10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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え? 正倉院もツーバイフォーも技術的には一緒なの!?

森と都市の共生(3)伝統木造と現代の工法の共通点

腰原幹雄
東京大学生産技術研究所 教授
情報・テキスト
東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏が解説する「伝統木造ってなんだ?」。多様すぎてまとまりのない「木造」のイメージを、腰原氏が分かりやすく整理。見えてきたのは、伝統木造と現代の工法の意外な共通点だった。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中第3話)
時間:09:33
収録日:2015/11/19
追加日:2016/04/21
≪全文≫

●誰も定義できない「伝統木造」


 「木造建築」と言ったときに、日本には1400年以上の木造の歴史があります。法隆寺をスタートにするとよく言われているのですが、皆さんの頭の中に浮かぶ木造建築とは、同じようで違うのです。これが実は大問題なのです。皆、木造建築の話を会議でしていて、最後にふっと「話がかみ合わないよね」というときは、皆、頭の中で思い描いている木造像が違うのです。山小屋のようなものや、前回お見せした地方にあるようななんだか快適な別荘のようなもの、それから今度は、大量生産の戸建て住宅かなと思ったり。あるいは、体育館やドームのようなものがあったり、また、茶室のようなもの、そして、この応接室のような重厚な空間も木でできているわけです。でも、それらは皆、木でできているのですが、全然雰囲気が違うので話がかみ合わないのです。だから、そこをまず真面目に考えなければいけない。

 日本には古くからの伝統木造の歴史があります。この場合に思い浮かべるのは、法隆寺や東大寺大仏殿といった建物です。かやぶき屋根の農家型の民家。京町家、宿場町などの町家型の民家。こういうなんとなくガイドブックの世界のようなものを見て、伝統木造というと、皆さん「こんな感じかな」と思うのです。

 でも、伝統木造とはそもそも何なのか。今、建築基準法の中でも「伝統木造を守らなければいけない」というわけで、法律に乗せていかなければいけないのですが、実は誰も伝統木造を定義できないのです。皆さんの頭の中で思い描いているものが違う。古いものを伝統木造と言うかどうかなんですね。


●文化の香り、技術の洗練度が決め手


 ここに木造の住宅を四つ並べています。この辺は、先ほど言ったように町家型や農家型で、なんかもう「伝統木造です」ということになるんですけれど。では、これ。竪穴式住居。これも木造の住宅なんです。でも、これは3000年前のものです。これはきっと伝統木造とは言ってもらえないですよね。そこから少し時代がたって、高床式倉庫。これも多分駄目ですね。でも、正倉院と言うと、「おっ」という感じになるわけです。

 ですから、「古い」ということが伝統木造ではなく、「何か」があるわけです。その何というのは、実は技術なのです。この辺の竪穴式住居の頃は、穴を掘って丸太を刺して、それから横に丸太を流し、縄とか蔓で縛って造る程度です。高床式倉庫もちょっとずつ作業的なことをするのですが、「積む」という作業は実は原始的なわけです。なんだか文化の香りがしないと伝統木造ではないかな、ということです。町家型とか農家型になると、木と木を組み合わせる継手仕口というのが生まれて、宮大工の世界で、釘と金物を使わないでもぴたっと入ります。そうすると、なんだか胸を張れるわけですね。ということは、実はその文化や技術の洗練度というものが、そのものの建築の価値にもなってくるわけです。


●在来軸組工法も伝統木造も技術的には同じ


 ただ、ここで共通しているのは、木という材料を使っているので、線材、棒で造られているのです。柱や梁と言われているものです。そういう軸組構法が日本の文化です。ヨーロッパへ行くと石で造るので、壁がたくさんあり、壁式構造になるわけです。日本は線材で造る。

 ですが、その軸組構法が、ずっと時代を追って、江戸時代ぐらいから現代のこういう在来軸組工法と呼ばれるものになります。「在来」というのは「今の」という意味で、工法は時代とともに変化するので呼び方とし...
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