●発酵食品の菌体は腸に届いているのか?
―― 次に「基本的な質問です」ということで来ているものをいくつか混ぜてお伺いします。たとえば納豆や味噌など、発酵食品は健康に良いと言われますが、細菌が腸まで届いているものなのでしょうか、ということです。
あるいはお酒。お酒も飲むと、腸にその善玉菌が届くものでしょうか。このように同じような趣旨の質問が来ております。
小泉 はい。ええ、実は体の中に菌体が入ることで免疫も高くなるというのは、もうすでにいろいろな大学で分かってきています。
そして、さっき私がお話ししたように、免疫を体の中につけるためには、一つに発酵食品、一つに繊維、それから微生物の菌体。たとえば乳酸菌の製品が売っているでしょう。また、酵母を乾燥させた「エビオス」錠という商品もあります。ああいう菌体が、それに当たるものとして知られています。
ところが、味噌の中には乳酸菌がいっぱいいる。その味噌に納豆を加えて、納豆汁をつくる。そうすると、味噌にいた乳酸菌も納豆菌も熱によって死んでしまうから、腸まで行かないのではないかという話をよく聞きますが、実はそんなことはないのです。菌体が体の中に入ると、生きていても死んでいても、みんな腸まで届きます。これは東京大学で3年ぐらい前に正式に発表したことです。
先ほど、免疫について大切なことを言うのを忘れました。人間の免疫細胞はどこでつくるかというと、8割は腸でつくるのです。だから今、医師の間では大腸生理学というのが非常に重要な学問になってきているわけです。そうした免疫を腸でつくるときに、菌体成分がそこを通過すれば、免疫細胞が増えてくるということが分かりました。これは、菌体が生きていても死んでいても構わない。体の中に菌体成分が入って、腸を通過するときに免疫をつくってくれるということが分かってきたわけです。だから、安心してそういうものを食べて、また熱に掛けて食べても結構です。
●お酒は健康増進のためではなく、楽しみのために
―― お酒はどうなのでしょうか。お酒が腸にいい働きをする、とくに日本酒などが働くことというのはあるのですか。
小泉 ああ、それは多糖類が多いことと関係があります。ただ、いいですか。ここで出せるいい答えもありますが、私が言いたいのは、お酒で健康をつくるという考えは、あまりよくないということです。
―― なるほど。はい。
小泉 やはりお酒は楽しむということが大切であって、お酒をこれだけ飲んだから、菌体が腸に届いて体にいいかどうかは、個人差もありますし、なかなか言いにくい。お酒で腸を活性化したりするというのは、私はあまり好きではないし、そうは考えないほうがいいのではないかという感じがします。
―― 効果と目的が違うということは言えるかもしれませんね。
小泉 うん。そうそう。発酵食品ですから、やはり効果はあるかもしれません。しかし、お酒で健康を買うというのはあまりお勧めできない、それよりもむしろ心で楽しむ。そういうものがお酒ではないかという感じがします。
―― はい。ありがとうございます。
●和食の食材は、どんな調理法が最適か
―― 次の質問にまいりたいと思います。「和食の食材が健康に良いということは、とてもよく理解できました。そこで質問ですが、料理や調理法との関係はいかがでしょうか。焼く、煮る、炊く、蒸すなど、いろいろ料理法がありますが、どういうものがよろしいのでしょうか」ということです。
小泉 和食の料理法というのは、どちらかというと「炊く」ことが中心になります。「煮る」とか「炊く」というのが中心で、「焼く」というのは、日本人が主食に対してあまり使わない方法です。なぜかというと、日本人はコメを食べてきました。これは粒食ですから、煮ないと食べられません。ところがパンは粉食ですから、焼かなければ食べられません。
だから、昔からの日本人の台所を見ると、底の深い鍋や釜が出てきます。それらが台所にあるというのは、煮る手法が発達したからです。逆に、焼くためのフライパンは焙烙のようなものを除いて、日本にはありませんでした。そういうところから見ても、日本の和食というのは、どちらかというと煮る文化なのです。
そうした意味からすると、今の調理法ではいかがですかというと、和食の場合、煮て食べるのが中心である以上、煮て食べることになると思います。日本人にとっては煮て食べるのが、一番いいのではないか。というのは、先ほど見たように、七つの食材がすべて繊維質でできているからです。これらは、焼くより煮たほうがはるかに体にとって食べやすいし、とてもいい。
さらに繊維のほぐれ方なども、煮たほうがとてもよくて、煮ると繊維の性質を有効に体のなかに入れることができる。だから、和...