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1000年昔はどこの国も皆、同じだった

2050年の世界を考える―世界の現状(1)視点1:豊かさは再び均一化していく~その1

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
2014年8月3日開催「プラチナ未来人財育成塾@会津」におけるプラチナ構想ネットワーク会長・小宮山宏氏講演「2050年の世界を考える」を収録。次の世代を担う中学生たちに向けて、小宮山氏が熱く語りかける。(全17話中第1話目)
時間:06:04
収録日:2014/08/03
追加日:2014/09/25
≪全文≫

●節目の時期に必要な新しいビジョン-プラチナ社会


 2050年は、今から36年後ですね。そうすると、君たちは50歳になっているとかならないとか、だいたいそういう時代です。何か事故がなければ、必ず君たちは生きていますね。そのときは僕も生きているつもりです。36を足すと、僕は105歳になります。今、もう105歳というのは、頑張れば何とかなりますよね。ですから、僕も何とか2050年というところまでは見てみたいなと思っています。そういう時代です。まさに君たちが社会の中核としてやっている時代、それが2050年。ですから、そのあたりのことまでは考えて、ビジョンや未来を設計しないといけない。この辺は、多分君たちは同意してくれると思います。

 それでは、僕がどう考えているのか。若い人に「頑張れ」とは皆よく言いますが、大人も頑張らないといけないわけです。僕は今、世界をどのように考えているのか、その中で日本をどのように考えているのか、最初にそういう話をします。

 答えから言うと、今、もう世界は人類が初めて経験する、非常に大きな節目の時期だと僕は思っているのです。そういう話をします。

 それから、そういう節目のときには、新しいビジョンが必要だと思っています。それを、僕は「プラチナ社会」と言って提案をしています。それが、この「プラチナ未来人財育成塾@会津」の「プラチナ」という言葉の意味なので、そういう話をします。


●長い目で見ると「今」が分かる


 これは、少し見慣れない図だと思います。今、日本の経済がどうだとか、アベノミクスだとか、いろいろなことが言われていますが、そういう1年単位の話もとても重要なのですが、先ほど言ったように、今は人類の節目の時代ですから、この図の横軸を1000年でとってあるように長い目で見てみると、やはり「今」というものが見えてくる。そういうことがあるのです。

 この図は何を軸にとったかというと、横は1000年で、縦はGDPです。GDPというのは分かりますか? 生産量というか、生産速度というか。1人当たりのGDP、生産量。これは大体、1人当たりの収入と考えてもそれほどおかしくはありません。その生産額、収入が縦軸になっています。


●先進国と途上国ではGDPに大きな差があった


 収入はもちろん、この1000年前と今とを比べると、おそらく大体1000倍ぐらい、皆、物質的には豊かになっているのです。これは、いろいろな国の1人当たりの所得を書いたものですが、その時その時の世界平均の1人当たりの所得で割った値を示しています。

 アメリカや日本やイギリスなど先進国では、1人当たりたくさんの収入があるわけです。それが3や4という値になっています。これはどういう意味かというと、「君たちは1人当たり世界の平均よりも3倍か4倍の収入があります」ということです。これはお母さんが稼いだり、お父さんが稼いだりしているわけです。

 それと比べると、これはインドと中国を書いてあるのですが、値が一番のいわゆる先進国と、途上国との間に収入に差が出たときには、先進国が4などで途上国が0.1ですから、40倍ぐらいの差があったということを示しているわけです。


●1000年前は皆が食べるのに精一杯だった


 ところが、1000年昔になってみると、どこの国も皆、1人当たり同じ収入なのです。これはどういうことなのでしょうか。つまり、イギリスが先進国だ、日本が先進国だ、どこが遅れている――そのようなことが無かった、ということですね。1人当たり皆、所得が同じぐらいでした。これはどういうことかというと、「皆、食べるのに精一杯だった」ということなのです。ですから、「産業」と言っても、ほとんどが食料をつくる農業なのです。そういう状態が、ずっと続いていました。

 日本でも、江戸時代は、1000年単位で見ると大して昔のことではありません。100年、150、160年前、そのような感じです。この辺の時期、江戸時代でも85パーセントの人は農民でした。ですから、その前の時代は、ほとんど皆、農民でした。

 これはどういうことかというと、穀物が中心ですが、「食べるものをつくるために皆、働いていた」ということです。テレビなどありません。自転車なども無い。車なんてもちろん無い。そういう時代には、国の間に1人当たりの収入の差がほとんど無かったということを、これは示しているわけです。
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