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人間というものは、お互いに飼い合いをしている

松下幸之助の人づくり≪1≫真のリーダーとは(2)羊飼いは羊の性質を知っている―人間の把握

松下幸之助
パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者
情報・テキスト
商売も経営も政治も国家も、この世の中は結局は人間が動かしている――だからこそ、松下幸之助は、松下政経塾での教育の一丁目一番地に「人間の把握」を据えた。羊飼いのたとえ話も織り交ぜつつ、幸之助自身の言葉で語る人間の把握、新しい人間観、そして人情の機微。(第1章2話目)
時間:11:31
収録日:2015/06/17
追加日:2015/11/11
ジャンル:
≪全文≫

●羊飼いは羊の性質を知っている


 そういうことを考えるのが、政治家の使命です。それを考えるについては、広範な周囲の分野にも関わる、政治的力量を養っていく必要があります。そして、それにはまず人間というものを、徹底的に理解しなければならない。あたかも、優れた羊飼いが羊の性格や特質というものを「こういうものだ」と見極めているように、人間について熟知していなければなりません。羊飼いが「羊は犬のようなものである」などと思っていたら、これは必ず失敗します。羊飼いとして成功するには、羊の食物の好き嫌いから、もっと広い範囲にわたって、羊の性質を研究しなければならないでしょう。羊の本質というものを十二分に見極めて、そして初めて羊飼いとして成功するわけです。

 われわれ人間というものは、いわばお互いに飼い合いをしているわけですね。私は諸君に飼われているし、また諸君は私に飼われている。そういう飼い合いをしているのです。したがって、皆がお互いに「人間とはどういうものか」という人間の本質を知らなければならない。人間の本質を知って、初めて政治家としての可能性があるわけです。

 「人間はサルみたいなものだ」と考えたら、成功しません。人間は、サルとは違う。サルはこうだけど、人間はこうである。そのように考えて改革していかなければ、何も変わらないわけです。会社の経営をする場合でも、成功しようと思ったら、従業員は人間ですから、「人間とはこういうものである」と、そこから出発しなければいけないわけです。


●新しい人間観と日本人観の確立


 何を言っても基本になってくる。新しい人間観の確立、同時に新しい日本人観ですな。この確立をまずやらなければならない。

 日本の高度成長は一気に進み、非常に結構な姿だと思いますけれど、どうもその内容の基礎に非常に弱いものがあるのではないかと思う。伝統の精神というものをはっきりと見つめなければいけない。その上に立って、国家経営というものを考えなければいけない。


●人情の機微を知っていたら天下でも取れる


 それは(人情の機微をつかむことは)非常に大事なことだけど、一番難しいこと。人情の機微を知っていたら天下でも取れる。だけど、それを知っている人というのは少ない。自分でいろいろ当たって砕けたり、やっていくうちに自然につかむから、自分で悟ってつかむしかない。学ぶべきものでなくして、それは悟るべきもの。だから「それをこうしたらよろしい」と教えるといっても、教える道がない。それぞれが持っている持ち味から出てくるもの。

 しかし 原則としては、思いやりというものが必要。その人の人に対する思いやり そういうものを持っていなければいけない。人情の機微が分かったら、思う通りのことができる。行く手に障害というのは起こってこない。人情の機微が分からないから、障害が起こってくる。だから、やはり察しのいい人はいる。察しのいい人は やはり人情の機微が分かる。

 サービスという言葉がある。サービスというものは全てにおいて必要。言い換えて言えば、慈悲の心。仏教で言うと、慈悲心がなければいけない。サービスは慈悲心から出てくるから、そういう慈悲心を欠いたサービスというものは付け足しで、本当に人を動かすことはできない。いくら人情の機微を知っていても。人情の機微というものをある程度理解して、それを実行しているようでも本当にそれが生きてくるには、その奥に慈悲心がないといけない。人生で一番大事なこと。事を為さんとする者の要諦はそこにある。だから、あなたはそういうことをつかまないといけない。

 人間の自覚というものが今は混乱している。混乱している状態だ。それで、諸君は大学を皆卒業して、勉強する機会があったけれども、各大学で「人間観はこういうことだ」ということを習っていると思うけれども皆、個々別々違うか、大学では全然勉強していないわけだ。それは大学で教えないといけない。人情の機微というのは皆バラバラになってはいけないから、それをうまく調和するような仕事も人情の機微を察することになる、個々人には。だから、近くに人がいても同じように愛していくということが、人情の機微に沿うことになる。


●松下塾主のど真剣な生きざまを垣間見た/野田佳彦


 月1、2回、2カ月に1回ぐらいのペースで直接塾に来られますけども、宿泊されるのは、松下政経塾に茶室があるのですけれど、そのお茶室に泊まられるのですね。

 そのお茶室に泊まられた時は、これは松下幸之助さんがつくった一つの具体的なカリキュラムだと思うのですけれども、塾生がお世話をするのです。

 食事を運んでいったり、お風呂の用意をしたり、あるいは朝、新聞を届けに行ったりするようなことを、お茶室ですから、茶坊主のようなことを担...
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