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得意分野だったはずなのに政府よりも遅れている!?

岡田民主始動~政権奪取への課題~

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
情報・テキスト
岡田克也
2015年1月に代表選挙が行われ、岡田克也氏が新代表に就任した民主党。しかし、「民主党は、まず2000万票まで回復しなくてはならない」と曽根泰教氏は語る。そのためにはどうしたらよいのか。今回の民主党代表選挙から見える、民主党の現状と未来とは何か。
時間:16:05
収録日:2015/01/22
追加日:2015/02/02
カテゴリー:
≪全文≫

●今回の民主党代表選挙はこれまでより良かった


―― 今回、民主党の代表選では、経験が豊富で、副総理や外務大臣、党の代表などを歴任された岡田克也さんが改めて代表に選出されました。また、長妻昭さんが代表代行に、細野豪志さんが政調会長に、さらに蓮舫さんも代表代行に投入されました。先生は、このことをどのようにご覧になっていますか。

曽根 代表選を上手に使ってこなかった過去の民主党に比べて、今回はまだ少し良かったと思います。今まで、民主党の代表選は、前の代表がスキャンダルなどで突如辞め、すぐに行われていましたから、代表選で党の政策や方針が一致することはありませんでした。代表選をきっかけに党内が分裂することはあっても、世論の支持を増やしたことや、一致団結して次のステップに進んだ例はなかったのです。これまでは、代表選で体力を消耗しただけでした。

 今回も、日取りやスケジュールの設定はあまり上手ではありませんでしたが、少しは代表選の格好になりました。ですから、うまくやれば、これをきっかけに政策ラインの統一、党の団結、支持の回復もできるでしょう。ただし、岡田代表で次の選挙に勝てるか、民主党がもう一度政権を取ることができるかと言えば、今の段階ではそこまでは来ていません。


●野党の間に長期的方針は定めた方がいい


曽根 今の民主党は、考えようによっては人材がたくさんいますが、考えようによってはほとんどいません。これは見方によります。自民党も人材豊富だという人もいれば、相当少ないという人もいます。

 ポジティブに考えれば、人材がいなければ育てたらいいのです。岡田さんを変えることは難しいでしょう。今も議員などとの食事は割り勘で済ませるという「岡田割り勘伝説」がある人です。私も新聞記者から、「岡田さんは自分の分を6000円置いていきます」という話と、「8000円置いていきました」という2種類の話を聞いたことがありますが、両方とも正しいようです。そのくらい生真面目な人で、もう変わらないでしょう。かつて岡田さんは副総理の時代に、官邸や官房などで取っている新聞や雑誌の購読部数を減らすマイクロ行革を行い、微々たるお金を浮かして、何人もの新聞記者を敵に回しました。そのような経験をしたことで、時にはおおらかさや戦略が必要なことは、さすがに少しは分かってきただろうと思います。

 ただ、民主党が政権を経験したことはプラスです。けれども、先ほど申し上げたように、この間に代表選では対立が見られました。その原因は、もちろん小沢ファクターも影響していましたが、それだけではありません。そもそも民主党議員は、ものを決めることに慣れていません。決まった後、従うことにも慣れていません。しかも、議論してもまとまらないから、決定の先送りが多かったのです。

 私は、民主党には明日政権が回ってきてもいいように準備して欲しいと始終言っていますが、野党にいる間に、綱領レベルの長期的方針は本当に定めた方がいいと思います。その応用形として具体的な政策があるなら分かりやすいのですが、そういった長期的方針が今まではあまりなかったのです。


●民主党は勉強不足で政府より遅れている


曽根 岡田さんが言うように、ずっと右に寄っている自民党がいて、左には社民党がいます。真ん中ががら空きだから、そこをわれわれが占めるという考え方は正しいでしょう。ただ、それを何と呼ぶかが問題なのです。ここで何度もお話ししているように、それを「宏池会」と呼んだのでは民主党ではありません。

―― 本来、日本人の保守の6、7割は真ん中の人たちです。以前は、そこを自民党の宏池会や経世会が担っていたのですが、今は誰もいなくなってしまいました。ですが、おっしゃる通り、それを「宏池会」と呼ぶのは相当難しいです。違う話法で説得できるようにならない限り、民主党の再生はなかなか難しいように感じます。

曽根 その通りです。やはり民主党は、現実をよく見ていないと思います。なぜかと言うと、安倍政権は、集団的自衛権、靖国参拝、憲法改正に取り組んでいると皆思っていますが、現実の政策は、女性、少子化、地方、雇用から、最後は賃金まで来ています。

 賃金に関しては、労使を呼んで、政府が「賃上げしなさい」と言っています。これは「コーポラティズム」です。ヨーロッパでは、インフレ時代に労働組合と経営代表と政府が話し合い、所得を何とか引き下げました。これを所得政策時代の社会民主主義的コーポラティズムといいます。

 これまで海外の学生などが、日本にはコーポラティズムがあるはずだと探しに来ました。日本のコーポラティズムで博士論文を書こうと日本に来た学生を、私は何人も知っています。しかし、見つけることができず、帰っていきました。なぜかと言うと、個別企...
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