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成長戦略に注目する声もあるが市場の本心は再度の量的緩和

アベノミクスの行方を読む~量的緩和とインフレ期待~

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
安倍政権発足から1年と半年が過ぎた今、アベノミクスへの不安が広がっている。昨年12月に暴落した株価や、今年4月から8パーセントに上がった消費税の影響など、果たして今後アベノミクスはどうなっていくのか。第一の矢である量的緩和とインフレ期待を中心に、アベノミクスの行方について曽根泰教氏が語る。
時間:11:55
収録日:2014/05/28
追加日:2014/07/03
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≪全文≫

●アベノミクスで最も影響が大きいのは量的緩和とセットのインフレ期待


―― アベノミクスについて、皆さん、かなり不安になってきていると思います。実際、日本だけ昨年12月末から株価は激しく落ちてきています。今年4月からは消費税が上がり、いろいろな控除もなくなっています。一方、ガソリン代をはじめ、電気料金、食料品の値段は上がっています。賃金に関しては、7、8割が中小企業ですから、それほど上がっていないという状況です。

 先日話を聞いたシンガポールと香港のヘッジファンドは、去年までだいたい10くらい持っていた日本株を今はもう2しか持ってないそうです。残っている2も、「今後何もやらないのだったら、売るぞ」という感じでした。以前話を聞いたアメリカのヘッジファンドもそういう印象でした。

 そんな中で、アベノミクスの行方について、どのように考えていけばいいのでしょうか。

曽根 アベノミクスの中で、日本経済に影響を与えている一番大きい部分は、量的緩和です。量的緩和とセットなのは、人々の心理をインフレ期待にすることで、これをミックスで捉えることが重要です。

 実体経済にどう影響を及ぼすかのコア部分についてですが、無制限に2パーセント、2倍、2年と、どんどんと量的緩和をすることで、これは心理的なインパクトが非常に強かったわけです。現実的にそれは、株式、不動産に影響を及ぼしました。

 そこで、国民がインフレ期待を持つことよりも早く気が付いたのは、投資筋、投機筋です。これをビジネスチャンスと捉え、日本株を買いました。その結果、上がる要素は、ほぼ最初の半年、または1年で出尽くしてしまいました。

 去年の5月23日には、アメリカの量的緩和がどうなるか、すなわち、その縮小への懸念がきっかけで、株価が落ちました。そういう意味では、日本の株式市場の動きは、日本国内的な要因で動いているのではないということです。アメリカ、あるいは、海外、ウクライナ、中国の不動産市場を含めた影響を受けている市場です。それを考慮した上で、基本的に日本株を買って日本円を売るという作戦は、昨年の暮れぐらいに転換したわけです。

●日本国内の経済問題と、インフレ期待や投資動向は、分けて考えたほうがいい


曽根 では、今後どうなるかですが、表面的には、「第3の矢である成長戦略がないからだ」と言っていますが、本心は、「もう1回量的緩和をしろよ」「儲けるチャンスをもう1回、俺たちによこせ」という要求だと思います。この部分は、まさしくマーケットが要求しているので、果たしてその通りにするのかどうかという問題があります。つまり、アベノミクスという日本国内における経済問題として考えることと、投機筋のインフレ期待と投機筋の投機、投資動向をどう見るかを考えること、この二つは違うことだろうと思います。

●非正規を生む企業の社会保障費負担問題にアベノミクスは手を付けていない


曽根 現実としては、人手不足で、居酒屋は人を集めるのが大変だというようなことが若干は起きています。あるいは、少し消費行動が変わってきたということもあります。それから、労働組合に対して、自民党の人たちの気持ちの中には、「俺たちのおかげで賃金が上がったではないか」という思いはあると思います。とはいえ、そんな簡単に雇用が、非正規から正規に変わることにはならないと思います。

 その大きな理由は、賃金構造の問題というよりも、実は、企業が社会保障費負担分をどう考えるかという問題があるからだと思います。つまり、企業は一人雇うと、そのコスト負担、とりわけ、社会保障費の負担分を考えざるを得ないわけです。そして、この負担が大きいため、非正規雇用という形になってしまうのです。日本の非正規雇用は3分の1から2分の1近くへ増えています。よって、社会保障費負担分の問題を解決しなければ、正規雇用への流れはできないし、正規になることによって所得が安定し、消費行動が潤沢に回り始めるということは難しいと思います。

 ところが、アベノミクスはこの問題には手を付けておらず、単なる有効求人倍率や時給はどうかという程度の話に留まっていると思います。ですから、経済全体をどうするかという話には、まだ至っていないのです。


●輸入物価によるインフレ効果を持続させるにはもっと緩和をすること


曽根 アベノミクスで一番効いたのは、輸入物価です。日本からの輸出が増えるというよりも、輸入物価、特に石油とLNGの価格が上がったということです。つまり、輸入の量はそれほど変わっていない、あるいは減っているのに、為替レートの問題で、石油代、LNG代、特に電力会社などは、そこに対する支払いが大きくなったのです。ですから、量的緩和をするということで明らかにすぐ効くのは、輸入物価、そし...
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