編集長が語る!講義の見どころ
気候変動サミットの機会に、温暖化の最新科学を学ぶ【テンミニッツTV】
2021/04/23
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
4月22日、23日の日程で気候変動に関するオンライン首脳会談(気候変動サミット)が開催されています。
日本は本来、環境技術に関して先進国であるはずでしたが、近年ではCOP(気候変動枠組み条約締約国会議)で「化石賞」という不名誉な賞を受賞する羽目に陥っています。地球温暖化問題についての先進各国の危機感に比べて、日本の発信や感覚に「緩み」があることは否定できない事実でしょう。
やはり、この機会に「温暖化」「気候変動」の問題について、きちんとした科学的な背景知識を持っておくことが必要不可欠ではないでしょうか。
前回(火曜日配信)のメールで、「これから特集を機動的に配信します」と紹介させていただきました。本日より、気候変動サミットの機会に知っておくべき科学知識を、わかりやすくご解説いただいている講義をまとめた特集を配信させていただいております。ぜひご覧くださいませ。
◆<最新特集>「気候サミット」!知っておくべき科学知識
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=111&referer=push__feat1
本日のメールでは、この特集のなかから、気候変動科学分野の第一人者でいらっしゃる中村尚先生(東京大学先端科学技術研究センター教授)の講義を紹介いたします。図表やグラフでご解説いただけるので、「気候変動問題」の現在地がよくわかる講義です。
◆中村尚:異常気象と気候変動・地球温暖化(全7話)
(1)異常気象の背景
近年、なぜ異常気象の連鎖が起こっているのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2673&referer=push_mm_rcm1
まず中村先生は、気候変動の世界的な傾向を教えてくださいます。よく言われるように、世界では、100年で大体0.7度の温暖化の傾向が見られます。もちろん、個々の年にばらつきはあるものの、移動平均値で見た長期的な変動分析では温暖化傾向は明らかです。
さらに言えば、世界の変化と比べて、日本域における気温の変化の方が圧倒的に大きく、100年で1.1度の上昇をしているといいます。これはなぜなのでしょうか?(その答えは、本講義の第6話でご指摘いただいています)。
そのような状況分析のうえで、中村先生は温室効果の考え方についても、わかりやすくご解説くださいます。もし仮に大気による温室効果がなければ、地球全体の平均気温は理論的にマイナス18度まで下がってしまうといいます。温室効果自体は、われわれの生活、あるいはこの自然を維持するために、なくてはならないものなのです。しかし、その絶妙なバランスを、人間が崩していることが大きな問題であることは、皆さんもご承知のとおりです。
さらに中村先生は、「数値気候モデル」による分析もお示しくださいます。数値気候モデルとは、スーパーコンピューターで物理法則等を用いて構築された、仮想地球のシステムのこと。大気、海洋、陸域におけるプロセスがすべて含まれており、さらに、太陽活動の変動、過去の火山噴火、エアロゾルの放出、温室効果気体の放出なども、すべてきちんとコンピューターの中に表現されます。
温暖化については、「嘘だ」とする意見も含めて、さまざまな説が出されることがありますが、この数値気候モデルで分析すれば、ここ30年ないし40年の急激な気温の上昇がほぼ、温室効果ガスの増加に伴う温室効果の強化に対する気候システムの応答であると考えることができるのだといいます。
しかも、温暖化は、対策をしたからといって、すぐに止めることはできません。温室効果気体がこれから増加しなくても、海洋を中心としてすでにシステムに蓄えられた熱が出てくるためです。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がさまざまな評価報告書を出していますが、温室効果気体の増加がいちばん抑制されたとしても、21世紀終わりには気温が1.5度の上昇をしてしまうと考えられ、もし温室効果気体の増加が抑制されなければ、さらに気温の上昇幅が大きくなります。加えて言えば、とりわけ冬の北極域や、あるいは北半球の高緯度域、特にその陸上部分で非常に大きな気温の上昇が見込まれています。気温が1度上がることの甚大なインパクトは、皆さまもよくご存知のことでしょう。
中村先生は続けて、以下のような問題もご解説くださいます。
●温室効果ガスに加えて、不確実性をもたらす「エアロゾル」とは何か。
●温暖化を加速・増幅させる「フィードバック」とは何か。
●温暖化で極端な天候や強力な台風がどのように増加するか。
●温暖化には「加速期」と「減速期」があるが、それを決定する要因は何か。また「減速期」を引き起こす、決して喜べないメカニズムとは……。
正しく知ることは、とても重要なことです。思わず誰かに伝えたくなってしまう「知」が満載の講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆<最新特集>「気候サミット」!知っておくべき科学知識
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=111&referer=push__feat1
◆中村尚:異常気象と気候変動・地球温暖化(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2673&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「夜間頻尿」についての講義からの問題です。ではレッツビギン。
イグノーベル賞を受賞した、おしっこに関する研究がありました。
(中略)例えば象や牛、馬、犬など、いろいろな動物のおしっこの時間を計ってみると、
驚くべきことにその時間はだいたい( )秒だということが分かってきました。
さて、( )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2539&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、本日より川上浩司先生(京都先端科学大学教授)のシリーズ講義「不便益システムデザインの魅力と可能性」が始まりました。
◆川上浩司:不便益システムデザインの魅力と可能性
(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3968&referer=push_mm_edt
こちらは、「不便益」という考え方について、身近な事例をもとに分かりやすく解説いただいております。
「不便益」と聞いて、一瞬「?」と思われた方も少なくないのではないでしょうか。
不便なのに益があるということですが、それでも、「それって何? どういうこと?」と思われた方も少なくないのではないでしょうか。
その答えにたどり着くためにも、ぜひシリーズ(全7話、毎週金曜日配信予定)を通してご視聴いただければ幸いでございます。きっと「不便益」の魅力、可能性を実感いただけると思います。
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