10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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TPA法案の通過がTPP交渉円滑化の上で極めて重要

TPP交渉~TPA法案が妥結のポイント

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
TPPは現在、バラク・オバマ大統領の任期中に合意に達するかどうかが大きな注目点となっている。アメリカは来年に大統領選挙を控えているため、今年中に交渉が進まないと、オバマ政権下でのTPP合意は難しいといわれているからだ。経済学者・伊藤元重氏は、TPPがまとまるための最大のポイントはTPA法案にあると言う。TPA法案とは一体何なのか。またTPPとどう関連してくるのか。TPP交渉の現状と今後の展望について伊藤氏が語る。
時間:16:21
収録日:2015/04/17
追加日:2015/04/23
TPPは現在、バラク・オバマ大統領の任期中に合意に達するかどうかが大きな注目点となっている。アメリカは来年に大統領選挙を控えているため、今年中に交渉が進まないと、オバマ政権下でのTPP合意は難しいといわれているからだ。経済学者・伊藤元重氏は、TPPがまとまるための最大のポイントはTPA法案にあると言う。TPA法案とは一体何なのか。またTPPとどう関連してくるのか。TPP交渉の現状と今後の展望について伊藤氏が語る。
時間:16:21
収録日:2015/04/17
追加日:2015/04/23
≪全文≫

●オバマ政権下でTPPは合意できるのか


 環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPの交渉が、非常に微妙な時期に入ってきました。この映像が放映される頃には、新たな展開があるかもしれませんので、非常に不確定な中ではありますが、今どういうことが起こっているのか、あるいは、今後の展望はどうなるのかということも含めて、TPPについて話をしたいと思います。

 まず現状ですが、バラク・オバマ大統領の任期中にTPPが合意に達するかどうかということが大きな注目点です。アメリカは、来年(2016年)になりますと大統領選挙絡みの政治モードになるので、いろいろなことが動きにくくなります。したがって、タイムリミットとして2015年のうちに交渉が相当に進んでいかないと、オバマ政権下でのTPPの合意は難しいだろうといわれています。そういうタイムリミットを逆算していくと、これから1~2カ月の間に目に見えるような進展があるかどうかが、大きな注目点になるわけです。

 もちろんオバマ大統領にとってみれば、TPPをまとめ上げることで、彼の大統領任期中の大きなポイントにしたいと考えている向きがあります。アメリカの政治では、「レガシー」という言葉をよく使います。日本語に翻訳すると、「遺産」という意味になるのかもしれませんが、後に歴史を振り返ったとき、大統領が何を成し遂げたか、それがレガシーなのです。オバマ大統領にとって、8年間の任期中に何をレガシーとして残したかということが将来問われることになります。現職の大統領は、そこを非常に意識するわけです。その過程で今、キューバとの国交回復、あるいはイランをめぐる核交渉など、いろいろなことが進んでいるわけですが、TPPもその一つになってきているのです。


●TPP合意の鍵を握るTPA法案


 TPPがまとまるための最大のポイントは、今やアメリカ国内の政治と深く関わっています。それが、TPA(Trade Promotion Authority、貿易促進権限)といわれている法案です。で、TPPとTPAは似ているように見えるのですが、全く違います。

 TPA法案とは、簡単に言えば、アメリカの大統領が外国と貿易交渉をしやすくするため、いわば議会からのお墨付きをもらう法案のことです。アメリカの制度では、関税の決定や通商政策の権限は議会にあるのです。したがって、大統領がいくら海外と交渉しても、議会で最終的な審議にかける段階で、議会がある意味で非常に恣意的にいろいろなものを修正してしまう可能性があるわけです。これではなかなか諸外国もアメリカと貿易交渉をすることは難しいのです。そこで、議会の方から大統領に一括の権限を提供する、つまり、大統領が進めてきた貿易交渉の成果について、最終的にイエスかノーかという権限はもちろん議会に残すけれども、細かい修正は一切行わないという、いわばコミットメントをすることが、TPA法案のポイントとなるわけです。

 これまでもこういう形で、期限は区切るけれども大統領に一括の権限を与える法案を通すことによって、アメリカは諸外国との間で貿易交渉を進めることがよくありました。今のオバマ大統領は、このTAP法案に関わる一括の権限を議会からもらっていないわけですから、まずこれを通すことがTPPの交渉を円滑に進めていく上で重要なのです。極論を言えば、TPA法案が通るという見通しがない中で、日本をはじめとしたアジア太平洋の国々がアメリカとTPPの合意に至ることは考えにくいのです。
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