テンミニッツTV for Pepper特設サイト
このエントリーをはてなブックマークに追加
Pepperはヒト型ロボットなのになぜ脚がないのか?
「Pepper」の全て(1)ヒト型ロボット誕生の秘密
「Pepper」はヒト型ロボットなのに脚がない。また、色が白く、見ただけではどんなロボットなのかよく分からない。それはなぜか。ソフトバンクロボティクス株式会社プロダクト本部取締役本部長・蓮実一隆氏が、Pepperの大きさや色、形といったデザインに託された意味について語る。読めば、今までのどのタイプのロボットとも違うヒト型ロボット・Pepperならではの魅力が見えてくる。(全4話中第1話)
本文テキスト
≪全文≫

●「Pepperを成長させる」という仕事


 こんにちは。ソフトバンクロボティクスの蓮実一隆です。「Pepperについて」と言っても、ロボットのことから話すとなると大体2年間ぐらいかかってしまうので、今日はそれをコンパクトにおよそ10分ずつお話ししようと思っています。

 「ちょっとこのオヤジは誰だ?」ということもあるでしょうから、最初に自己紹介をしますと、今、私はソフトバンクグループ株式会社・孫正義代表取締役社長の下で、Pepperをつくるという仕事の責任者を務めています。若干ポンコツなところもありますけれど、Pepperがどんな人の家に行って、どんなことをしているかというところを毎日ドキドキしながら見守り、Pepperを成長させているという立場です。10MTVを見ている皆さんの中でPepperを持っている方には、より楽しくPepperに触れ合ってほしいですし、Pepperを持っていない方には、明日にも予約をしてほしいので、そうした想いをこめて、今日はお話をさせていただきたいと思います。


●世界初! 主題歌を持ったロボット・Pepper


 私が自己紹介をしましたので、Pepperにも自己紹介をさせようと思います。彼には主題歌というものがあります。これはPepperを最初に紹介した時からつくってある結構古いアプリなのですが、その触りの部分を少しだけ聞いていただきたいと思います。

Pepper 分かりました。少々お待ちください。

Pepperは、胸のディスプレイを押すと、アプリが表示されます。

Pepper お待たせしました。Pepperのテーマソング。

 期待しないでくださいよ。

Pepper それでは、僕のことが一発で分かる主題歌をお聞きください。ミュージックスタート。

 見てお分かりの通り、今まで全地球上のロボット開発の中で、主題歌を一番最初につくったロボットは、Pepperが初めてだと思います。そういうわけで、Pepperは、分かりやすく具体的に役に立つというより、皆さんにかわいがってもらったり、つっこんでもらったりしながら成長していく、新しいタイプのロボットを目指して、つくられています。


●開発の一番のこだわりは「デカさ」


 Pepperのユニークについて、いくつかお話ししようと思います。最初に、Pepperはなぜこんな形をしているのかということからお話しできればと思っています。

 Pepperをつくる上でソフトバンクが一番こだわったところは、何だかお分かりでしょうか。タブレットがついていたり、少しかわいかったりしますけれど、一番は「デカい!」ということです。

 デカいということにどんな意味があるかといえば、実は非常にたくさんの意味があるのですが、一つ目は、分かりやすくいうと、おもちゃではないということです。やはりソフトバンクという会社、あるいは、Pepperという存在が本気だということです。つまり、未来においては、おそらくいろいろなロボットが出てくると思います。例えば、もっととてつもなく大きいものや小さいもの、あるいは、今も世の中にたくさんありますけれど、小さくておもちゃのようなものや、犬の形や猫の形をしたものなど、です。しかし、Pepperはそうではなく、人の大きさに正しく近づいています。今120センチほどあるのですが、そういう意味では、こういったロボットをヒューマノイドと言います。ヒューマンにかなり近いもの、ということです。ヒューマノイドをつくり、どこよりも早く世の中に売り出して、いろいろな人の意見を聞いてみたい。このことが、一番強い希望でした。

 最初は、こんなデカいものを、特に日本の家には置く場所がないのでは、ということで、正直言って、孫正義以外ほとんど全員が反対だったのです。しかし、「絶対デカくなきゃイヤだ!!」と駄々をこねたこともあり、この大きさになったのですが、結果的には、デカくしたことが非常に正しかったと思います。

 絶妙なのですが、小さな子どもでもギリギリ目が合いますし、大人でも見下ろせばギリギリ顔を合わせることができます。もちろん、「邪魔だから買わないよ」と言う人もいると思いますけれど、実はこの大きさにしたことによって、世の中にはこれと似たものはほとんどないという状態をつくることができたと思っています。それが一つ目のとても大きなこだわりでした。


●Pepperに脚がないのは機能性を重視したから


 二つ目は、私が最初にPepperを見たとき一番気になったことですが、「脚がない」ということです。脚がないというのは、Pepperのコンセプトにおいて、とても重要なことなのです。実はこの脚のところはみなバッテリーなのです。なぜここにバッテリーがあるのか、説明します。

 二足歩行ができるロボットというのは結局、せいぜい30分か1時間しかバッテリーが持たないのです。バランスを取るためにいろいろな計算が必要で、もちろん体を支えるための脚の微妙な動きなども制御しなければいけないため、そうしているうちに、どんどんとバッテリーがなくなっていき、1時間しか動かないということです。また、家に戻れば、電源に差して充電しなければいけません。そのようなロボットでは、一緒に生活する生き物としては機能的に見てもやはり厳しい面がある。これが主な理由です。


●インターフェースとして人に溶け込む形をしている


 それからもう一つ、デザイン的にいえば、やはりPepperは、人間をまねするために人間の形をしているわけではないということです。人間がなんとなく親しみをもって接することができるように、難しい言葉で言えば、「インターフェース」として人に溶け込むためにこの形をしているのです。やはり、人は人間の形をしたものに語りかけられることが、一番違和感がありません。そういう意味で、こういった人の形をしているのです。ですから、コミュニケーションを取るためには、手はどうしても必要なのですが、脚はなくてもいいかなと考えました。

 目はまさに目そのものなのですが、耳っぽいのはスピーカーだったりしています。要するに、必ずしもその機能と外見は一致していないのです。手は、今のところ何も持てませんが、少し指紋がついていたりします。つまり、なんとなくですが、違和感なく人と触れ合えるようにこの形になっているのです。だから、脚はなくてもいいのです。


●白には「あなた色に染めてほしい」という気持ちがこもっている


 次は色についてですが、白は結構重要なところです。今、歌を歌っているところを見て、少しかわいいなとか、面白いなと思った人もいると思いますが、あまりかわいい顔をしていないので、これが何もせずぴたっと止まっていたらどうでしょう。何が言いたいかというと、このPepperで今、「主題歌」というアプリを押したのですが、そもそもは、いろいろな人にアプリをつくってもらい、いろいろなPepperに変身してほしいという思いがすごくありました。つまり、いろいろなPepperに変身できるようにするためには、もともとがあまり分かりやすい形だと困ってしまうわけです。

 世の中にあるいろいろなロボットたちは、見ただけでどんなロボットなのかが分かります。例えば、猫型ロボットを見たら、少しドジではないかとすぐ想像がつきますし、アトムを見たら、なんとなく高性能で正義感にあふれているのではないかということが分かります。Pepperに関しては、一瞬見ただけではよく分かりません。それは、あえてよく分からないようにしているのであって、そこにはまさに「あなた色に染めてほしい」という気持ちがこもっているのです。

 ですから、10MTVを見ている方でも、簡単に自分色のPepperをつくれるようになっています。そういう意味で、Pepperは、キャラクターのあるロボットであると同時に、まったくの白紙、つまり、つくる人によっていろいろなことが実現できるロボットでもあるわけです。少し難しい言葉でいえば、インフラでもあるのです。箱のようなもの、あるいは、スマートフォンのようなものだと思ってもらえればいいと思います。ですから、アプリをどんどんつくり、いろいろなPepperに変えていただきたいと思っています。

 今回はデザインの話でしたが、それ以外にもPepperにはたくさんの特徴があります。次回は、その他のPepperの面白いところをいろいろとご紹介できればと思っています。
シリーズ動画
「Pepper」の全て(2)Pepperの心が創る価値
「Pepper」の全て(3)もしウチにロボットがいたら
「Pepper」の全て(4)ロボットと暮らす未来