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松下電器の製品には「人間の心」が入っていた

自信について(10)人助けが商売の儲けにつながる

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
現在、ビジネスで大きな儲けを出した創業者たちが、何十億円もかけて宇宙旅行に行っている。これは明治の成功者とは大違いだ。なにしろ明治の成功者たちは、美術事業など日本の役に立つお金の使い方をしていた。財産を使うのも、教養なのである。また、松下幸之助などは、事業においても「役に立つこと」「人助け」を軸に置いていた。戦後の松下電器の歴史は、「女性解放」の歴史である。そして、松下電器の製品が売れたのは「人間の心」が入っていたからでもあった。(全12話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:30
収録日:2022/01/25
追加日:2022/05/27
カテゴリー:
≪全文≫

●財産を使うのも「教養」である


執行 ただ、先ほどから私が話しているのは、現代人が「量」に侵されていることをわからなければダメということです。あれは20世紀を通った人がかかった病気です。「量」も重要ですが、いいものは限度があります。重要なのは限度をわきまえた売り方です。それがないのが今で、今の成功者はGAFAまで行ってしまうのです。

 それは魂的には何の価値もない。そう言っては、失礼ですが。だって、GAFA(のアマゾン創業者ジェフ・ベゾス)なんて、あれだけ金儲けして、宇宙旅行(ビジネス)なんかして。私から見れば、「何なの、あんた?」という感じです。何十億円もかかる。そんなくだらない、子どもの遊園地のお遊びみたいなものに、例えば40億円とか50億円投じる。あの神経を問いたいです。

 別にひがんでいるのではなく、私が言いたいのは明治の成功者との違いです。明治の成功者は、自分の財産ができたとしても、例えば美術事業とか国家の歴史に貢献するものに投じていました。でも自分の宇宙旅行なんて、要するに、金の使い道がないということです。いくら稼いでも金の使い道のない人が今、金を稼いでいるのです。そのくらい社会の根底が間違っているということです。

 だから松下幸之助や出光佐三までが限度なのです。稼いだ人イコール魂や心も、ある程度揃っている。人間としても立派になって、立派になった人がお金持ちになったから、それなりの貢献が社会にできる。あの人たちまではそうです。現に、やはり成功者は立派な人しかいない。立派な人しか成功できない社会だった。逆に言えば、健全だったのです。

田村 そうですね。

執行 今みたいに「量」で侵されてしまった社会は、経営者にとっても、けっこう大変です。私も経営者ですが、どのあたりまでの発展だと“量のお化け”に食われるのか、そのへんを見極めなければならない。私はもう38年経営していますが、「これ以上行ったら社会に食われてしまう。でもこれ以下になると、いい研究をしていく資金が稼げない」といったせめぎ合いです。ずっとこれで38年やってきたのです。

 でも私は、それが「教養」だと思います。この読書を見ればわかるように、私はけっこう教養がありますから。やはり読書は教養の根源であり、過去の共感する人の知恵です。知恵をもらっているので、ずっとその問答をすることができるのです。

田...
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