICQ」と呼びました。

 当時はまだネットが発達しておらず、コンピュータでこれを用いるとサーバーにうまく保存できない事態が起きたので、非常に工夫を重ねます。それにより人々の支援を得て、やがて中国最大のメッセンジャーサービスに成長したのです。

 その後、ICQを開発したイスラエルの会社を買収したアメリカ企業に知財侵害で訴えられたので、名前を「QQ」に変えました。この名前はやがて「QQ秀(QQshow)」として人々に非常に愛されます。

 この頃、NTTドコモの開発したiモードが、世界的な技術として注目されていました。それで、中国のチャイナモバイルが、モバイルインターネットを開始しようとする時、興味深いので一緒にやらせてほしい、と乗っていき連携していこうと思ったテンセントですが、すぐに解消となってしまいます。

 馬氏は、それならば自力で開発しようと決意し、懸命に努力して開発したのがQQshowです。もともとは、マーケティング部門の発案によるものでした。テンセントという会社は面白くて、「つくった商品を売る人が、開発をしていい」という商品マネジャー制を取っています。世界の企業のなかでも珍しい制度ですが、この成功を起点としています。


●生活に必要不可欠なインフラとなった「WeChat」


 それから「ウィチャット(微信、WeChat)」です。これはたいへんな開発ですが、開発部隊にいた張暁龍という人が、アメリカで先行している無料メッセンジャーアプリを見て、同様なサービスの開発を提案したのがきっかけでした。

 その頃、テンセントでは同じようなことを数部門でやっていたのですが、馬氏はさすがの決断力を見せ、コストが重複しても構わないから、1グループでも早く開発ができたものにやらせようとします。これは、後にテンセントのなかで、「社内競馬制」となります。これも世界的にユニークです。誰がやってもいい、先にやった者に権利を与える。ということで、社内で競わせたわけです。

 ちょうどこの年、アップルがスマホを開発したものですから、中国ではシャオミ(小米)が「ミーハオ(米聯、Mihao)」という類似品をリリースします。先行したのはミーハオでしたが、WeChatはたちまち改良を重ねてこれを凌駕します。登録者数は2012年に1億人、2013年には3億人ということで、WeChatは今やSNSサービスの域を超え、人々の生活そのものに必要不可欠なインフラになりました。

 アリババも同様のサービスを開発しましたが、WeChatにはさすがに勝てず、WeChatがSNSの王者になっています。

 急成長したテンセントに対する世間の批判や風当たりが強くなってきたので、馬氏はビジネスインフラ「公式アカウント」の開放を決断します。サービスの提供者と利用者をつなぐツールとして、購読、サービス、企業アカウントなど、いろいろなアカウントを作ります。数千万人がこれに加入して、アカウントを開設しました。

 テンセントとアリババの、あまりに急激で強烈な発展は既存産業に非常な衝撃を与えます。いろいろな企業と連携して、オープン開発を進めるものですから、ますますテンセントやアリババは、総合プラットフォーム企業として発展していくわけです。


●中国のグーグル、「百度(バイドゥ)」の実力


 アリババやテンセントの後を受けて、いくつかの企業が凄まじい発展をしています。例えば「バイドゥ(百度)」です。「中国のグーグル」ともいわれ、バイドゥ検索、地図、翻訳、動画ストリーミングサービスなどなどを手がけています。

 中国政府はバイドゥに「次世代人工知能の開放・革新プラットフォーム」プロジェクトを委託しました。とくに「自動運転」をさせようということです。

 バイドゥは早くから自動運転に取り組んでいて、「高精度3次元地図」や「ローカリゼーション(自動位置特定)」、センシング・行動予測、運行プランニング、運行インテリジェントコントロールなど、自動運転に関わる技術開発を進めてきました。

 これらの蓄積の上に2017年4月、バイドゥは世界に向けて自動運転プラットフォーム「アポロ計画」を発表したのです。世界の関係企業数十社が殺到し、今やメンバーとして参画しています。...
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