●太陽の恵みを発電に向ける近未来が来る
いま日本では、エネルギー問題がいろいろと心配されています。2030年なり2050年あたりを視野に入れるような長いスパンで見た場合、私は再生可能エネルギーに移行すると考えています。
太陽は核融合エネルギーですから、それを地球上でも実現しようとする核融合発電への努力が続けられています。地球の中心では鉄などがどろどろに溶けていて、8000度、ないし9000度という高温を保っています。それよりもはるかに大きな太陽になると中心は千万度もの高温、非常な高圧で、核融合が可能になります。ただ、太陽は真空中に浮かんでいる球ですから、自分の重力で非常に安定して光り続けているわけです。そのエネルギーが地球の上に注いでいるため、その量は、いま人間が使っている全エネルギー量の1万倍にも達します。つまり、人類が上手にその1万分の1を利用するだけで必要量が全て賄えるほどの膨大なエネルギーが、日々やって来ているわけです。ですから、可能性は非常に大きいのです。
●現実的な再生可能エネルギーは五つ
問題は、どうやってエネルギーを取り出すかということです。取り出し方として、風力、太陽電池、そして、水力発電とバイオマスエネルギーが挙げられます。
さらに、いま言ったように地球の内部には大変な熱が蓄えられています。もともと地球は太陽から分離したものなので、これも太陽エネルギーの一種と呼べるでしょう。月の場合は、天体として小さいためにもう冷え切ってしまいましたが、地球はまだ冷え切っていません。これを取り出すのが地熱発電です。
この五つが、現実的に人類の使える再生可能エネルギーということになります。2100年ごろになると、波の力を利用した波力発電をはじめ、さらに多くのものが実用化される可能性もゼロではありません。しかし、2030年から2050年あたりに関しては、いま言った五つの再生可能エネルギーをどのようにうまく利用するかを考えなければなりません。
●水力発電はエネルギーの質の安定性を誇る
現在、日本のエネルギーはどうなっているのでしょうか。原子力が全部止まっている状況では、約90パーセントが石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やす火力発電で、残り10パーセントのうちのほとんどを占める約8パーセントが水力発電なのです。
私が子どもの頃には「水主火従」という言葉があり、電力をつくる主力は水力、それを補う従の部分が火力発電でした。ところが、私が小学校から中学校へ進む間に、あっという間に「火主水従」に変わっていきました。
それでも水力はずっと10パーセント近くを占めてきました。これは、エネルギーとしての質が非常に良いからです。水力発電では、ためた水が下に落ちる力で水車を回すのですが、そこに発電機を付けておけば発電ができます。風で回すのであれば、風力発電になるのですが、ためた水はいつでも落とせるので、風力などと比べるととても安定しているのです。そのため、非常にエネルギーの質の安定性に優れているといわれます。
●大規模な水力発電開発は自然破壊につながる
それならどんどんやればいいはずなのですが、大きな川に大きなダムを造って水をため、落ちてきた分からエネルギーを取る大規模な発電については、ほとんど開発され尽くした感があります。佐久間ダムや黒部のダムなど、開発できるような大きな所は大体開発し尽くしてしまいました。これから、さらに大規模な開発を進めようとすると、自然破壊という別の問題が起こってくることも分かってきたため、大規模なダムを造る可能性はあまり考えられません。
では、水力発電に将来性はないかというと、そんなことはありません。川は、現実に高い所から海に向かって流れ続けています。その流れのどこかに水車さえ入れれば、発電は可能なのです。この方法であれば、何も悪いことは起こらず、電気を取っても、川の水はそのまま流れていきますから、なくなる恐れもありません。
ダムを造る場合でも、ただ水力発電をして流すだけであれば水は減りません。どこで減るのかというと、一つはダムを造ることによって蒸発する分があります。量としてそれほど多くはありませんが、10パーセント程度のオーダーで蒸発してなくなり、下流には行かなくなります。
ダムを造る目的にはもう一つ、農業があります。農業用水として取ってしまった水は、そのまま田畑で蒸発してしまいます。そのため、新しくダムを造って農業を行うと、本来は海に行くべき非常に大量の水が流れなくなってしまうのです。
●中小水力発電は、自然にやさしい安定電源
中小水力発電は、流れている場所に水車を入れようとしているわけですから、何も悪いことは起こりません。逆に、いま行っ...