●千島の占領とクリミア半島などの占領を常に比較せよ
皆さん、こんにちは。日本はウクライナ問題に関して、遠い外国でありますが、しかしどういう態度をとるのか。
日本は、G7の一員として、この問題、すなわちウクライナ危機から避けて通ることはできないのであります。
クリミア半島の占領というのは、歴史の質としていえば、領有の合法性あるいは領有の現実性というものを無視して占領をされた、日本の固有の領土である千島(クリル)の占領と同じであるという解釈が、日本人からすると成り立つと思います。
千島(クリル)の占領と、クリミア半島などの占領の問題を、私たちとしては常に比較、あるいは相関化させながら考える必要があります。ウクライナ危機の深化、深みについて、そうしたことを踏まえて、きちんとロシアに対して警告を発するべきです。
日本は自らの国家的な体験、歴史的な体験としても、そしてG7のメンバー国家という責任ある立場からしても、きちんとそういうメッセージを発する必要があるのではないかと、私は考えます。
●ロシアにも言い分はあるが、しかしやはり「奪われた領土」である
ロシアにも、言い分はそれなりにあるかと思います。(ソ連の崩壊にともなって)西はまさにウクライナ、ベラルーシ、バルト3国からカフカースの3国、コーカサス3国、そして中央アジアの国々などがソ連から分離したわけです。そもそもドイツの再統一にあたって、そうした国々、そして旧東欧のポーランドやチェコ、あるいはスロバキア等含めてNATOに加盟しない、いわゆるNATOの東方拡大をさせないように、アメリカをはじめとする主要なヨーロッパ諸国に対して約束させたと、ロシアは思っているでしょう。
ただし、これはいかなる形でも文章化されたり、あるいは協定・条約として書かれたりしたものではありません。しかしながら事実として、次々とこれらの国々が、つまりポーランド、バルト3国、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ハンガリーといった元のワルシャワ条約機構のほとんど多くの国々が、いまやNATOに加盟したということになります。ロシアはこれを怒っているわけです。
このうえ、ソ連邦に加入していた、そして「ロシアなくしてウクライナはなく、ウクライナなくしてロシアなし」と信じているロシア人にとって、ウクライナにまでNATOが拡大してくるということは、到底受け入れられない事態になります。
しかし、歴史的に見ていった場合、これらの国々は、もともとはスターリン体制の下で強制的に領有、もしくはブロック化された国々です。民族自決権や、民族の運命を選択する権利を奪われている、いわばソビエトブロックに組み込まれた国々であったということは忘れてはなりません。
「奪われた領土」という点、あるいは「失った領土」という点では、北方4島と同じであるということに、日本人としては留意する必要があろうかと思います。
ウクライナもまた、ロシア帝国あるいはソビエト連邦のもとにおいて、強制的に編入され、強制的に併合された地域に入っている。従ってロシアがすぐに領有権、併合する権利というものを主張できる国ではありえない。
それぞれ固有の歴史と伝統と文化と領土というものを、何らかの形で持っていた。そういう民族が多数存在しますが、まぎれもなく旧ソ連の一角にあったウクライナは、そうした民族の自決と将来というものを主張する権利を持っているということではないでしょうか。
いずれにしても私たちは、ウクライナ情勢を、「遠くから」と思いがちですが、実は私たちにとっての千島列島、南千島、北方4島は、ウクライナにとってのクリミア半島である、ウクライナにとって、いわば比喩でいえば、千島列島、北方4島は、私たちにとってのクリミア半島である。そういうこともいえるかと思います。
予断を許さず、注意深く事態を見守っていかなければいけないと思います。今日はこれで失礼いたします。