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日本ではできないロンドンのコンジェスチョン・チャージ

グローバルとローカルがつながっていない日本

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
 
財界の上層部の方々でも、個人的に親の介護や娘の仕事環境などでいろいろと困っているのに、経団連はGDPの話しかしない。それはなぜか。小宮山宏氏が日本の基本的問題に鋭く迫る。
時間:05:48
収録日:2014/12/18
追加日:2015/01/27
≪全文≫

●なぜ経団連はGDPの話しかしないのか


小宮山 最近、やはり個人が非常に重要だと思っているのですが、それに関して不思議なことが一つあります。例えば、経団連の上層部の方々など経済界の方とも付き合いがあるのですが、彼らと食事すると、彼らが個人的なことでいろいろと困っているのが分かります。例えば、親の介護です。皆さんはたいがい東京に住んでいますが、東京にはケアハウスが少ないのです。

―― 少ないですね。

小宮山 私の場合、たまたま姉が所沢市のさらに先の方に住んでいて、そこにはたくさんありますから、親の介護の際は、姉の家の近くのケアハウスにお世話になりました。しかし、経団連の方々は自分の親の問題で苦しんでいます。それから、お嬢さんがおられる方もけっこう多いのです。先ほど「女性の活躍ワーキングループ」についてお話ししましたが、まさに女性が活躍しにくい社会の状況があって、お嬢さんが困っているのです。

―― 働きながら子育てできないですから。

小宮山 次に、その子育てです。私も都心部に住んでいましたから、遊び場が少なく、危険な環境でした。子どもを育てるのは本当に大変だったという思いが強いです。これらは全部、社会の問題ではないですか。それらを個人が経験しているわけです。

 ところが、経団連はGDPの話しかしません。これは、民主主義を自分たちでつくってこなかった国の悲しさではないかと私は考えています。ルールや制度、法律は、本来、僕らが決めたものです。しかも、経団連はそれらを決めることに対して、ものすごく強い影響力があります。自分たちが困っているのに、なぜ彼らは本気で働きかけないのでしょうか。なぜGDPの話ばかりしているのでしょうか。これが、個人と日本という国をどのように元気にするかを考える際の基本的問題だと思います。


●日本はグローバルとローカルがつながっていない


小宮山 このことを「グローカル」と言うのです。

―― グローカル。

小宮山 グローカルという言葉があります。グローバルとローカルを組み合わせた言葉です。「グローバルは重要だけれども、ローカルも重要だ」などとよく言いますが、日本はグローバルとローカルがつながっていないのです。例えば、国と個人です。

――つながっていません。

小宮山 それが、日本の基本的問題です。では、他の国も皆同じかというと、同じではありません。民主主義の先進国たるイギリスやフランスはつながっているのです。

 例えば、最近、石原慎太郎さんが引退されましたが、彼が東京都知事になった時、黒いディーゼル車のすすの入ったペットボトルを振り回して、「これがまき散らされている」と言ったけれども、実はディーゼル車排ガス規制を行ったくらいで、他は何もしませんでした。しかし、イギリスは、ずっと前からCongestion Charge(コンジェスチョン・チャージ)を取っています。ロンドンの都心部に入る時は、一番小さい車で1回9ポンド(1000円以上)、大きい車だと20ポンドも取られます。これは日本ではおそらくできないと思います。


●自分たちで始めると考える人を増やすことが重要


―― それは役人が決めるもの、御上が決めるものだと思っていますから。

小宮山 思っています。

―― 生活のルールは自分たちが決めるとはなっていません。

小宮山 小水力発電も、水利権の問題があるわけです。本当は自分たちで決めればよい話なのに、県の認可が必要なのです。河川から水を引いても戻すのだから、水を消費するわけではありません。ただ電気を取るだけです。本当は、水利権と呼ぶ必要があるかどうかというくらいの問題です。だけど、国や企業や農協などにいろいろ言われるかもしれないと考えて、県は国に聞くわけです。しかし、すでに認可は国から県に下りているのですから、県は自分で判断すればよいのです。

―― 自ら判断するのを極度に嫌がるのは、自分たちが決めたら、自分たちで責任を取らなくてはならないからでしょう。だから、上から押し倒されたというシチュエーションをつくりたいわけです。全ての構造がそうなっているから、自分で決めればよいものが相当決められていません。

小宮山 僕らが今、本当にやらなくてはならないことは、組織論だと地方分権になります。それに加えて、とにかく自分たちでスタートすると考える人を増やすことが重要です。

―― まさにその通りです。

小宮山 それをどうやって実現するか。来年も頑張りましょう。

―― ありがとうございます。
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