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「改憲勢力3分の2」なぜ各社の見出しは同じになったのか

総括・2016参院選~「改憲勢力3分の2」の意味を問う

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2016年7月10日に行われた第24回参議院議員通常選挙。この選挙はいったい何の選挙だったのか。選挙翌日の各新聞社の見出しを見ると、各社それぞれ立場が違うはずなのにいずれも「改憲勢力3分の2」と書かれている。これはどういうことなのか。政治学者で慶応義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は、今回の参院選の総括として、この「3分の2」の意味をもう一度確認しておく必要性を説く。
時間:12:16
収録日:2016/07/13
追加日:2016/07/15
カテゴリー:
タグ:
≪全文≫

●新聞各社がいっせいに見出しとした「3分の2」


 今回の参議院選挙の結果をどう読み解くかをお話ししましょう。

 一体この選挙が何の選挙だったのかについては、選挙前に10MTVでお伝えしていました。これは、各新聞社の翌日の見出しをご覧になっていただくといいと思います。そろいもそろって「改憲勢力3分の2」という見出しが躍っています。新聞の立場はそれぞれ違うわけですが、「3分の2」というところ、正確にいえば「改憲を発議することができるようになった」ことが結論であると、どの新聞社も理解したわけです。

 ですから、この選挙の中心はアベノミクスでもなければ一億総活躍の話でもなく、実は憲法だったということになるのです。

 技術的な点では、自公は憲法や安保、集団自衛権にはあまり触れず、もっぱら経済争点を前面に出して「選挙に勝つ」という作戦でした。野党側は統一候補を立てるという手法を取りました。最後の接戦で勝った部分はありますので、野党統一という手法自体はあり得る手法であり、一人区で勝つためには統一せざるを得ないことははっきりしました。

 しかしながら、「3分の1の議席を野党で確保したい」という目的は実現できなかったわけです。ただ3分の1は、本来争点になるような話ではありません。3分の1を確保すれば結果として憲法改正を阻止できるということです。通常、「○○をさせない」というネガティブな政策は、選挙では勝てない主張になっています。


●「3分の2」からのぞく与党側の立場


 それでは、「3分の2」ということの意味をもう一度おさらいしてみたいと思います。厳密にいえば、3分の2を自公で取ったわけではありません。しかし、改憲を主張している会派や無所属の人を含めると、3分の2は確保できている、つまり、その気になれば憲法改正の発議は可能になったということです。

 新聞社の人たちに聞くと、「衆参両方で3分の2を取れたことは過去になかった」ということなので、見出しに持ってくるだけの価値はあるということです。3分の2を衆参で取ることで「憲法改正ができる」となると、海外メディアは「それは憲法9条の話ですか」とすぐそちらの方へ結論が向くのですが、実はそうではありません。

 なぜなら、公明党にとっての憲法のポジションがあまり明確ではないからです。たしかに「加憲」とはいっていますが、環...
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