なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答
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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
芸術と文化
三宅香帆(文芸評論家/京都市立芸術大学非常勤講師)
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社新書)では、日本人の本の読み方の変遷を追うとともに、明治以降、日本人が読んできた本を知ることで、日本の世相や文化史を克明に伝えている。本講義では2回にわたり、本書を下敷きにして時代ごとに注目すべき本と当時の出来事等を取り上げながら、書名として挙げられている大きな問いについて解説いただく。第1話では明治期の『西国立志編』(中村正直訳)から平成7年に大流行した『脳内革命』(春山茂雄著)に至るベストセラーを振り返ってみる。(全2話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分49秒
収録日:2024年8月26日
追加日:2024年10月6日
≪全文≫

●読書の歴史:明治編――黙読と『西国立志編』の大流行


―― 皆さま、こんにちは。本日は三宅香帆先生に読書論のテーマでお話をいただきたいと思っています。三宅先生、どうぞよろしくお願いいたします。

三宅 お願いします。

―― 三宅先生は、こちらの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)という大変今ベストセラーになっている本をお書きになっています。(今日は)この本を中心にお話を進めたいと思います。もしかすると「テンミニッツTV」の視聴者の皆さまには、「働いていても、本は読んでいたけれどね」という方も多いかもしれません。しかし、実はこの本を読んでいくと、だんだんその心が分かってくるようになっています。一つのメッセージが「ノイズ」ということになるのですが、これについては後ほど(第2話で)三宅先生にお話を伺ってまいりたいと思います。

 もう一つ、この本が非常に特徴的なのは、明治からの日本人がどのように本を読んできたかということを非常に分かりやすくコンパクトにまとめてくださっている点です。ですから、例えば昭和世代の人たちからすると、自分たちが読んでいた本はどういうものだったかを客観的に見せていただけるといいますか、「そういう捉え方ができるのか」と刺激をいただける。このあたり、三宅先生はお書きになるにあたって、どのようなところに一番ポイントを置いて、読書の歴史の部分をおまとめになったのでしょうか。

三宅 そうですね。私の場合、日本人の読んできた本を通して日本の歴史を語れたらいいと思っていたので、たくさん読まれた本を中心に取り上げました。

── では、読書の歴史からお話を伺ってまいりたいと思います。

 まずは明治時代ですね。江戸時代とは全く違う時代になっていたわけですが、一つ印象的なこととして三宅先生がお書きになっているのが、実はこの時代に「黙読」ができたということです。それまで、(本は)声に出して読んでいたということでよろしいですか。

三宅 そうですね。全員が全員というわけではないと思いますが、読書というものがそもそも個人で、自分の目で読むものになったというのが、明治時代の大きな変化だと思います。それまで、江戸時代の読書というと、基本的に「みんなで読む」もので、ともかく個人個人で好きなものを読むという形ではなかっ...

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