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憲法問題? 安保法制? 参院選の争点は一体何なのか

2016参院選で問われるもの

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
7月10日に行われる参議院選挙。先日、消費税増税の再延期を決めた安倍内閣だが、「前回の総選挙の公約を違えることの意味は大きいが、争点にはなっていない」と、政治学者で慶応義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は言う。では今回の参院選で問われるものは一体何なのか。憲法問題は争点なのか? 安保法制は? 選挙を目前に控えた今、曽根氏が参院選について語る。
時間:10:45
収録日:2016/06/30
追加日:2016/07/02
ジャンル:
≪全文≫

●「アベノミクスはうまくいっているのに増税できない」は矛盾


 参議院選挙で一体何が問われているのかという話をいたします。基本的に参議院選挙は、政権選択の選挙ではありません。衆議院で訴えた政権公約がどのぐらいまで進捗しているか、あるいは成果を挙げているかという「中間評価」の意味があるわけです。

 そういう点で、中間評価と言っていいのかどうかと首をひねるのが、今回の選挙です。実は前回の総選挙の公約では「消費税増税を延期します。延期はもう変えません」と言って、弾力条項を外しました。ところが、またここへきて「景気が下振れするから、国民に問いたい」と言って、今回の参院選挙に持ってきたわけです。

 考えてみれば、弾力条項を外しているのに、弾力条項を使って延期するというのは矛盾です。そういう意味でいうと、二度目の増税の影響を考えて、国民から「受ける」、あるいは増税をしたくない国民ももちろんいると思いますが、そうした国民の要望に沿って政治を行うことがいいことかどうか、という疑問があります。

 これらは置いておくとしても、安倍政権の言う「アベノミクスはうまくいっている。しかし、増税できない。増税できる経済条件ではない」というのは、説明的には矛盾しています。短期的に消費の下振れがあるのは確かですが、ここをどう整合的に説明するかということでしょう。


●安倍政権にも野党にも、納得できる成長戦略はない


 それからアベノミクスそのものについても、私が以前から指摘してきた「物価目標を政策目標にすることの誤り」が、最近では顕著に出てきています。物価目標をターゲットにするのは、因果が逆でしょう。景気が良くなれば物価が上がるわけで、物価を上がると景気が良くなるのではありません。つまり、消費税が2、3パーセント上がると消費は落ち込み、物価が2パーセント上がれば消費は下がります。だから、「国内需要が増える」「景気が良くなる」「所得が上がる」、それらの結果として、物価が上がるのです。物価を上げれば景気が良くなるというのでは、説明の順序が逆です。

 ここは、政策論争として正面から議論されていない点です。なぜかというと、野党がそれに代わる経済政策を打ち出しているのかどうかが疑問だからです。岡田克也代表(民進党)は「分配と成長」と言っていますが、「分配」ということを付け足しにしたとしても、それではどういう政策によって成長戦略を進めるのか。安倍政権における成長戦略も問題だけれども、野党が持つ成長戦略、例えば「社会保障を充実させれば成長します」という内容に、どこまで説得性があるのかという話があります。

 もう一つ、安倍政権は野党が言うようなことを先取りしています。「一億総活躍」ということで出してきたのは「女性、少子化、介護、地方、雇用、賃金」で、昔から野党が言ってきたようなことです。賃金については「同一労働同一賃金」とまで言っています。そうすると、連合は守りに入り、「同一労働同一賃金という一律基準では、日本の長期雇用の雇用関係は説明できません」「もう少し個別事情を考慮してください」というような話になってしまうわけです。歯切れのいいのは「同一労働同一賃金」の方です。


●「憲法改正」は今回の選挙の争点ではないのか

 
 もう一つ、今回の選挙では憲法は争点なのか。憲法が争点かどうかは、よく分かりません。それはなぜかというと、憲法の議論に関していくつか矛盾したことが、整理されないまま出ているからです。憲法改正の具体的な手続きは、国会における憲法審査会の議を経て、国会が発意をすることになっていますが、そこで議論されているのは、「緊急事態条項」程度です。

 私はもともと統治構造の方が憲法の課題だということを言い続けています。その一つの代表が参議院です。もし参院議員の各都道府県代表をそれぞれ一人ずつ確保するということを貫きたいとすれば、それは憲法改正に関わります。

 今回、それが急遽、参議院選の自民党公約の中に入りました。ただ、それは憲法審査会でずっと長いこと議論してきた話ではありません。今回の参議院向けということになります。安部首相がこれをどう説明しているかというと、「具体的な憲法改正の項目は、これからの憲法審査会に委ねる。だから、まだ中身は決まっていません。与野党が協議して決めましょう」と言っています。

 しかしながら自民党には、憲法改正の草案があります。これは、一体何なのか。つまり、それは憲法審査会にかけるべき議論の対象なのか、あるいは選挙に勝ったら、この憲法草案が支持されたということにして、今後進めるのかという点が分からないわけです。

 今まで、安保法制にせよ集団的自衛権にせよ、政権公約の一番最後に非常に小さい字で書かれたことが、具体的に立法され...
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