学力喪失の危機~言語習得と理解の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
アブダクションは間違える…でも人間社会の発展に不可欠
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(3)アブダクションと人間の創造性
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
ある概念を理解するためには、いくつかの事例をもとにその概念の適用範囲を見定めるような推論を働かせる必要がある。いわば「点から面」へのそうした推論は「アブダクション」と呼ばれ、人間社会の発展に欠かせない役割を果たしてきた。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:7分55秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年10月7日
≪全文≫

●学習を助ける「アブダクション」という推論形式


―― そこで、先生が例としておっしゃっていたシステム1とシステム2の概念もお話しになっています。

 例えば、先ほどのウサギの例ですと、白くてかわいらしい動物がウサギかと思っていたら、直感的にそう子どもが判断していたら、かわいくて白い動物がいたけれど、これは猫だよと教えられると、今までの直感は違ったのだということに自分で気がつく。ですから、白くてかわいいのはウサギなのだなと思ったのが、システム1の直感だとすると、その後で白くても、これは猫といって、猫もかわいいでしょとか言われると、これは違ったのだということで、この気づきがシステム2ということでしょうか。もう自分でつくった概念の見直しが行われてきて、それの繰り返しでだんだんと正しい概念を身につけるのだというお話もございました。そのあたりの過程というのも本当に興味深いお話ですね。

今井 そうですね。だから、そういう人間の知識習得の仕方、言葉もそうですし、それ以外の知識の習得の仕方も基本的には、私が考えた言葉ではないですが、「アブダクション(abduction)」といわれる推論の仕方なのです。

 これは、いわゆる推論というと、学者の方はたいてい演繹推論のことを思い浮かべると思うのです。哲学、論理学でも偉いのは演繹で、アブダクションはむしろ正しい推論ではないといわれます。それはその通りで、正しくないのです。すごく間違うのです。

 ではアブダクションがどう働くかには、いくつかの側面があるのですけれど、言葉の習得でいうと、いちばん典型的なのは、点を面にするということをしないといけない(ということ)です。ウサギという、目の前に「ウサギだよ」と言われたモノに対して、ウサギという概念を推論するには、1つの点、あるいは2つ、3つ、少ない点から面をつくらないといけない。ウサギの範囲を考えないといけないということです。

 (つまり)面をつくらないといけない(ということですが)、でもその面をつくるというのは、ウサギにもものすごくたくさんいるし、歩くという動作にしても、歩く事例はものすごくたくさんありますよね。その中で、ほんのいくつかの事例で「歩くとはこうだ」と決めつけてしまうのは、ある種の思考の跳躍というも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
「禅とは何か」藤田一照師が禅と仏教の心を説く…自発性を重んじる
藤田一照
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
中国春秋戦国時代と始皇帝(7)始皇帝を支えた家臣たち
始皇帝を支えた家臣たち…史実からいかに実像を描いていくか
鶴間和幸
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾