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なぜイギリスのEU離脱問題がこれほど混迷を深めたのか

2019年最大の問題「イギリスのEU離脱はどうなるのか」

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
「合意なき離脱」の可能性は限りなく高い――混迷を深めるイギリスのEU離脱問題を、曽根泰教氏は「2019年最大の問題の一つ」と言う。この問題はいったいどうなるのか。その行方と、なぜこれほどまでに混迷を深めたのか、その原因について解説する。
時間:12:13
収録日:2019/04/02
追加日:2019/04/10
カテゴリー:
≪全文≫

●米中関係よりもイギリスのEU離脱の方が大きな問題


 イギリスのブレグジット(BREXIT)についてのお話をします。どうしてイギリスは物を決めることができない国になってしまったのかというお話です。

 私はこれまでテンミニッツTVで5回ほどイギリスのブレグジットについて触れています。

 まず2015年のイギリス総選挙の時、デイヴィッド・キャメロン首相(当時)は「国民投票する」と言っているけれども、これは考えものだとお話ししました。それから2016年6月、EU 離脱に関する国民投票の結果、どういうことが起きるのかということで、この時には「EU 離脱によってイギリスの政党政治が崩壊する!?」ということをお話ししました。その次ですが、2017年6月にテリーザ・メイ首相が総選挙を行ったのですが、保守党は過半数を取れませんでした。この時は、EU の交渉は大変なことになるということで「メイ首相の誤算」ということをお話ししました。

 さらに2017年7月、「ネットと現実―グローバル化時代の国境問題とは?」ということで、あえて北アイルランドとアイルランドの国境の話をしました。この国境の話は当初からずっとしていることです。つまり「最大のネックは国境ですよ」ということをお話ししてきたわけです。そして、2018年11月は翌年を予測してということで、2019年の一番大きな問題としてイギリスのEU離脱についてお話ししたわけです。

 EU離脱というのはそんなに大きな問題なのかと思う方もいるでしょう。今日もある大臣の話を聞いたのですが、EU離脱が最大問題、つまり米中関係よりもイギリスのEU離脱の方が大きな問題だというのです。特に「合意なき離脱」になったとき、どうするかという緊急対応を考えなければいけない。今こういう状態だということです。そういう点では、日本にとっても影響が大きいのです。


●2度の「示唆的投票」はいずれも否決された


 イギリスは今、いろいろな模索をしています。イギリス議会は3月下旬、いわゆる「示唆的投票」ということで8案を下院にかけました。これは拘束力があるものではないのですが、そこで多数が取れたかというと、8案とも全て否決されました。

 この図は、多数つまり賛成が多い案の方から並べてあるのですが、それでも「EUとの合意には国民投票による承認が必要」...
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