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将棋と本は似ている。定跡を超えたプロの話が参考になる

今こそ問うべき「人間にとっての教養」(6)答えのない問題にどう立ち向かうか

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
問題には、あらかじめ答えのあるものと、はっきりとした答えのないものがある。答えがある問題は、答えにたどり着く方法を教えてくれる指導者につけばいい。では、答えのない問題にはどう対処すればいいのだろうか。将棋を例に、それらを考える上でヒントとなる考え方を説明していく。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:32
収録日:2021/03/25
追加日:2021/06/03
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≪全文≫

●まずは目的を明確にする


―― 今のお話は、いわゆる発信者側のお話ですね。今このような環境の中で、こういう発信がなされていますというお話でした。

 一方で学ぶ側がいます。学ぶ側はどのようなことを意識していけばいいのかということについて、先生がご本(『人間にとって教養とはなにか』)の中でお書きになっているのが、一つは「本物に触れる」ということです。例えば、本であれば古典のような、そういった本物に触れておくことが大事だとおしゃっています。二次的なものだと、また聞きになってしまうので、なるべく本物に当たるのが大事だということでした。

 もう一つは、もしそれがあまりにも難しいのであれば、本物をきちんと勉強している人が、きちんと解説したものにまずは当たってみることが大事だということでした。さらに、本物にチャレンジしたらどうかとご示唆をいただいていますが、ネット時代において、今の本物に出合う、あるいは本物の解説をしてくれる人に出会うためには、どのように意識すればいいのでしょうか。

橋爪 なかなか難しい問題ではありますが、まずは何をゴールにするのかによりますね。

 勉強するのが目的であれば、先生につけばいいでしょう。先生とは、生徒や学生が知りたいと思うもの、ここまで知りたいと思うゴールを知っています。そして、そこまで最も確実に、最も労力をかけないで、最もちゃんとした内容が頭に入るように、順序立てて情報を提供する技術を持っている人です。だから、自分の考えを伝えるのではなくて、「こういうふうに考えるといいですよ」という結論が見えている場合には、それを提供する人につけばいいのです。それはつまり、教育者です。教育者から学ぶ場合には、優れた教育者から学べばいい。これは初等・中等教育など、答えのある問題にふさわしいやり方です。

 しかし、答えがない問題にはどうしたらいいか。「こう考えればいい」という終点がありません。答えのある問題は、学んで、終点まで来てしまうと、そこから先は終点がありません。しかし、人生で出会ういろいろな問題に対しては、世の中に「私」という存在は一人しかいませんので、誰も代わりになってくれません。似たようなことを経験した人は他にいるかもしれませんが、この私の一回だけの人生を、一回だけの私が解決していかなければならないという問題があります。

―― そうです...
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