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ノイズを楽しむ――半身社会の「読書と教養のすすめ」

なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(2)ノイズと半身社会の処方箋

三宅香帆
文芸評論家/京都市立芸術大学非常勤講師
概要・テキスト
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社新書)
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「読書はノイズを含むもの」と語る三宅香帆氏。ノイズとは知りたいことの背景となる知識やその後ろにある歴史的文脈を教えてくれるものだが、仕事が忙しく余裕がなくなってくると、そうした周辺情報がまさにノイズだと感じてしまい、本よりスマホのほうを選ばせる原因にもなる。こうしたタイパ・コスパ傾向にある現在において、本を楽しむ、教養に浸るためには、どうすればいいのだろうか。その方法について、鍵となることばとして「半身」というホットワードを挙げて、楽しみとしての教養についてとともに語る。(全2話中第2話)
時間:12:25
収録日:2024/08/26
追加日:2024/10/13
キーワード:
≪全文≫

●ノイズとは知りたいことの背景知識やその後ろにある歴史的文脈


―― 冒頭で申し上げましたが、多分この本の主題の一つと思われるものに「ノイズ」の話があります。

 これは、本のテーマである「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」とも非常に結びついてくると思います。例えば私より上の世代の人では、「いや、自分は読んでいました」という方もいると思いますし、あるいは「スマホができたから、スマホに時間をとられて読めないのではないですか」という答えもあると思います。しかし、先生がこの本で訴えていらっしゃるのは、案外それだけではないということですね。

三宅 そうですね。読書というのはやはりある程度ノイズを含むものです。それは知りたいことの周辺知識だったり、背景文脈を教えてくれるものだと思いますが、仕事に忙しかったり、自分のことしか考える余裕がなくなったりしていると、そのような周辺知識を得るような情報を「ノイズだな」と感じてしまう人が増えているのではないでしょうか。

―― 今のノイズということについて、もう少し分かりやすくご説明いただくと、どういうイメージになりますか。

三宅 そうですね。例えば私の場合、知りたいことがあったときに、その知りたいことの背景知識だったり、後ろにある歴史的文脈を教えてくれるのが一番の特徴だと思っています。その情報というものが、余裕のあるときには面白い話、理解を深められる知識として受け入れられるのだけれど、忙しいときだと、その背景知識はいらないと感じてしまい、ノイズに感じてしまう人が増えているのではないでしょうか。


●「半身」で働くことで、社会の方向性を変える


―― ここは「テンミニッツTV」というメディアの特性もあって、いろいろお聞きしたいところなのですが、「でも、文脈は大事ですよね」という方も多いと思います。多分、歴史的な文脈が分かっていないと、ちゃんとした判断はできないのではないか、というイメージを持つ方も多いと思います。ところが、もうそういう考え方はなかなか難しい時代になってしまったということですか。

三宅 そうですね。

―― (そうした中、)例えば「文脈が大事だよ」と訴えるとすると、どういうイメージになるのでしょうか。もうこれは訴えようがないのか。(あるいは)どこをどういうふうにすれば、文脈...
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