学力喪失の危機~言語習得と理解の本質
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アブダクションは間違える…でも人間社会の発展に不可欠
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(3)アブダクションと人間の創造性
哲学と生き方
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
4.気づきを与えるカードゲームの魔法、大事なのは足場かけ
2025年10月13日配信予定

5.人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
2025年10月14日配信予定
講義一覧を見る▼
ある概念を理解するためには、いくつかの事例をもとにその概念の適用範囲を見定めるような推論を働かせる必要がある。いわば「点から面」へのそうした推論は「アブダクション」と呼ばれ、人間社会の発展に欠かせない役割を果たしてきた。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:7分55秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年10月7日
≪全文≫

●学習を助ける「アブダクション」という推論形式


―― そこで、先生が例としておっしゃっていたシステム1とシステム2の概念もお話しになっています。

 例えば、先ほどのウサギの例ですと、白くてかわいらしい動物がウサギかと思っていたら、直感的にそう子どもが判断していたら、かわいくて白い動物がいたけれど、これは猫だよと教えられると、今までの直感は違ったのだということに自分で気がつく。ですから、白くてかわいいのはウサギなのだなと思ったのが、システム1の直感だとすると、その後で白くても、これは猫といって、猫もかわいいでしょとか言われると、これは違ったのだということで、この気づきがシステム2ということでしょうか。もう自分でつくった概念の見直しが行われてきて、それの繰り返しでだんだんと正しい概念を身につけるのだというお話もございました。そのあたりの過程というのも本当に興味深いお話ですね。

今井 そうですね。だから、そういう人間の知識習得の仕方、言葉もそうですし、それ以外の知識の習得の仕方も基本的には、私が考えた言葉ではないですが、「アブダクション(abduction)」といわれる推論の仕方なのです。

 これは、いわゆる推論というと、学者の方はたいてい演繹推論のことを思い浮かべると思うのです。哲学、論理学でも偉いのは演繹で、アブダクションはむしろ正しい推論ではないといわれます。それはその通りで、正しくないのです。すごく間違うのです。

 ではアブダクションがどう働くかには、いくつかの側面があるのですけれど、言葉の習得でいうと、いちばん典型的なのは、点を面にするということをしないといけない(ということ)です。ウサギという、目の前に「ウサギだよ」と言われたモノに対して、ウサギという概念を推論するには、1つの点、あるいは2つ、3つ、少ない点から面をつくらないといけない。ウサギの範囲を考えないといけないということです。

 (つまり)面をつくらないといけない(ということですが)、でもその面をつくるというのは、ウサギにもものすごくたくさんいるし、歩くという動作にしても、歩く事例はものすごくたくさんありますよね。その中で、ほんのいくつかの事例で「歩くとはこうだ」と決めつけてしまうのは、ある種の思考の跳躍というも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司

人気の講義ランキングTOP10
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(2)クーデターの成功条件とリスク
軍の配置を見れば分かる!台湾のクーデター対策とは
上杉勇司
『孫子』を読む:虚実篇(1)いかに主導権を握るか
「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性
田口佳史
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(5)日本外交の進むべき道
中国の「国進民退」に危機感…これからの日中関係を読む
小原雅博
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子