浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深掘りする今シリーズ。まずは勝川春朗から俵屋宗理、そして北斎へと名を変えながら世に出るまでの紆余曲折を解説する。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
葛飾北斎と応為~その生涯と作品
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
2.『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
2025年12月6日配信予定
3.引っ越し93回…自炊も片付けもせず、絵に人生を捧げた親娘
2025年12月12日配信予定
4.親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
2025年12月13日配信予定
時間:17分06秒
収録日:2025年10月29日
追加日:2025年12月5日
収録日:2025年10月29日
追加日:2025年12月5日
≪全文≫
●北斎なくして日本の芸術は語れない
―― 皆さま、こんにちは。
堀口 こんにちは。
―― 今回は堀口茉純先生に「葛飾北斎と応為」というテーマでお話をうかがいたいと思います。堀口先生、どうぞよろしくお願いいたします。
堀口 お願いします。
―― 今回、浮世絵シリーズ、葛飾北斎ということでございますけれど、北斎の名前をご存じない方というのは少ないだろうと思うのですが、北斎はどういう方なのでしょうか。
堀口 北斎は本当に燦然と輝く、日本の芸術界の太陽のような存在です。
もう北斎なくして日本の芸術は語れません。例えば、私はアニメとか漫画も好きなのですけれど、そういう後世のアートであったり、二次元媒体に与えた影響も非常に大きな人なのです。
―― これは後でご紹介いただきますけれど、本の挿絵など見ると、まるで『少年ジャンプ』を思わせるようなすごい迫力のある挿絵ですよね。
堀口 (当時)今でも漫画で使われているような表現をすでに駆使して、自分のものにしていらっしゃる方なので素晴らしいですし、彼の作品が素晴らしいのはもちろんなのですけれど、個性というものを知っていくと、「なるほど、こういう人だからこの絵が生まれたのか」というようなことも分かってきて、そういった部分でもすごく面白い人だと思います。
―― 今回の講義ではその北斎の人生に添いながら絵を紹介していくということで、ざっと事前に少しお話をうかがうと、よくこういう人が生きていられたなといいますか。
堀口 そうですね。
―― 言葉を選ばずにいうと、芸術バカといいますか、そういう人がきちっと芸術家として生きていく素地が江戸時代にはもうあったということですね。
堀口 まさに生き方を含めてアーティストという感じの人ですね。
―― ですよね。そのあたりの魅力も今回楽しみにしていただければと思います。また、葛飾応為という娘さん、今回その2人を取り上げることで、その絵の変遷とか北斎の人生とか、違った角度からも光を当てようということなのですが、この応為という人はどういう人なのですか。
堀口 応為は北斎の娘ということで知られていると思うのですけれど、その作品を見たときに受ける印象は――私は学生の頃に史料集で初めて彼女の絵に出会ったのですけれど――非常に繊細で、「なるほど、男性の...
●北斎なくして日本の芸術は語れない
―― 皆さま、こんにちは。
堀口 こんにちは。
―― 今回は堀口茉純先生に「葛飾北斎と応為」というテーマでお話をうかがいたいと思います。堀口先生、どうぞよろしくお願いいたします。
堀口 お願いします。
―― 今回、浮世絵シリーズ、葛飾北斎ということでございますけれど、北斎の名前をご存じない方というのは少ないだろうと思うのですが、北斎はどういう方なのでしょうか。
堀口 北斎は本当に燦然と輝く、日本の芸術界の太陽のような存在です。
もう北斎なくして日本の芸術は語れません。例えば、私はアニメとか漫画も好きなのですけれど、そういう後世のアートであったり、二次元媒体に与えた影響も非常に大きな人なのです。
―― これは後でご紹介いただきますけれど、本の挿絵など見ると、まるで『少年ジャンプ』を思わせるようなすごい迫力のある挿絵ですよね。
堀口 (当時)今でも漫画で使われているような表現をすでに駆使して、自分のものにしていらっしゃる方なので素晴らしいですし、彼の作品が素晴らしいのはもちろんなのですけれど、個性というものを知っていくと、「なるほど、こういう人だからこの絵が生まれたのか」というようなことも分かってきて、そういった部分でもすごく面白い人だと思います。
―― 今回の講義ではその北斎の人生に添いながら絵を紹介していくということで、ざっと事前に少しお話をうかがうと、よくこういう人が生きていられたなといいますか。
堀口 そうですね。
―― 言葉を選ばずにいうと、芸術バカといいますか、そういう人がきちっと芸術家として生きていく素地が江戸時代にはもうあったということですね。
堀口 まさに生き方を含めてアーティストという感じの人ですね。
―― ですよね。そのあたりの魅力も今回楽しみにしていただければと思います。また、葛飾応為という娘さん、今回その2人を取り上げることで、その絵の変遷とか北斎の人生とか、違った角度からも光を当てようということなのですが、この応為という人はどういう人なのですか。
堀口 応為は北斎の娘ということで知られていると思うのですけれど、その作品を見たときに受ける印象は――私は学生の頃に史料集で初めて彼女の絵に出会ったのですけれど――非常に繊細で、「なるほど、男性の...