学力喪失の危機~言語習得と理解の本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上げて、数や言葉、その概念を理解していくプロセスについて解説する。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:10分06秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年10月6日
≪全文≫

●真の理解をたしかめる「たつじんテスト」


―― 私も先生のご本を読んでいて非常に興味深かったのは、同時に怖いなと思いましたのが、まさにその「たつじんテスト」です。先生がお作りになる1つのきっかけとして、例えば分数の問題、特に文章問題になるとできないという事例で、それをどうするかという問題意識もございました。

 先生が象徴的に挙げておられたのが2分の1と3分の1、どちらが大きいですかというところですね。

今井 はい。

―― お子さんたちも学校で習っているので分数の計算自体はできるのだということでした。例えば、通分したり、いわゆる式だったらできるのだけれど、文章題で、こと意味を問うような問題ですとか、あるいは今申し上げたような2分の1と3分の1、どちらが大きいでしょうかというような問いのされ方をされてしまうと、そもそも分数の概念、数の概念を実感として分かっていないので、そこが間違えてしまうのだということでした。

 だから、式とかのやり方を覚えて、こなしてはいるのだけれど、本当のところでは理解していないと。本当に理解しているかどうかを見極めるのが「たつじんテスト」だということで、話が進んでいくところに非常にスリリングなものも感じたのですけれど、このあたりも非常に興味深いところですね。

今井 ありがとうございます。そうなのです。だから、人は表面的には操作はできるようになりますが、意味というものが分からないと、進めないのです。そこが一般的に、算数が苦手な子どもがすごく多いといわれていて、特に分数は本当に鬼門なのです。

 それは先生方も感じているし、分数でつまずいてしまう子どもが多いのです。非常にたくさんいるというのは、日本だけの問題ではなくて、世界中の問題になっているのです。

 だから、興味深いなと思うのは、人間は動物と違って2分の1という概念がないと生きていけないかというと、おそらく生物としては生きていけるのです。だいたい半分を分け合うとか、そういうことも、記号を作らなくても生きていけます。でも、私たち人間は言葉というものをつくり、記号、特に分数のような特殊な記号をたくさんつくって、それをある意味で私たちの身体の一部、ある種の思考の一部にして、それを身体の延長のようにして操作するというようなことをしつつ、人間の文化・文明...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫