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5Gが可能にする技術「タクタイル・インターネット」とは

5Gとローカル5G(6)通信インフラの新技術

中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
概要・テキスト
「タクタイル・インターネット」という5Gが可能にする技術がある。これは神経伝達に近い低遅延通信によって「ヒトの感覚」を伝えるというもので、この技術によってロボット開発への期待が膨らんでいる。また現在、商用化のために日本全国で5Gの総合実証実験が行われているが、通信タイプごとの混線を防ぐため、アプリやサービスのトラッフィクを分離する通信インフラ技術も求められる。そこで考えられているのが「ネットワークスライシング」だ。これは非常に重要な考え方ということで解説を進めていく。(全9話中第6話)
≪全文≫

●タクタイル・インターネットの可能性


 ここからは紹介のみになりますが、「タクタイル・インターネット」というものもあります。これは、神経伝達に近い低遅延通信によって、人の感覚を伝える通信です。こういったコンセプトは2014年に出されており、これはITU-T(国際電気通信連合の部門の一つで、通信分野の標準策定を担当する「電気通信標準化部門」)という標準化組織から出されたものです。

 どのようなコンセプトなのでしょうか。人間が外部刺激に反応する時間とは、場合によって異なります。突然予期しない刺激に対する反応時間は、約1秒といわれています。つまり、何も予測をしていないとき、例えばボールが飛んできたときに、これを避けるためには、人間の反応時間は1秒もかかってしまうということですので、たいていの場合、避けられないで当たってしまうわけです。

 それに対して、聴覚の反応時間は100ミリセカンドで、典型的な視覚の反応時間は10ミリセカンドといわれています。さらに、人間が外部刺激に1ミリセカンドで反応できる場合もあります。これは、予期、予測が可能な場合の反応時間です。皆さんのなかには小学生の頃、バスケットボールを指の上に乗せてバランスを取る遊びをされたことがある方もいるかと思います。これは視覚によって、ボールがどちらに動くかということを、人間の脳が予測してできています。これが、約1ミリセカンドの反応時間で制御が可能ということを表わしている事例です。

 ですから、こういったバスケットボールの制御を実際に通信で実現しようとする人はいないかと思いますが、ロボット、例えば工場の制御で1ミリセカンドの制御が可能ということは、人間が刺激に対して反応するような制御性能を実現できるということになります。そのため、人手の置き換えが望まれている分野などでは、こうした技術の開発に期待が持たれているということで、タクタイル・インターネットが提案されているのです。


●5Gの総合的な実証実験は、全国で行われている


 ここまで、われわれの活動を中心にご紹介しましたが、5Gの総合実証実験は日本全国各地で行われています。ここに表示してある地図は、2018年度に実施された実証実験を紹介するも...
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