10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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佐久間象山いわく「東洋道徳、西洋芸」

東洋思想を考える(1)東洋と西洋の知の融合を21世紀の指針に

田口佳史
老荘思想研究者
情報・テキスト
佐久間象山
東洋思想は、この10年で大きな転換点を迎えた。「まるで最後尾から時代のトップランナーに立ったようだ」と、老荘思想研究者の田口佳史氏は振り返る。その実感を企業経営論に活かすための『タオ・マネジメント』(2006年)がアメリカで注目されたのは、リーマンショック(2008年)の後だという。世界は東洋思想に何を求めているのか、そして日本の立つべき道は?(前編)
時間:17:13
収録日:2014/10/29
追加日:2015/07/06
佐久間象山
東洋思想は、この10年で大きな転換点を迎えた。「まるで最後尾から時代のトップランナーに立ったようだ」と、老荘思想研究者の田口佳史氏は振り返る。その実感を企業経営論に活かすための『タオ・マネジメント』(2006年)がアメリカで注目されたのは、リーマンショック(2008年)の後だという。世界は東洋思想に何を求めているのか、そして日本の立つべき道は?(前編)
時間:17:13
収録日:2014/10/29
追加日:2015/07/06
≪全文≫

●東洋思想が最後尾から先頭へと逆転した10年間


 東洋思想の意味合いがここへ来て非常に変わりつつあります。特にこの10年ほどで、どんどん変わってきたように思います。

 比喩的に言えば、思想家が、皆でマラソンを走っていたとします。先端的なものをやっている方がずっと先を走っていく中、古臭い東洋思想をやっている私はのろのろと一番最後についていました。ところがこの10年で、「ひょっとして、ゴールはそちらではなく、反対側だよ」と言われたような気がして、その瞬間、「もしかすると自分が一番先を走っているのか」と感じたことがありました。

 そう感じたのは、ここ10年間に西洋からの問い合わせが非常に多くなってきたからです。西洋には私の親しい学者が何人かいます。彼らの紹介や弟子だという人から、次々にメールが来るのですが、その内容は判で押したように同じです。

「これについて、東洋思想はどう考えますか?」
「東洋思想で考えると、どういう答えが出ますか?」
「東洋思想に、こういうものへの解決策はありますか?」
「これほど矛盾に満ちた状態を、東洋思想はどう扱うのですか?」

 そういうことを、どんどん聞いてきます。


●21世紀の指針は、東洋と西洋の知の融合にあるのではないか


 私の親友である西洋の学者たちから言わせると、それはひとえに西洋近代思想がある役割を終えて、今ちょっとした行き詰まりを迎えているからだということです。西洋近代思想をこのまま推し進めていったところで、目を見張るような成果が出てくるかどうか、ほとんどの西洋人が疑問を感じ始めているというのです。

 そして、よく考えてみたところ、地球にはもう半球があることに気がついたのです。東洋という半球は一体どういう考えをするのだろうかと、皆知りたくなっているのです。自分の周りでも、東洋、あるいは、東洋思想に対する関心は、今や非常に強くなっていると、友人たちは言います。

 そういう意味で、21世紀の指針は、東洋と西洋の知が融合されることにあるのではないか。東洋思想のいいところと西洋思想のいいところをそれぞれが提供し合い、融合して、第三の新しい指針をつくるべき時に来ているのではないかと、私は日々痛感することが多くなってきました。


●佐久間象山の「東洋道徳、西洋芸」を現代の企業に生かす


 幕末の碩学の一人に佐久間象山という人がいます。彼は当時すでにこのことを見通していて、「東洋道徳、西洋芸」と言いました。

 東洋思想は、やはり根幹的な原理原則で、道徳という意味では長けていますが、欠点もまた多いのです。その欠点を補って余りあるのが「西洋の芸」だというのです。「芸」とは「アルス(アートの語源)」、すなわち、技術です。西洋の技術は非常に優れています。それは、物事を普遍的にする力であり、今時の言葉では「モジュール化」する能力に長けているということです。

 したがって、東洋からは原理原則を提供し、普遍的に人類がこぞって理解できるような広々としたものにしていくのは西洋に任せた方がいい。そうやって西洋と東洋が融合し、新しい人類の指針を出していく時ではないかということです。

 こういうこと自体は言われ出して久しいのですが、人類の指針と言われるとやや荷が重い。そこで、私はこれを何とか身近なところで、企業や企業経営論として考えてみてはどうかと思いました。つまり企業経営論として、企業経営の原理原則を東洋から出し、...
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