●キャリアの文脈をつくる「3つの法則」と終身知創
では、ライフシフト概論のその5を進めていきたいと思います。今回は「変身資産を磨く」ということで、ライフシフト大学のキーになっている「変身資産」というコンセプトを解説すると同時に、ライフシフト大学の紹介を最後にしたいと思います。
その4まで(第1~7話)に「終身知創」や「SECIキャリアモデル」などを通じて、学び直しということが非常に今重要になっているという話をさせていただきました。その背後にあるのが、「キャリアの法則」です。「キャリアは長期に作られる」、すなわち瞬間的にできるものではなく、ずっと積み重ねでできてきます。
それから、「予言の自己成就が当てはまる」ということですが、この「予言の自己成就」というのは、自分が将来こうなりたいと思うと、それに近づいていくということです。何も思わないと、近づいていかない。これは不思議な現象ですが、自分がビジョンを作ったり、「こういうことをしたい」と人に言ってみると、なんとなくみんなが助けてくれたり、自分も意識的にするようになったりします。よく例としていわれるのは、「トイレットぺーパーがなくなる」と言い立てると、本当になくなってしまうというようなことです。
それから「出会いや運が影響を及ぼす」ということで、やはり自分だけでコントロールするというよりも、いろいろな出会いやアクティビティを行うことによって、キャリアは結構その影響を受けてできてくるということです。
自分一人でコツコツというと、なかなかキャリアが広がっていかないし、チャンスが出てこないというような話でもあります。ですので、「キャリアの文脈を徐々に作っていく」ということがあり、それを長期に作るためのエネルギーが「終身知創」です。
●ありたい自分と現状のギャップを埋める「変身資産」
(キャリアを)積み重ねていくときのカギとしては、自分の何を積み重ねるかについて、少し整理したほうがいいということです。「変身資産」ということで、将来ありたい姿を描いておく。これは60歳でありたい姿もあれば、80歳でありたい姿もあると思いますが、少々先を見ながら成長戦略を考えていってほしいということです。
では、何が変身資産でしょうか。右側に「マインド」「知恵」「仲間」「評判」「健康」と、5つ書いてあります。その背後にあるのは変化し続ける時代であり、共創(co-creation)すなわちみんなでつながっていく時代だということです。さらに、人生はとにかく長いということです。
左側の3つの要素を考えると、右側の5つに絞られていくということで、これを解説していきたいと思います。
これをうまく育んでいくことによって、この図にあるように選択肢が広がっていきます。図の左側は「社内で活躍する」、右側は「第二の人生」で社外へ踏み出すということになっています。そもそもライフデザインとして、100歳までの人生をどうするのかについて、いろいろなことが考えられます。あるいは、こうした選択肢を用意しておくことが、豊かに長生きする秘訣になります。図の下にある「マインド」「知恵」「仲間」というのは、それぞれのところで効いてくるという話です。
●VUCAの時代をポジティブに対応していくための「マインド」と「知恵」
これらは、それぞれ3つずつに分かれていきます。マインドなら、ポジティブマインドセット、未来への思い等々となっていますが、順番に簡単に解説していきたいと思います。
まず、マインドは、変化に対して前向きでいる精神力ということで、3つあります。ポジティブマインドセット、未来への思い、チャレンジ精神です。これらを引っくるめていうと、これからVUCAの時代に長い人生を生きていかなければならないわれわれは、いろいろな環境変化にとにかくポジティブに対応していくということです。
そのような中で、未来の自分を「こういうふうになりたい。したい」という予言の自己成就を持っておく。おそらく困難も来ると思いますが、そういったときにもへこたれないでいこうというのが、マインドになります。それは分かりやすいことだろうと思います。
次に知恵ですが、ここには知識、スキル、経験の幅、教養があります。知識、スキルや経験の幅というのは、これまでの職業人生の中で、学んだり行ったりしてきたことが効いているということです。これま...