◆新型コロナウイルス問題は、この先生方に聞けばわかる
1話10分で学ぶ大人の教養講座「テンミニッツTV」では、新型コロナウイルス関連講義動画を期間限定で無料公開いたします。
いまメディアでは様々な意見があふれています。しかし、この問題に立ち向かうには、信頼できる方々の知識を結集して「問題の全体像」を描いていかなくてはなりません。まさに新型コロナウイルス問題についての「知の構造化」が必須なのです。
これらの講義をご覧いただければ、何が起きているのか、何をしなくてはならないかがわかります。ぜひご覧いただき、ご活用いただければ幸いです。
テンミニッツTV 編集部
テンミニッツTVとは=「よりよく生きるための『知の力』を養い高める」「第一人者がニュースの核心を語る。さまざまな事象の本質に迫る」を方針として、現在、小宮山宏座長、島田晴雄副座長、曽根泰教副座長はじめ200人以上の講師による、3000本以上の講義を配信しています。
※現在編集中の動画もございますので順次公開いたします。
免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える
|
宮坂昌之×曽根泰教
|
新型コロナウイルス問題が起きてから、PCR検査をどうすべきか、免疫パスポートという考え方もあるのではないか、集団免疫獲得に向けてどうするか、などさまざまな議論が行われました。しかし、宮坂先生のお話をうかがうと、それらの議論の根底が覆るようにさえ思えてきます。
講義は、まず免疫についての基礎的な話から始まります。ここで重要なのは、免疫といっても、病気罹患やワクチン接種などによって得られる「獲得免疫」だけでなく「自然免疫」があることでしょう。
この自然免疫は、ウイルスの感染が起こったり、ワクチンを接種したりすると活性化されるといいます。コロナ禍のなか、「BCG接種が効果的なのでは?」という指摘もなされましたが、これはBCG接種によって自然免疫が活性化されたことが効いている可能性があると、宮坂先生は指摘されます。この場合、BCG接種だけでなく、たとえば普通のインフルエンザワクチン接種なども、自然免疫を活性化させる可能性が高まるということです。
また、一時期、「社会全体の6割が感染したら集団免疫が獲得されて安全になる」という主張もなされました。しかし、この考え方は古いと宮坂先生はおっしゃって、古い免疫学と新しい免疫学の考え方の違いを3点ご紹介くださいます。1つ目は、「個体の抵抗性は自然免疫と獲得免疫の総和と考えていること」。2つ目は、新しい考え方では「社会を形成する個体は均一だとは考えないこと」。3つ目は「免疫の持続性についての考え方」です。
このうち、とりわけ衝撃的なのは3つ目の「免疫の持続性」です。おたふくかぜや、はしかのように、免疫が10年から20年持続するものもありますが、新型コロナウイルスは、おそらく持続期間が極めて短く、長くても1年はもたないというのです。宮坂先生がおっしゃるとおり、これではそもそも社会の6割が集団免疫を達成するなどということはありえないことになります。また、免疫パスポートなどという仕組みも、まったく成り立たないことがわかります。
さらに新型コロナウイルスの場合は、感染者のうちの8割は他者には感染させず、2割の「スーパースプレッダー」といわれる人だけが、強力に他者に感染させるといわれています。また、感染が起こりやすい状況もわかりはじめています。これを前提としたとき、では、どのような対策が求められるのか――。そのことについては、ぜひ講義の終盤をご覧ください。
本講義シリーズでは、宮坂先生はウイルス感染の仕組みからワクチンのあり方などについても解説くださっています。正しい知に基づいて考えていくことがいかに重要かを思い知らされます。まさに目からうろこが落ちる、「知っておくべき」講義です。
徹底検証・日本のコロナ対策
|
島田晴雄
テンミニッツTV副座長/東京都立大学理事長
|
新型コロナウイルスとの戦いも、緊急事態宣言解除が行われ、遂に新しい局面を迎えました。とはいえ、今後、第2波、第3波の到来なども大いに懸念されています。今回は、まったく未知の問題に立ち向かわなければならなかったため、その対策にさまざまな問題があったことも確かでしょう。今後の対策をより良きものとするためには、これまでの対策を徹底検証し、望ましい道は何なのかを考えておく必要があるはずです。
そこで、島田晴雄先生の緊急講義をご紹介いたします。この講義で島田先生は、一連の対策の流れをみごとにまとめ上げられ、また、現状の対策を行いつづける「現状維持シナリオ」と、望ましいあり方である「希望のシナリオ」の2パターンを検証し、それぞれどのような結果がもたらされるかの経済シミュレーション分析を行ってくださいました。
日本では、法律体系に「緊急事態」が十分に組み込まれていない不備や、マイナンバー制度の未徹底などもあって、世界と比べても独特な「強制も罰則も補償もない日本型モデル」ともいうべき対応がなされました。これはどのような結果をもたらしたのか。
島田先生による総括がどのようなものかは、第6話までの講義タイトルをご覧いただければご理解いただけると思います。
感染が発生してからの流れを、島田先生一流のみごとな把握でまとめられます。理知的に、かつ歯に衣着せず展開される的確に分析は、問題を振り返るのに、まことに最適です。
そのうえで、続く第7話、第8話、第9話で島田先生は、ご自身で行われた経済シミュレーションを紹介くださいます。ここで島田先生は具体的な分析の結果、下記のような数字を導き出されています。
まず、「現状維持シナリオ」の場合、小出しの逐次政策対応の結果、直接コストは20.5兆円だが、感染を早期に収束できないためにGDP成長率は2020年4~6月以降年率▲15.0%、2021年も通年平均▲10.0%となる。
一方、「希望のシナリオ」の場合、迅速・大型の政策対応で、直接コストは53兆円にのぼり、その結果もあってGDP成長率は2020年4~6月以降年率▲20.0%だが、2021年には感染収束と未来志向の経済戦略の効果もあってGDP成長率は通年平均+15.0%とV字回復を達成する
それぞれがどのようなものか。それについては、ぜひ講義をご覧ください。まさにいま学ぶべき講義です。
対コロナ、危機の意思決定を考える
|
曽根泰教
テンミニッツTV副座長/慶應義塾大学名誉教授
|
今回、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るいましたが、国によって対応の是非に大きな差が出ました。日本国内でも、政治リーダーの資質の差が大いに現れている――そういう見方も広がっています。
危機において、いかに意思決定し、対処できるか。まさにその姿に、リーダーや組織体制の「地金」は残酷なほどに露出します。しかも危機においては、誤った判断は許されるものではありません。その対応の是非によって、社会の人びとの「生き死に」さえ左右されてしまうからです。リーダーはその厳しい責務を自覚しえているか。また、人びとは、このような危機に備えて「正しい政治」のあり方を作りあげられているか。そのことが、大きく問われるのです。
その点、今回の日本政府の対応は正しいものだったといえるでしょうか。もし、問題があったとすれば、その原因はどこにあるのでしょうか。
そのことについて考究いただいたのが、曽根泰教先生による本講義です。
曽根先生はこの講義のなかで、危機に備えて、あらかじめ「シナリオ」を作っておくことの重要性を説かれます。
「危機に対処する意思決定は、瞬間的なアドリブ芸では無理だ」と曽根先生は強調されます。とりわけ今回の新型コロナウイルス問題は、未知のことが非常に多かったため、エビデンスを条件に政策決定を行うことはできませんでした。そのため日本政府の対応では、「瞬間的なアドリブ芸」の問題点が大きく露呈してしまったともいえます。
しかし、この問題に備えることができなかったわけではありません。ジョンズ・ホプキンス大学などは2018年に、今回のような性質のウイルスが蔓延する危険性について警告を発していました。また、SARSやMERS、新型インフルエンザなどの感染症の厳しい経験からも、「シナリオ」は十分に描けたはずだったのです。
さらにいえば、「マスク2枚配布」や「10万円支給」のような「国民全体を相手にしたオペレーション」では、ますます「事前のシナリオ」が必要でした。しかし日本は、「マニュアル」は作っていても「シナリオ」を作れていなかった。そう曽根先生は指摘されます。
ではいかに「シナリオ」を作ればいいのか。そしてそれをいかに練り上げ、いかに備えていけばいいのか。そのことについて、曽根先生が様々なヒントを教えてくださいます。
危機対応の「シナリオ」が必要なのは国や地方自治体ばかりではありません。企業も、家庭も、個々人も、「シナリオ」を作っておく必要があります。今後、危機に少しでも正しく対処していくために重要な講義です。ぜひご覧ください。
脱コロナを「知の構造化」で考える
|
小宮山宏
テンミニッツTV座長/東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
|
いかに、このウイルス禍から脱していけるのか。いまこそ「脱コロナ」への新たな希望、新たな目標が、ぜひとも必要ではないでしょうか。
この講義で小宮山先生は、まず、世界各国の状況を時々刻々に掴んで比較し、「データを知って、正しく恐れる」ことが必要であることを強調されます。日本は世界と比較した場合に、どれほどの被害状況なのか。国境を接した欧州各国でも、なぜ国ごとに状況が異なるのか。さらに、対策に成功した国は、何が素晴らしく、失敗してしまった国はどこが問題だったのか。そのような諸点について、次々と分析していきます。
この分析において、小宮山先生が提示されるのが、ご自身でまとめた「各国の100万人当たりの新規感染率と新規死亡率」の図表です。これは、各国の状況がわかりやすく一覧で比較でき、日本の現状もひと目でわかる秀逸な分析です。
また、「専門家の貴重な知見は『全体観』のなかでこそ活きる」ことも指摘されます。もちろん、専門家の判断はまことに尊いものです。しかしいまや、サイエンスや技術の高度化が進んでいます。専門領域が非常に細分化しているために、「前提」や「全体観」は個々の専門家では掴めないことがある。だからこそ、幅広い専門家を結集したり、専門家以外の人が全体観を描く努力をしたりすることが重要ではないか。そう、小宮山先生は説くのです。
さらに、「どのように緊急事態宣言から抜け出すか」についての3条件も提示されます。十分な見通しも立たぬなか、現下の歯を食いしばった自粛をさらに続けるのは、あまりに酷な話です。また、いったん無事に「緊急事態」から脱することができたとしても、新たに感染が拡大してきたらどうするか、という不安は残りますし、第2波、第3波への懸念もあります。やはり、「脱コロナ」への条件を考えておくことは、今後の道筋を考えるうえで不可欠です。
新型コロナウイルス問題への「全体観」を養えて、これから進むべき道についての展望が得られる講義です。ぜひご高覧ください。
脱コロナへの課題と展望
|
小宮山宏×曽根泰教
|
この講義は、先に配信した小宮山宏先生の講義《脱コロナを「知の構造化」で考える》を受けて、テンミニッツTV副座長の曽根泰教先生が、小宮山宏先生との対談でテーマを、さらに掘り下げていくものです。
小宮山宏先生は上記の講義で、「多くの国々の状況を比較して見ていくことの重要性」について指摘されました。この対談ではまず、その点について検討しつつ、近隣国であるにもかかわらず致死率に大きな違いが出ている理由や、貧困など社会的歪みが状況を悪化させる可能性、さらに途上国への拡散の懸念など、多くの示唆に富む議論がなされます。これらの原因と対策をきちんと把握するためには、それぞれの国の社会構造・政治構造などの内実について、きちんと研究をしておくことが不可欠です。その見地から、様々な各国事例が紹介されます。
そのうえで、日本政府の対応がかなり場当たり的だったのではないかという観点から、「学校の一斉休校」「検査態勢」「対策プランの必要性」などについて検討がなされます。
また、実は、2018年にジョンズ・ホプキンス大学のセンターが、「症状が現われない無症状者・軽症者が感染力を持ってしまうウイルスが、パンデミックを引き起こしかねない」と警告していました。新型コロナウイルスは、まさにその特徴を持ったウイルスであり、見えにくく、抑止が効かず、長期戦になりかねないという「ゲリラ戦」的な恐ろしさを濃密に帯びていたのです。
このような敵に有効に対応するためには、地方自治体が自発的に決定できる「自律分散協調系」の考え方が必須ではないか――この視点も本講義の重要な問題提起です。
今後の方向性を考えるうえで、大いに示唆に富む対談です。
新型コロナ問題の全体像~グローバリゼーションと国家主権~
|
曽根泰教
テンミニッツTV副座長/慶應義塾大学名誉教授
|
ここまで広範かつ深刻な問題となった新型コロナウイルスについて考えるにあたって大切なのは、まずは問題の全体像を描き、そのうえで各専門領域を深掘りすることではないでしょうか。
この講義で曽根泰教先生は、「リベラルアーツ&サイエンスの見地から検討すべき新型コロナウイルス問題の全体像」として、文明論、科学論、グローバリゼーションと国家・社会、価値と倫理などを挙げられます。そのうえで「グローバリゼーションと国家社会」の問題点について、今後われわれが持つべき視座を提示されるのです。
文明論的に、今回の新型コロナウイルスの前と後という区分で、BC(Before Corona)とAC(After Corona)と言葉が使われることもあります。それほど社会に与えた影響は大きい可能性があるということです。とりわけ、大きく見直されそうなのが「グローバリゼーション」でしょう。
これまで、グローバル化のなかでヒト・カネ・モノ・情報が世界中を飛び回っていました。しかし、ウイルスまでもが世界中に蔓延してしまいました。この局面で、各国は「主権国家」的な対応を強めました。ウイルス対策で採られた手法は、国境管理、移動制限、接触制限、閉鎖・封鎖などといった古典的なものでした。
また、「公衆衛生」と「政治」の関係もクローズアップされました。公衆衛生を優先すれば、当然、「私権」が制限されざるをえません。それをいかに、どのような根拠で行うかが問題となったのです。
ここで明確に出てくるのが、「緊急事態への対応で優れるのは民主主義か? 独裁か?」という問題点です。「権威主義のほうがこのような危機には対応しやすいのではないか」という主張もあれば、「一時的な民主主義の停止はあってもいいのではないか」という主張もあります。
果たして民主主義は、この危機を乗り越えることができるのか。その問いかけが、文明論的にも政治的にも重要な課題となるのです。まさにこれから大問題になるであろう論点と課題を浮かび上がらせた講義です。ぜひご覧ください。
COVID-19戦時下の今できること
|
堀江重郎
順天堂大学医学部大学院医学研究科 教授
|
新型コロナウイルスとの厳しい戦いが続く状況下においては、「Stay Home」に頑張るだけでなく、個々人としていかに免疫力を高めるかも、とても重要なことでしょう。その点について、堀江重郎先生(順天堂大学医学部大学院医学研究科教授)が緊急でお話ししてくださいました。
「具体的な免疫力の高め方」は第3話、第4話でお話しくださっていますが、堀江先生が推奨されるのは、朝鮮人参、ビタミンDなどです。これらは、医学的に免疫力を高めることが証明されているもので、抗がん剤治療などの折にも処方されるものとのこと。どのように摂取すればいいか、具体的に教えてくださっています。バイアグラやシアリス、ザルティアなどのPDE5阻害薬も悪玉免疫細胞を抑えたり、肺炎などの炎症を抑制したりする可能性があるそうです。また、悪玉免疫細胞は、酸化ストレスを出すことによって免疫細胞を抑えてしまうことから、酸化ストレスを減らす工夫などについても解説くださいました。
堀江先生はこうおっしゃいます。「おそらくこれから、色々なウイルスの特効薬が開発されていきます。しかしそれまでの間にできることがあります。一番良いシナリオは、軽く罹って、知らないうちに治ってしまうということが大事です。おそらく数年のうちには、国民の大多数が1回は罹る状態(インフルエンザと同じですが)になっていくと思います」。
もはや、ここまで全世界的に感染が広がったなかでは、この堀江先生のご指摘はとても重要なことでしょう。ぜひ本講義をご視聴ください。
新型コロナウイルスの克服
|
橋本英樹
東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 保険社会行動学分野 教授
|
橋本英樹先生には、公衆衛生学の見地から、いま何が起きているのか、これまでの対策をいかに評価すべきか、これから何が起きるのか、良いロックダウン・下手なロックダウンの違いとは、そして成功と失敗を分ける大切なこととは何かを、わかりやすくお話しいただきました。
日本では、世界各国のなかでも比較的早く、新型コロナウイルスの発症が起こりました。しかし、それから2020年3月末まで、他国に比べるとピークが低めに出ていました。「色々な批判はあるが全体として見れば日本はここまでは、かなりうまくやってきた」と橋本先生は分析されます。そのうえでポイントは、うまくやってきて時間が稼げた分、どう次の手を打つかだとおっしゃいます。
当初、日本で比較的うまくやってこられたのは、まさに日本的な特徴を発揮し、現場の方々が全力を尽くされたからだと、橋本先生は指摘されます。その1つがクラスター対策班、そしてもう1つが保健所です。では、それぞれがどのような役割を果たしてきたのでしょうか。
さらにロックダウンになった場合でも、「良いロックダウンと、下手なロックダウン」があるといいます。どのようにすると、悪いロックダウンになってしまうのか。成功と失敗を分けるものは何なのか……。
いま、何が起きているのか。とてもよくご理解いただけると思います。また、「社会連帯の崩壊こそが本当の敵だ。1人ひとりの力を集めて創発的に乗り越えていくことが重要だ」というご指摘は、まさに、いまわれわれに一番大切なことを教えてくれます。
ウイルスの話
|
長谷川眞理子
総合研究大学院大学長
|
ウイルスとは何か? そう問われると、案外多くの方が、はたと困るのではないでしょうか。本講義では長谷川眞理子先生が、「そもそもウイルスとはいかなる存在で、どのような性質があるのか」について、生物学的な見地から詳しくご解説くださっています。
本編ではまず、「ウイルスは生物なのか。そうではないのか」との問いが発せられます。ウイルスは細胞を持たず、ただ袋のなかに遺伝情報が入っているだけのような存在であり、自分自身単独での増殖ができない。その点では、生物とはいえない。しかし、他の細胞に入り込んでその力を搾取して増殖し、遺伝子を残していくことを捉えれば、生物ともいえる。そういう難しい存在だというのです。
しかも、ウイルスはDNAかRNAか、どちらか一方の遺伝情報しか持ちません。このうち二重らせん構造のDNAは比較的遺伝情報がしっかりと保存されていて修復力もあり、どちらかといえば変異しづらい。しかし、一本鎖RNAは、DNAのように情報が守られず、頻繁に変異していきます。
HIVやコロナウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなど、大きな被害をもたらす有名なウイルスのほとんどは、この一本鎖RNAウイルスだそうです。これらのウイルスは、遺伝情報が頻繁に変化し、進化速度が速い。たとえば、HIVの進化速度は、宿主の細胞の100万倍にもなる。それゆえ、ワクチンの開発が非常に難しいのです。
意外に知らないウイルスのことが、この講義を学ぶと、よくわかります。今般のような危機に的確に対処していくためにも、ぜひ本講義をご受講いただければ幸いです。
新型コロナウイルス問題を日本の疫病対策の歴史から考える
|
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授
|
今般のウイルス禍が日本国内で大問題になった当初、安倍総理が「要請」のかたちで様々な対処を訴えたことなどが、一部で問題となりました。しかし、実はそうなってしまった背景には、明治30年(1897年)に制定された伝染病予防法を、1999年に廃止してしまったことがある、と片山杜秀先生(慶應義塾大学法学部教授)は喝破されます。
人類の歴史は、まさに疫病との戦いでした。ヨーロッパでもペストなど大量死を伴う疫病の流行があり、これに対抗するために各国は、警察権力を用いてでも強制的な隔離を行って疫病を封じ込める体制を構築していきました。
明治になってから、西洋諸国のそのような仕組みを学んだ日本は、当時の内務省に衛生局を移し、警察や地方各県(当時の県知事は内務省からの派遣でした)と連携して疫病を阻止する体制を整え、「伝染予防法」をつくります。
伝染病予防法では、地方長官が都市封鎖をしたり、交通を止めたり、集会を「禁止」することができました。しかし、この体制は徐々に崩れ、1998年に感染症法が制定されることで、翌年に伝染病法が廃止されることになります。この感染症法は、国家の強権を忌避し、個人のプライバシーや自由を最大限に尊重する精神でつくられました。
しかし、本当にそれで良かったのか……。片山杜秀先生は本講義で、そう問題提起されます。さらに片山先生は、国家と疫病の関係をめぐって、ホッブスやジョン・ロックの議論にも言及されます。政治学や哲学ではなじみ深い名前ですが、「疫病と政治」いう視点を入れることで、新たな気づきが得られます。
国家の役割とは何なのか。危機を克服する体制とはいかなるものか。それを考えるにあたって、大きなヒントとなる講義です。ぜひご覧ください。
新型コロナウイルスと経済問題
|
柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
|
今般のウイルス問題が世界経済に与える深刻な影響が大いに懸念されています。リーマンショックは、金融市場の問題が波及したものでしたが、今回は、実体経済そのものが世界的に停滞しています。物流が停滞し、経済活動が縮小していく状況が世界規模で起きているのです。すでに、これは下手をすると相当尾をひく問題になるのではないか、恐慌に突入するのではないか、という懸念の声も上がっています。
このような状況を受けて、世界各国で様々な対策が打たれています。果たして、なぜ、そのような対策がなされなければならないのか。それによって、どのような効果が期待されるのか。そして、経済を落とし込まぬために必要なこととは何か。そのような基本的で大切なことを、柳川範之先生にわかりやすくご解説いただいたのが、本講義です。
柳川先生も、今回は「いままでに例を見ない、グローバルなショックが起きている」と指摘されます。何らかのショックが起きたときに物流や交通が止まってしまうのはしかたがない。しかし、それを悪循環に陥らせないためには、俗にいう連鎖倒産などを防ぐために全力を挙げなければなりません。
もう一つ怖いことは、「将来もっと大変なことが起きるのではないか」「いまの賃金が得られなくなるでは」という予想が、消費を一気に減退させ、負のスパイラルが生まれることです。これを避けるためには、所得のサポートなども行っていかなくてはなりません。
もちろん、このような対策には、うまい手もあれば、悪手もあります。果たして、どのようなことに留意して進めるべきなのか――。それについては、ぜひ本編をご覧ください。
関連リンク
関連リンクのリンク先は外部サイトとなります。「テンミニッツTV」によって運営・管理されているものではございません。