民主主義の本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「みんなで決める=民主主義」ではない…法の支配の真意
第2話へ進む
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このような時こそ、今一度、民主主義の本質について、真正面から考えることが必要だろう。橋爪氏は、「民主主義というものは、これまでに考えられた制度のうち、最善のものである」という。なぜ、そういえるのか。民主主義の歴史は古いが、人々が一定のルールに基づき投票によって代表者を選ぶ近代民主主義の発端はキリスト教にある。民主主義の本質について深掘りする今回のシリーズ講義。まずは近代民主主義の背景にあるキリスト教的な文脈について解説する。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分32秒
収録日:2024年2月5日
追加日:2024年3月26日
≪全文≫

●民主主義は誤りを正すことができる唯一の仕組み


―― 皆さま、こんにちは。本日は橋爪大三郎先生に「民主主義の本質とは」というテーマでお話をいただきたいと思っております。橋爪先生、どうぞよろしくお願いをいたします。

橋爪 よろしく。

―― 橋爪先生は、岩波書店さんから『権力』という本をお出しになっていらっしゃいまして、権力について、いろいろな要素が書かれた1冊になっています。その中の第5章で、民主主義について論じておられます。ということで、本日はその第5章での議論をもとにしながら、民主主義について深掘りしてまいりたいと思っております。

 ということで、この本の第5章の冒頭で書かれていることで、非常に印象深いのが「民主主義というものは、これまでに考えられた制度のうち、最善のものである」という問題提起です。これはいろいろな文脈で聞くこともございますけれど、橋爪先生がお考えになるに「なぜ民主主義が最善なのか」、ここについてはいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。

橋爪 民主主義というのは仕組みなのですけれど、ひと言でいえば「法の支配」です。法が上で、その下に人がいる。法が上で、その下に権力がある。人間が権力を持つと、間違える場合がある。間違えた場合に、これを正す方法があるのか。法があれば、法に従って、その誤りを正すことができる。その仕組みを持っているのが民主主義で、民主主義以外のものはそういう仕組みがない。ゆえに、いちばん優れているといえると思います。

―― なるほど。ただ、例えばヒトラー時代のナチスもそうですし、あるいはスターリン時代のソ連などもそうかと思うのですが、一応、法律というものはあったかと思います。それはまた性質が違うということになるのでしょうか。

橋爪 ヒトラーの場合でいいますと、ワイマール共和国の憲法がありましたが、全権委任法があって、議会が総統のヒトラーに立法権を無期限で預けてしまい、憲法違反の法律が議会によって通されました。憲法が壊れてしまい、ザルに穴が開いたようなものです。だから、憲法が機能しなくなりました。この時点で民主主義ではなくなりました。

 ソ連の場合は、共産党の独裁的な権力というものがありました。憲法は形ばかりの付けたりです。憲法よりも共産党が上であるということです。だから、いわゆる民主主義ではないのです。

―― なるほ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫