感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
mRNAワクチンのゴールはがん免疫サイクルを回すこと
感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(4)mRNAを使ったがん免疫治療
健康と医療
内田智士(東京科学大学 難治疾患研究所 教授 /京都府立医科大学 大学院医学研究科 特任教授 )
日本で最も死亡率の高い病気であるがん。がんについての研究はかなり進んでいるものの、その病気の複雑さからより洗練された手法が求められている。そこで注目されているのが「がん免疫治療」である。治療のためのがんワクチンにmRNAを使うという試みが進められているのだが、それはいったいどのようなものなのか。がん免疫治療の歴史とともに、最新のがん免疫治療について解説する。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分54秒
収録日:2021年4月13日
追加日:2021年7月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●「がん免疫治療」とは何か


内田 ここでは、がんを治療するためのがんワクチンにmRNAを使う試みについて紹介させていただきます。

 まず「がん免疫治療」とは何かを上のグラフで示します。これは、がんになって、それが手術で根治できない患者さんの生存率と時間の関係を調べたものです。こういった患者さんはもちろん何も治療しないとほぼ全員が亡くなります。

 標準的ながん治療である化学療法を行うと、この生存期間が若干延びます。ただ、それでもほぼ全ての患者さんが亡くなります。

 一方、免疫治療をするとどうなるかというと、一部の患者さんではありますが、非常に長期的な効果が得られることが分かっています。これは一度がんに対して免疫応答が起こると、身体はずっとそのがんを攻撃し続けるので、再発しにくくなったり、長期間にわたって効果が出ると言われています。これがこれまでの他の治療とは根本的に違う点とされています。

 ただこのグラフからも分かるように、まだまだ効果のある患者さんは少ないので、現在、研究が行われていることによって、今後より多くの患者さんにこういった免疫治療の効果が得られるようになるのではないかと考えられます。


●がん免疫治療の歴史


内田 このがんの免疫治療の歴史について見ていきます。19世紀には既に、がんの患者さんがたまたま丹毒に感染すると、そのがんが小さくなることが分かっていました。これはがんに対する免疫応答であることが何となく分かっていました。このことに着想を得て、このがんに対して菌を投与することによって、がんを治療できないかと考えられました。ただ、菌をそのまま投与するというのはもちろん非常に危ないので、副作用をできるだけ弱くするために、菌の中の特に毒素だけを取り出した「コーリートキシン」が開発されました。これががんに対する初めての免疫治療と考えられています。

 時代が進むにつれて、がんの免疫についていろいろなことが分かってきます。ここの実験では、化学的に発がんさせたマウスのがんを遺伝的に全く同一なマウスに移植します。このような遺伝的に同一なマウス間での移植では、基本的に拒絶反応というのは全く起きないとされています。しかし不思議なことに、このがんを移植した場合だけ、一...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
膵臓の病気~がんと治療の基礎知識(1)膵臓の役割と疾患
沈黙の臓器「膵臓」とは?2つの役割と疾患の種類
糸井隆夫
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
腸内細菌の可能性とマイクロバイオームのダイバーシティ
注目は納豆!腸内細菌が生成する若返り物質「ポリアミン」
堀江重郎
1分チャージ! 新・エクササイズ理論
たった1分で効果を上げる新運動理論と攻めのダイエット
堀江重郎
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子