10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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腸内細菌が生成する若返り物質「ポリアミン」がスゴイ!

腸内細菌の可能性とマイクロバイオームのダイバーシティ

堀江重郎
順天堂大学医学部大学院医学研究科 教授
情報・テキスト
近年、腸内細菌のさまざまな働きが明らかとなり、病気の治療や予防に加え、アンチエイジングにも効果のあることが分かってきた。人間と古いつき合いでありながら、新しい可能性に満ちた腸内細菌のパワーについて、順天堂大学医学部大学院医学研究科教授・堀江重郎氏が解説する。
時間:17:47
収録日:2016/06/27
追加日:2016/08/27
ジャンル:
≪全文≫

●1000兆もの腸内細菌


 皆さん、こんにちは。順天堂大学の堀江です。

 今日は、腸の中の細菌のお話をしたいと思います。腸で食べ物が消化されて便となって出てきますけれども、便の中に非常に多くの細菌がいることは、昔からよく知られています。例えば、ギョウチュウやカイチュウといった寄生虫を調べる検便も行われてきましたが、通常、大腸の中には非常に多くの数の細菌がいるといわれています。人間の体全体の細胞の数が大体50兆~60兆といわれていますが、実は腸の中にある細菌の数はおそらく1000兆くらいあるといわれ、人間の細胞の個数の何百倍もあるということが、知られています。


●人間と体内細菌の持ちつ持たれつ深い関係


 この体の中にある細菌は人間とともに生きています。こういった細菌は、人間が得てきた食べ物からエネルギーを得ているのですが、それと同時に、人間に対してもプラスになるような働きをしています。例えば、腸の中ではありませんが、胃の中にピロリ菌という菌があります。現在、ピロリ菌は胃がんを起こす悪玉の菌だといわれていると思います。ところが、このピロリ菌は、もう何十万年も前から人間とともに共生している、ということが分かっています。

 人類はそもそもアフリカで発生して、世界中に広がっていきました。アジア人と人種的には近い南アフリカの原住民、あるいはインディオといった人々がいますが、例えばペルーの人たちと日本人のピロリ菌は非常に似ているのです。しかし、われわれ日本人のピロリ菌とヨーロッパ人のピロリ菌は全然違います。ということで、実は人間が少しずつ変化していく中で、ピロリ菌も変わっているのです。こうして、ピロリ菌と人間は非常に長い間、付き合っているのです。

 では何をしていたか。非常に面白いのですが、人間は胃の中で胃酸という酸を出して、食べ物に含まれるタンパク質などを分解していきます。胃酸が強いと当然、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、あるいは食道炎といった病気になるわけですが、この胃から出る酸を薄める、あるいは中和する役割をしているのがピロリ菌なのです。ピロリ菌はアルカリ性の物質を出すことによって胃酸を薄めています。逆の言い方をすると、人間は昔はひょっとすると胃の中で胃酸の酸性度を調整していたかもしれないのですが、ある時点からピロリ菌に全部外注するようになりました。胃酸を出すことは人間がやるのですが、中和するのはピロリ菌が担うというシステムになったということです。

 最近はピロリ菌を持っていると胃がんのリスクが高まる、ピロリ菌に感染すると大体10パーセントの人が胃がんになるといわれているのですが、残りの90パーセントの人は胃がんになりません。しかも、昔のまだ平均寿命が短い時代には、胃がんになるということは、その時の平均寿命の時間軸からは多分外れていた、ということだと思います。

 現在、ピロリ菌が見つかった段階でそれを消してしまう、つまりピロリ菌の除去です。皆さん、お聞きになっていると思いますが、それによってピロリ菌がいなくなったため、逆に胃酸が強くなってしまい、実は今、食道がんが増えているのです。これは、食道が胃酸にさらされるということで、ピロリ菌がいませんから、特に胃に近い部分の食道が強い胃酸に繰り返しさらされるということです。それによってがんができるため、こういったピロリ菌を退治した後の食道がんが、世界中で急激に増えているという、大変皮肉な結果になっています。

 まだ、今の段階でピ...
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