●長男が最も愛した渡部昇一の名著が復刊
―― 皆さま、こんにちは。本日は渡部玄一先生にキリスト教についてのお話をうかがいたいと思っています。先生、よろしくお願いいたします。
渡部 よろしくお願いします。
―― 以前、渡部玄一先生にテンミニッツTVの対談にご登場いただいたときに、お父様の渡部昇一先生のご本の中で一番面白く印象深く読んだのが『ドイツ留学記』という本だというお話をいただきました。今回は、そのお話を詳しくおうかがいできればと思います。上巻のほうは主にドイツ留学体験についてで、下巻のほうはキリスト教社会についてですね。
渡部 そうですね、ドイツで父が思いつき、考え、悟ったことです。上巻にもいろいろな考えは入っていますが、自分の体験談全般が主です。下巻では、それらの体験から得た自分の考えを、また新たに体験したことを紹介しながら、特にキリスト教について書いています。
父は当時、キリスト教の中でもカトリックに入信していたので、カトリックとプロテスタント(ドイツでは「エヴァンゲリッシェ」と呼びます)の違いについて考察しています。それが西洋全体を理解するのに非常に大切であるということを悟った経緯が克明に書かれているのが、下巻です。
―― 今般、その下巻が『わが体験的キリスト教論』というタイトルで再刊されるとお聞きしています。そこでぜひ今回、下巻の内容を中心にお話をおうかがいできればと思っています。
●非常に規範的だった留学生・渡部昇一
―― 今、おおまかなご紹介を玄一先生からお話しいただきましたが、そもそもどういうところが面白いとお感じになられたのか、お話しいただけますか。
渡部 そうですね。父の本の中で本当に好きな本は何冊かあるのですが、この本は特別です。というのは私も留学をしていて、アメリカに6年間いましたし、その後1年ほどドイツにいたことがあります。ドイツに行く前には、この本を読んでいました。
最初の留学体験は1990年代でした。当時は留学する日本人も多く、「留学は楽しい」というのが一般的な認識でした。私の場合は音楽ですから、つきたい先生がいて、その先生につくために留学するということで、目的がはっきりしていました。そのため、留学生活はそこそこ実りがあったと思います。
そのとき、ニューヨークにはカラオケバーなどがあり、そこに毎日入り浸っている...
(渡部昇一著、ビジネス社)