アメリカの理念と本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カトリックでも例外!? アイルランドに対する偏見とその背景
アメリカの理念と本質(4)アングロ・サクソンの社会
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
ヨーロッパのカトリック社会では人と人のつながりを大切にするが、プロテスタントの国々では個人主義がより先鋭に主張される。中でもアングロ・サクソンの社会に冷たさを感じた日本人留学生はイギリスに留学した夏目漱石をはじめ明治以来多かっただろうし、森鴎外をはじめ当時の日本のエリートは比較的情緒的なドイツで学んだ者が多かったようだ。そうした中、カトリックでも例外なのがアイルランドだと中西氏は言う。アングロ・サクソンにとってアイルランドはどのような存在なのか。(全10話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分15秒
収録日:2024年6月14日
追加日:2024年9月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●濃厚に人とつながるカトリック、個人主義のプロテスタント


―― 中西先生のお話の中では、現代にたとえるとすると、イスラム教原理主義の勢力が国家をつくるようなところとどこか軌を一にするところがあるというお話が、とても印象深かったです。日本人が西洋の国々を見る場合、ピューリタニズムであるアメリカと、カトリックがベースになっている国々を比べた場合、先生はどのような違いがあると思われますか。

中西 そうですね。現代人の目から見て、私のヨーロッパ理解では、やはりカトリックの国ではどちらかといえば個人主義が弱いといいますか、逆にいうと人と人のつながり、とりわけ家族とか、地域社会とか、一つの団体とか、企業とか、組織などの人間同士のつながりの中に救いを見いだそうというところが濃厚に感じられるのが、カトリックの社会だと思います。

 プロテスタントの国はやはりどこもカトリックに比べれば、個人主義がより先鋭に主張されることが多いのです。その中でもピューリタニズムは、いわゆるプロテスタンティズムとは(一線を画しています)。

 普通のプロテスタントというと、ドイツ発祥のルター派教会ですが、今では北欧にもオランダにも、またオーストリアや日本にもたくさんあります。また、社会的にいうと、ルター派のプロテスタント国家は、国家主義というか、国家あっての宗教であるというところが強いと思います。

 それは、イギリスの国教会も少しそういうところがあります。「一国教会主義」というのでしょうか。


●アングロ・サクソンの個人社会とカトリック


中西 それから、ドイツという国の歴史は、戦争のときや三国同盟など、日本の歴史と時々パラレルになることがあります。

 それ以外にも明治の森鴎外以来、ドイツに留学した日本人は非常にドイツ社会になじみやすかった。イギリスに留学した夏目漱石とはそこが違う。個人差もありますが、漱石の場合、イギリスの個人主義に対して非常に冷たさを感じ、一人寂しく寄る辺なく、ロンドンの下宿で悶々としていたイメージがあります。それに対して鴎外は、ドイツの社会で生き生きとした留学生活を送っていたように思います。

 明治以来、戦前の日本のエリートは主にドイツへ留学し、医学や経済学、憲法学や法律などの学問もやはりみなドイツから学んでいます。どこか相性がいいのでしょう。それはやはり、どこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ