●中世の絵から見るリベラルアーツ
さあ、ここですてきな絵をお目にかけましょう。これは、女子修道院長であるヘルラート・フォン・ランツベルクという人が書いた「愉楽の庭」(Hortus deliciarum)、つまり楽しみの庭という文書の中で、挿絵として出てくる12世紀後半に描かれた細密画で、7自由学芸(学科)のリベラルアーツについて絵解きしているものですね。
周りにいるのが7自由学芸ですが、真ん中に王冠をかぶっている人は「Philosophia」と書いてあって、哲学を意味します。そこで台詞があって、「私は哲学で、私の配下にある学芸を七つの部分に分ける」と言っているのですね。それで七つになっているわけです。手に持つ帯の左の方には、「全ての知は神より出づる」とあります。中世ですからね。とにかく洋の東西を問わず、分からないことは神様にお任せしたわけです。しかし、その分からないことの中身を知りたがったということです。右側には「神を求める者のみが賢者としてふるまうことができる」と書いてあります。
そして、Philosophiaの胸から水が流れていますね。左に四つ、右に三つです。左の流れの下には、「哲学からは自由学芸と呼ばれる叡知の七つの流れが出づる」と書いてあります。右側は、「七つの自由学芸は精霊の道具を形づくるもので、文法、修辞学、弁証法、音楽、算術、幾何、天文学の七つから成る」、と。そして、2人の人物がいて、左がソクラテスで、右がプラトンだと、ちゃんと書いてあります。
●文科系3科目を絵解きする
さて、この女性たちについて、一番上から右に説明していきましょう。
最初は文法です。「Frau Grammatica」と呼ばれます。左手に教科書を持っています。文法は一生懸命勉強しないといけません。右手には鞭を持っています。今はもう日本の学校では許されなくなりましたが、ヨーロッパでも昔は怠けている子は鞭でぶたれたのです。そこの下には、「誰もがFrau Grammatica(文法)によって、文章、文字、シラブルの何であるかを学ぶ」と書いてありますね。
その次は修辞学です。「Rethorica」と呼ばれます。昔の写本は読みにくいですが、左手に書き板を持っているのですね。今ではスマートフォンを使うのでしょうが、当時は板にチョークなどで書くわけです。そして、右手に持ったペンあるいは鉄筆で書いています...