10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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問題は五輪後! 経済効果に期待するあり方に疑問を提示

「イベント経済」の限界

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
オリンピックや万博など「お祭り」の経済効果に期待する人がいる。しかし、祭りはあくまでも一時的なもので、本質的な問題は、日常的に売れるものが出せるかどうかだ。慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、「お祭り」による経済効果に期待する「イベント経済」のあり方に、疑問を提示する。
時間:07:53
収録日:2015/09/15
追加日:2015/10/26
オリンピックや万博など「お祭り」の経済効果に期待する人がいる。しかし、祭りはあくまでも一時的なもので、本質的な問題は、日常的に売れるものが出せるかどうかだ。慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、「お祭り」による経済効果に期待する「イベント経済」のあり方に、疑問を提示する。
時間:07:53
収録日:2015/09/15
追加日:2015/10/26
≪全文≫

●「イベント経済」には限界がある


 「イベント経済」というものがありますが、このイベント経済には限界があるということをお話ししたいと思います。そのきっかけは何かと言いますと、クロネコヤマトの創始者である小倉昌男さんです。小倉さんと晩年かなりお付き合いがあったのですが、小倉さんはヤマト福祉財団というものをやっていまして、つくづくこう言うのですね。

 「福祉団体、あるいは障害者団体へ行くと、障害者の人が月給1万円しかもらっていない。一方、その福祉事業を経営している人たちは、補助金などがあるから10万円もらっている」と。そこで小倉さんは、「私は経営のプロだよ。福祉は素人だけども、これはおかしい。障害者の人に10万円の月給を払いたいのだ。そうして自立してもらいたい」ということを言うのです。

 なぜ1万円なのか。障害者の人は牛乳パックを使って紙を作ったり、ハガキを作ったり、端切れからキルトを作ったりしています。「これを買う人は確かにいるかもしれないけれども、それはバザーのときでしょう。年1度か2度開かれるバザーのときには買うかもしれないけど、日常的に買ってくれる人はいないのではないか」と。

 確かにそうなのです。日常的には買ってくれないわけです。その時、小倉さんは、「日常的に買ってもらえるようなものに工夫したらどうか。そうすれば月給10万円を払えるのだ」ということを言うわけです。現に「スワンベーカリー」という店を始めました。パンの生地は、おそらくアンデルセンから冷凍で買っていた、あるいは供給してもらっていたのだと思います。

 障害者の人でも、パンを作るのが非常に得意な人、技術がある人はいるのですね。ですから、「スワンベーカリー」のようなものを作れば、そこで月給10万円が払えます。そこで作った商品を売る。それこそが福祉だろう、社会保障だろうということだったのです。

 また、小倉さんは晩年の時に「私、いま備長炭を調べているのですよ」と言いました。障害者の人の中には炭焼き名人もいるのですね。備長炭なら、やはり月給10万円を払える商品になるのではないか。障害者の人に備長炭を焼いてもらって、それを売れるのではないかということを言っていました(最近、ヤマト福祉財団の人に聞くと、備長炭は少し問題があって、今はやらないのだということですが)。一言で言えば、ビジネスとして成り立つものを、障害者の得意な領域で売るということです。これが非常に重要な点です。


●問題は「祭りの後」にある


 ここから何を言いたいのか。世の中には「お祭り」が大好きな人がいるわけです。お祭り自体は結構なのです。オリンピックをやりたい、万博をやりたい。それによって経済の活性化をしたいということですね。

 それもそうなのですが、それは年に1度か2度のことでしょう。オリンピックは世界中の国のさまざまなところでやるわけですが、4年に1度でしょう。万博も、そう頻繁に開かれているわけではありません。

 問題は、オリンピックの例で言えば、それこそ「祭りの後」のことです。オリンピックをやって、経済的に成功した例もあります。代表的なのは、ロサンゼルスだろうと思います。東京オリンピックは1964年で、その後に不況が来ます。ただ、東京の場合は大したことがありませんでした。

 1980年にはモスクワでオリンピックが開かれますが、1989年にはソ連共産党が大ダメージを受けて、やがて破綻するわけです。ベルリンの壁も壊れます。ソ...
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