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世界的に異例な「プルラリティ」という日本の選挙制度

政治学講座~選挙をどう見るべきか(4)日本の選挙制度

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
日本の選挙制度には、世界的に見て異例ともいえる特徴がある。「プルラリティ」(相対多数)と呼ばれる制度を使っているが、1着を決める選挙なら、世界的に一般的なのだが、日本では、2着も3着も時には20着まで決めるということに問題点があるという。では日本の選挙制度は、どのような方向へと改革していくべきなのか。(全9話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:47
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/03
カテゴリー:
≪全文≫

●「プルラリティ」を複数区で使うのは世界的にも異例な選挙制度


曽根 今回のシリーズでは「権力の基盤は過半数だ」と言い続けているのですが、議会では過半数の議席が必要である一方、小選挙区で過半数の得票を取らないと当選できませんという選挙制度ではありません。日本の選挙制度の特徴として、「プルラリティ(plurality)」、つまり相対多数というものがあります。相対多数とは何かというと、1着を決める選挙ということです。得票数が過半数の51パーセント以上ではなくてもよく、仮に40パーセントでも、あるいは35パーセントでも1着ならいいという制度で、これが日本の選挙制度の特徴なのです。そこまでは、イギリス、アメリカなどと同じです。

 ところが、もっと厄介なことに、議席数が5であろうと、7であろうと、20であろうと、投票する方は1票しか投票できません。本来は1着を決める制度なのに、相対的に票の上のほうから当選させるということで、2着も3着もと議席分まで当選させてしまう。これが世界的には例外なのです。

―― なるほど。それは例外なのですね。

曽根 外国の研究者と共同論文を書いた時に、私はこのことについて「プルラリティ(・ルール)」という名前を付けました。そうしたら、「あり得ない。そんなことはない」という反応でした。「3人区だったら3票持っているのが普通だろう。しかし、1票しかない。それはあり得ない」という反応です。私が「プルラリティ・ルール」という名前を使ったら、こっぴどく反論が来て、「プルラリティ・システムぐらいなら許してあげる」と言われました。これも、外国と比較して初めて気付くわけです。


●着順を決めても代表していることにはならない


曽根 最近の若い学者が「SNTV(Single Non-Transferable Vote)」(単記非移譲型)というものを一般的に使うようになった。そのことを、われわれが論文を書いて30年ほどがたっています。最初は、外国からのそうした指摘があって初めて起こったことです。

―― SNTVというのはどういう内容ですか。

曽根 世界的には1人区で1票という制度が普通です。ただ、複数区で、例えば1人2票とか3票という制限的な制度は、実はスペインの上院にありました。ところが、日本は一貫して1人1票で、非移譲型の投票制度なのです。議席数が10でも20でも、これは変わりません。だから、例えば市会議員選挙には20議席とか...
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