バッハで学ぶクラシックの本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
12世紀後半の細密画から絵解きするリベラルアーツ
第2話へ進む
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
樋口隆一(明治学院大学名誉教授/音楽学者/指揮者)
クラシック音楽に関心がある人もない人も、バッハの名を耳にしたことはあるのではないだろうか。バッハの音楽がなぜ人を惹きつけるのかを考えるためには、西洋のクラシック音楽の伝統を理解する必要があると、樋口隆一氏は力説する。シリーズ第1話である今回は、まず中世ヨーロッパの学問の一つとして音楽が取り上げられてきたことに触れ、西洋クラシック音楽の豊穣な歴史の端緒について解説する。(全9話中第1話)
時間:8分11秒
収録日:2019年9月19日
追加日:2019年11月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●クラシック音楽をめぐるさまざまな問い


 皆さん、こんにちは。樋口隆一と申します。今日は「バッハで学ぶクラシックの本質」というお話をさせていただきます。

 私自身、バッハの音楽の研究、そして指揮を生涯の課題としてきました。また、音楽の演奏家や、それから音楽ファンの皆さんにも、さまざまな素晴らしい音楽がありますが、最後はバッハに戻るという方が多いのです。それはなぜだろうかということを考えてみたいのです。

 それから、西洋のクラシック音楽の本質とはいったい何か。少し難しい話になるかもしれませんが、一度この問題についても考えてみたいですよね。

 また、クラシック音楽はいったい何を表現したいのだろうということですね。これは案外分からないと思います。なんとなくムード音楽として、BGMとして聴いていて感じが良い。もちろんそういう側面もありますが、それだけではないだろうと思います。

 クラシック音楽が表現するのは、単なる感情でしょうか。つまり嬉しい、悲しい、あるいは誰かが好きだといった感情でしょうか。もちろんそれもあると思います。しかし、その他にも何か特別な世界観や宇宙観がどうもありそうですね。その辺りが面白いところなのです。

 そしてまた、西洋の文化の中で、どうもこのクラシック音楽は特別な位置づけにありそうです。

 こういったことを、バッハのお話にたどりつく一つの前提としてお話ししたいと思っております。


●リベラルアーツのルーツはヨーロッパの学問的伝統にある


 「リベラルアーツ」という言葉を最近、大学のいろいろなカリキュラムなどで耳にするようになりました。この言葉はどういう意味があるのでしょうか。ヨーロッパの大学、また大学以前の修道院の学校などの教育機関で、実は音楽が教えられてきました。そこには、七つの学科がありました。これらは自由7学科、また7学芸と訳されることもありますが、ラテン語では、「septem artes liberales」と呼ばれます。英語では、「seven liberal arts」となります。

 「liberal」とは何でしょうか。よく学生から、選択しなくても良い自由な科目なのかという質問があります。少し誤解を招きますが、そうではありません。実は「自由」とは、そもそも古代ギリシアの自由人からきた言葉です。古代ギリシアは奴隷社会でしたから、奴隷が働きました。肉体労働は奴隷がするの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政