アメリカの理念と本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『風と共に去りぬ』で表現されたアイルランド移民の精神史
アメリカの理念と本質(5)アメリカのアイルランド問題
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
アイルランド本国で始まったアングロ・サクソンからの差別は大西洋を越えても消えず、逆にアメリカへ移民するアイルランド人たちに不撓不屈の精神を植え付けた。名作『風と共に去りぬ』には、その姿がビビッドに描かれている。アメリカに今なお残るアイルランド問題は、西洋文明の負の遺産といえよう。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分36秒
収録日:2024年6月14日
追加日:2024年9月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●現代アメリカになお根深く残るアイルランド問題


中西 アメリカという国を考えるときに、(前回話したカトリックへの差別感が)複雑に絡んできます。宗教の話から少し民族の話になりますが、アイルランド問題だけはアメリカ理解に絶対不可欠です。たとえばアメリカの歴代大統領で、ジョン・F・ケネディが初めてカトリック教徒でアメリカ大統領になったときには、センセーショナルな報道をされました。今から60年以上前のことです。

 ですけれど、アイルランド人がアメリカの大統領になるということ、「アイルランド人といえどもプロテスタントならまだ許せるが…」ということが、非常に頭の古いイギリス、イングランドの人たちには、当時はありました。私は1960~1970年代にイギリスにいましたが、ケネディに対してあまりいい感情を示さないイギリスの人たちは存在していました。

 それがなぜなのか、当時は分かりませんでしたが、イングランドにとってのアイルランドは、古い時代の戦前の日本、あるいは戦後でもしばらくはあった日本人の朝鮮半島に対する差別感といいますか、旧植民地に対する偏見や差別感と一脈通じるものがあるかもしれません。実際、韓国の学者がよく私たちにアイルランド問題の理解を促すために、「(イギリスとアイルランドは)日韓関係と似ているのだ」と教えてくれたりします。

 それは別にして、いずれにしてもアイルランド人にとってアメリカに移住するということは、「イギリスを見返すためにアメリカに行って出世するのだ。金持ちになるのだ。大地主になるのだ。土地を取り上げたイングランド人を見返してやるのだ」という、ものすごい怨念が大西洋を渡っていって、ケネディ家を築いたり、あるいはレーガンもそうです。レーガンはカトリックではありませんでしたが、やはりアイルランド移民の子孫ですね。そして、バイデン氏もカトリックで、アイルランド移民の子孫ですね。


●『風と共に去りぬ』でアイルランド移民の感情を理解する


中西 この怨念を理解するのは非常に難しいのですが、あえて日本人に分かりやすく説明するならば、『風と共に去りぬ』という名作があります。ハリウッド映画にもなりましたが、あそこに描かれている通りです。

 つまりあれは、アイルランド移民が本国でのイングランド人からの迫害を逃れて、アメリカに移住した話です。その移住先がたまたま南部だ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫