10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

政治家の職業倫理は制度問題とも関係する

政治とカネの問題

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
最近、補助金を受けた企業からの献金が問題になっている。政治とカネの問題は大変難しく、非常に研究しにくい分野だと政治学者・曽根泰教氏は言う。この問題は一体どこから話すべきなのか。また、寄附や情報開示についてはどうすべきなのか。課題が山積みだが、さまざまな切り口から、政治とカネの問題について、曽根氏とともに考えていきたい。
時間:14:37
収録日:2015/03/10
追加日:2015/07/20
≪全文≫

●政治とカネの問題は研究しにくい分野


 「政治とカネ」のお話をします。

 最近、補助金を受けた企業から献金を受け取ったことが問題になっています。この問題は、大変難しいことがあり、後ほど詳しく申し上げますけれども、もう何年か前に相談を受けたことがあるのです。ある時、トヨタのどこかの地方の工場が、環境問題か何かで補助金を受けていました。まさかあのトヨタが補助金をもらっているとは思わなかったということで、トヨタから献金を受けているけれども返した方がいいのかという相談を受けたのです。

 私も、トヨタがまさか補助金をもらっていると思わなかったので、なかなか難しい相談でした。ただ、政治とお金の問題は、あまり話したくない分野なのです。なぜ話したくないのかといいますと、非常に研究がしにくいからです。情報公開がされているとは言っても、政治資金規正法で報告されているのは、昔だと、実態のお金の10分の1か20分の1ほどではないかといわれていたわけです。ですから、それを基に研究したとしても、現実的に実態はその10倍も20倍もあるとすると、研究にならないわけです。よって、こんな分野はできるだけ調べたくない、研究したくないと思っていたことが一つあります。


●企業・団体献金の禁止と公的助成は別の話


 それから、よく出てくるのは、政治を賄うお金は一体どういう方向でいくべきなのか、という話です。寄附なのか、公的助成なのか、方向はどちらなのか。例えば、日本は寄附がないとNPOが発達しない、という話をよく耳にします。では、寄附がないことを前提に、もしNPOを推進するとしたら、どうしたらいいか。政党なり政治家なり、つまり、政治機関はお金を稼ぐ機関ではなく、まさしく使う機関なのです。そうすると、それは、寄附に頼らざるを得ません。つまり、大学、研究機関、あるいは、文化的な財団、ボランティア組織などと同じように寄附に頼るということです。そして、それは、寄附をもっと増やせという活動の中に位置付けるのかどうかが問われるところです。

 実は、日本では個人の寄附も非常に少ないのです。それから、企業・団体献金は、禁止と言った方がマスコミ的なウケがいいものですから、禁止すべしといっています。ある時、企業・団体献金の全面禁止を声高に言う人がいたので、その本心は何なのか、裏を探ってみましたが、要するに、公的助成を増やせ、ということでした。1人当たり250円を、400円、あるいは、500円にするという考えを持っていることがうっすらと分かりましたので、それは話が違うのではないか、と感じました。「企業・団体献金の禁止」と格好いいことを言うことと「公的助成を増やせ」と言うことは、直接的にはあまり結びつかないと思います。


●政治家の職業倫理は制度問題とも関係する


 それから、もう一つ考えなければいけないのは、政治とカネの問題を話すときに、一体どこからすべきか、ということです。つまり、政治倫理一般の問題も、個人の倫理問題というより職業倫理の問題として考えるべきだと思うのです。ですから、ビジネススクールのビジネスをする人、ロースクールでロイヤーになる人、あるいは、医者の医者としての職業倫理と同じように、政治家も、政治家としてのプロフェッショナルエシックス(職業倫理)があっていいわけです。

 では、その職業倫理とは何なのか。例えば、民主主義という制度を踏み台にしたり、ないがしろにして政治活動を行うのは、倫理的に糾弾されるべきなのですね。ところが、政治的な倫理が問われるとき、お金に汚い、女性に汚い、酒に溺れるという、個人的な倫理で否定される、あるいは、批判されることが多いわけです。ですから、倫理問題として考えるときにはどうしたらいいのかというのは、実は、制度の仕組みの問題とも関係しているのです。


●政治家に寄附したお金は、公的な性格を持つ


 過去をずっと振り返ってみると、後ほどこの資料をご覧になっていただければいいのですが、政治資金規正に関しては、多くの場合、寄附が禁止で、先ほど言いましたように、補助金を受けている会社などからの寄附は禁止です。その他に、外国人や外国法人からの寄附も禁止なのです。

 ただ、これも、先ほど言いました補助金を受けた会社と同じように、外国人籍かどうかよく分かりません。それこそ、焼肉屋のおばさんから寄附を5万円もらったということが問題になるのは、政治資金規正法が禁止している問題なのかどうかということと、多分、趣旨が違います。法で禁止しているのは、おそらく利益相反の問題だろうと思うのです。

 そういう意味でいうと、実は、多くの人は気にしていない、あるいは、気が付いていないのですが、赤字会社からの寄附も禁止されているのです。これも、ここで何度も申...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。