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10分でわかる「メタバースとVRの関係」

ゼロからわかるメタバース(1)「新しいタイプのVR技術」への期待

廣瀬通孝
東京大学名誉教授
情報・テキスト
「メタバース」という言葉を聞く機会が増えた現在。ネットワーク上に展開される三次元の仮想空間ということだが、いわゆるVR(バーチャルリアリティ)や拡張現実とは何がどう違うのか。平成期に着実に成長してきたVRの歴史を振り返りながら、コロナ禍で期待が高まった「新しいタイプのVR技術」の実状を解説する。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:41
収録日:2022/03/10
追加日:2022/09/28
タグ:
≪全文≫

●「DX的なものとVR的なものが結婚した先にメタバースがいる」


―― 皆さま、こんにちは。本日は廣瀬通孝先生に、メタバースについてのお話をいただきたいと思っています。今日は先生、どうぞよろしくお願いいたします。

廣瀬 どうぞよろしく。

―― 最近、メタバースという言葉を聞く機会が多くなり、いろいろな企業がこれからの可能性に向けて盛り上がっている最中です。そもそもメタバースというのはどういう意味になるのでしょうか。

廣瀬 メタバースとは何かということですが、私はVR(バーチャルリアリティ)が専門ですから実はVRに関しても最初からそうしたことを言ってきました。強いて(今の)VRにない要素ということでいうと、「ネットワーク上に大規模に展開したVR」という言い方になると思います。

―― VRがネットワークに展開するのとしないのとでは、どのように違ってくるのですか。

廣瀬 いわゆるネットワーク世界というものがあるじゃないですか。あれはまだVR的ではありません。

―― 例えばテキストでやり取りしたり、写真を使ったり、あるいはZoomやTeamsなどではテレビのような感じですね。

廣瀬 そうですね。絵が見えるものもあれば、LINEのようなものでは吹き出しが出てくるものもある。(そうではなく、)人と人が社会的な活動をするときに、今のいわゆるDX的な世界で行っていることのその先に、VR的な、より身体的な活動が入ってくる。あるいは、もっと直感的に空間を感じる。そのような要素を付け加えていったものがメタバースであるという言い方もできるかもしれません。「DX的なものとVR的なものが結婚した先にメタバースがいる」という感じかと思います。

―― なるほど。DXとVRの結びつき、それが結婚のようなことになるわけですね。ありがとうございます。

 それでは今回は最初に廣瀬先生に(メタバースについての)講義の内容を紹介していただき、その後で実際にどういうことになるのかということで「アバターでの対談」も行ってみたいと思います。それでは先生、まず講義のほうをよろしくお願いいたします。

廣瀬 よろしくお願いします。


●平成の30年間を通して着実に成長してきたVR技術の歴史


廣瀬 では改めて、東京大学の廣瀬です。4年ぐらい前になると思いますが、この「テンミニッツTV」というチャンネルでVRに関しての講義(「VRがつくりだす未来」:2018年12月配信開始)をさせていただいたと思います。その最後の部分で、「VRというとゲーム的なものがイメージされると思うが、この技術は実はもっとシリアスな産業などへ非常に大きな広がりを持つのだ」ということを申し上げたつもりです。今回のシリーズでは、その時の話がかなり現実性を帯びてきたというお話を申し上げたいと思います。

 まず、前回のおさらいをもう少ししておきたいのですが、VRという技術が登場したのは1989年のことでした。これは平成元年に当たるので、平成の30年間を通してVRという技術が着実に成長してきたということだと思います。

 そして、2019年にもう一度VRのブームがやってきますが、おそらくこれが第2期ということになると思います。例えば「ポケモンGO」やソニーの「プレイステーションVR」のように、第二世代VRともいうべきシステムが次々と発表され、ブームを起こしました。このような歴史を持っているのが、VRということだと思います。


●サービス業によって磨かれたVR技術


 少し振り返ってみますが、平成の最初の頃、第1期と呼べる時代にVRを支えてきたのは製造業でした。「CAD/CAM」という言葉をご存じの方もいらっしゃると思いますが、何かモノを生産するときに使われたのが、第1期VR技術の特徴です。最初の頃、VRの世界ではモノをどうやって操作するかの技術中心に議論されてきたように思います。

 ところが2016年以降、新しい産業が入ってきます。製造業に対するサービス業です。VRという技術が、サービス業の応用事例として展開されていきます。そのようなことになってきたのが、平成後半のVR技術の展開です。

 サービス業と製造業ではどう違うかというと、決定的に違うのがサービス業の中ではモノに比べて人の要素が非常に多くなっているところです。ですから、VRの世界の中に人が入ってきて、人とのやりとりが非常に大きくなってきます。そのような分野が広がったのが、第2期といわれる新しいVRの展開ということになります。

 今、新しいスライドを出しました。これは接客シミュレーターで、東大のVRセンターに寄付研究部門として出来上がっているサービスVRという部署が手がけているものです。サービスVRは、何社かのサービス...
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