●新たな見立てでいかに独自性を生み出すか
次が新たな見立てでいかに独自性を生み出すかという、組替のステップになります。基本的には、生んだビジョンなり、アイデアなりに、なかなか独自性が生まれないという課題があります。
独自性を生んでいくためにどうするのかについての一つのポイントが、自分の違和感から始めるということです。その違和感を突き詰めて、世の中にあるサービスや社会の構造のどこに違和感を持っているか、あるいは何が違和感なのか、逆にいうと、どういうものだったら違和感を持たないのか、というところを考えていくのが、組替力の思考の特徴になります。
独自性と言っても、なかなか最初からは生まれてこないです。どうやって出すかということですが、独自性を考えていく上でのポイントは、自分なりに、これを何々のようなものだと思うという、「見立て」になります。
いわゆる既存の常識を、自分の独自の世界観、見立てで定義し直すということです。
アートの世界だと「モチーフ」という言葉があります。動機とか、主題という意味の言葉ですが、自分の表現の動機、きっかけとなった中心的な思想とか思いを、一言で込めたものがモチーフになります。例えば、「あなたが今考えているビジョンの、モチーフは何でしょうか」「それを一言でいうと何でしょうか」と言語化してみることがポイントになります。
これが、当たり前を壊す、再定義のデザインになります。
●想像力で見えないものを補完して全体像を語るのが見立ての特徴
見立ては英語でいうと、「Reframing」になります。スライドに枯山水の庭が写っていますけれども、枯山水の庭は、本物の池のある庭のようでもあり、かつ自分の宇宙のようでもある。そういうものが、この枯山水の庭に込められている世界観なのです。
このように、実際にはそこにないものを想像していくという思考法が見立てになります。
例えばスライドを見ていただくと分かると思いますが、これはまだ完成していません。左側は蛇で、右側は馬になるのですが、このように、一部が目に見えない状態のものをもとに、自分の想像力で補完して全体像を語るというのが、見立ての思考の特徴になります。
●たとえ話や比喩で考えていく「アナロジー思考」
やり方としては、もしも何々がXXのようであったらという、いわゆるたとえ話や比喩で考えていくのがおすすめです。
一般的には「アナロジー思考」と呼ばれるものです。自分が考えている新しいサービス、例えば私の場合であれば、戦略デザインファームという業態の仕事をしていますが、戦略コンサルティングの仕事が、今でいう高級人材派遣、つまり高度な人材を派遣するという業態になっていると思われていることに対して、私は「イノベーターの鑑でありたい」と思っています。なぜかというと、未来を作る新しい取り組みが、企業の中から形になると言うのは、本当に中でやりたい人がいて、その中のイノベーターが最終的には形にしていく環境を作らない限りは、実現しないと思っているからです。
そうなると、コンサルティングは今までのような、知識を提供するサービスではダメで、むしろ自分たちがやりたいことが鏡となり、それがどんどん形になっていく、その姿が見えていくような場があれば、それが何より、これからの時代の、より未来を作っていくコンサルティングの形じゃないのか。それが、私自身が考えているコンサルティングの世界です。高級人材派遣のようなものから鏡のようなものに変わるということで、これがある種、見立ての変化になります。
例えばブルーボトルですが、ブルーボトルは、創業者のフリーマン氏が、日本の喫茶店のようなカフェを作りたいと言うところから、始まったそうです。日本の喫茶店は、マスターがいて、じっくり焙煎したコーヒーそのものをゆっくり楽しめることを、優先順位の一番に置いている場所です。そういうものを、チェーンとしてやるならどうなるのか。それが、今回紹介したフリーマン氏が考えた、新しい組み替え、見立ての例になります。
この例はいくつかあって、例えば、携帯電話でいうと、昔「INFOBAR」というauデザインプロジェクトでありました。これは、携帯電話がニシキゴイのような美しいものであったらということで、その見立てで生まれたコンセプトですね。
他に...