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「みんなで決める=民主主義」ではない…法の支配の真意

民主主義の本質(2)「法の支配」とは何か

橋爪大三郎
社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
『権力』(橋爪大三郎著、岩波書店)
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日本では権力者は嫌われる。歴代天皇も、大きな権威としての位置づけはあったが、権力はほとんど持たない姿であることが主であった。しかも日本のスタイルは、「みんなで相談して物事を決めていく」というものであった。だから日本人は、そのようなスタイルが民主主義だと思いがちだ。しかし、そのようなスタイルは、民主主義とは違うのだと橋爪氏はいう。では、民主主義について、どのように考えるべきなのか。そのエッセンスを、近代民主主義の原点であるアメリカのキリスト教文化をもとに神と法の関係性からひも解く。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:31
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/02
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≪全文≫

●「みんなで話し合って決める」のが民主主義か?


―― 今のような経緯ですが、日本人にとっては、なかなかその宗教的な背景を理解しないままに民主主義を理解してしまうところがあると思うのです。

 先生が『権力』でおっしゃっている中でもう1つ印象深いのは、そもそも今のお話の中でもそうですけれど、民主的な社会をつくるのは自分たちの社会をより良くする云々という以前に、神の意思に沿うためだという動機があったということです。このあたりはどのように考えればよろしいのでしょうか。

橋爪 そこはなかなか大事なポイントなのですけれど、日本の社会はもともとそれなりに民主的であったというように、日本人は感じるのです。日本人は、誰かが威張って権力を振り回すということを嫌がるのです。その代わりに、みんなで相談して、みんなのために良いことを、みんなで決めようと思うわけです。

 ですから、中国の皇帝と違って、日本の天皇はほとんど権力を持っていないのです。なぜかといえば、権力を持っている支配者は嫌われて、憎まれますから、権力を持っていないことにする。権力を持っていないふりをする。これは、君主にとって生き延びる道です。ですから、そういう権力を持たない君主が代々続いてきた、という伝統があります。

 裏を返すと、中央政府が権力を持たないで、それぞれの村や町やいろいろな集団が自治をして、そして相談で物事を決めていくということが日本スタイルです。日本人は、これが民主主義だと思いがちなのです。

―― そうですね。おっしゃる通りです。

橋爪 でも、これは民主主義ではないのです。民主主義とは、みんなで物事を相談して決めましょうという考え方とは違うのです。ここが民主主義を理解するポイントです。

―― となると、どういうことになるのですか、

橋爪 まず、みんなで相談して物事を決めるとすると、みんな、いろいろな意見があるではないですか。みんながいろいろなことをいうではないですか。(そうなると)決まらないではないですか。でも、決めなければいけないではないですか。「そろそろこの辺でどうでしょう」という雰囲気になってくる。そうすると、「やっぱり、でも、私はこう思います」と言うかどうかだけれど、言いにくい。そこで我慢して、「全体の流れだから、これでいいかな」と思う。こういうものを「空気」というのだけれど(同調...
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