●ITの進展で全ての枠組みが変わる時代の金融
AIやIoT、クラウドコンピューティングなど、さまざまな新しい情報技術が次々に出現し、この変化で影響を受けないところはないといわれています。
医療はビッグデータからいろいろな資料を使えるようになるでしょうし、e-コマース(電子商取引)は最も身近に非常な勢いで変化しています。労働市場もクラウドソーシングで大きく変わる可能性を持っていますし、教育からエンターテインメントまで、いろいろなものが変わりつつあります。
その中で、金融の変化も注目されています。IT技術が進むことにより、テクノロジーとファイナンス(金融)が合体する中で「フィンテック」というものが出てきたからです。
確かにそういうことはいろいろと起こっています。例えば、日本に観光に来る中国人の大半が「アリペイ」を使い始めています。最近の中国人観光客に聞くと、「両替もキャッシュも要らない。アリペイさえあれば何でもできる」のだそうです。私は先日インドへ行きましたが、インドもやはりそういう流れになっています。今の政権が高額紙幣の廃止というダイナミックな政策を行ったため、多くの人がアリペイに似たシステムを用いていて、携帯電話やスマートフォンで払うような仕組みになっています。
こういう技術がさらに進化してくると、ブロックチェーン(一度記録されると改ざんできない記録技術のこと)を使うようになり、金融システムとは別のところで、中央銀行の指示とも独立して、いろいろな決済や送金ができるようになってきます。金融はもともと情報化が非常に進んでいる業界ですから、大きく変わることは間違いないのですが、どちらの方向に変わっていくのかが非常に読みにくい状況にあります。今日はそれを、やや異なる視点からお話ししたいと思います。
●フィンテックを表す二つのコメント
フィンテックに関連して、よくいろいろな本などに引用されるコメントが二つあります。
一つは、1990年代中頃にビル・ゲイツ氏が言ったことで、「たぶん銀行は要らなくなるだろう。残るのは銀行機能だ」というものです。この言葉を推察すると、「銀行が行っている機能をITが代替するかもしれない。その時、今の銀行組織は必要なくなるかもしれない」というような意味で、今もよく引用されています。
もう一つは、JPモルガン・チェースのジェイミ...