ヒトはなぜ罪を犯すのか
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罪とは何なのか?変容する罪の概念と迫られる善悪の判断
ヒトはなぜ罪を犯すのか(3)変容する文化と罪の本質
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
ヒトは社会生活を送る上で、文化的規範として規範・慣習・掟などを発展させてきた。しかし、文化は社会状況の変化とともに変容し、過去に容認されていたことが罪となることが多く、またその逆もしかりだ。法律は国民国家を支えるものだが、そのための「善悪」の線引きはけっして簡単ではない。罪にも普遍的罪、社会的罪、そして個人の内面による判断としての罪があり、それぞれどう捉えればいいのか。この大事な問いについて考えていきたい。(全3話中第3話)
時間:10分35秒
収録日:2023年12月11日
追加日:2024年3月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●文化とは何か――世代を超えて伝えられていく情報の総体


 さて、これまで一応は(ヒトは)何をするべきかということで、快を追求して不快を回避するのだけれど、そこに短期的・長期的、他人のこと・自分のことで、いろいろ葛藤があるのをどう考えているか、どう処理しているか、そういう脳の部分についてお話をしました。結構複雑になっています。

 次は文化(のお話)です。

 ヒトは、みんなで暮らしている。一緒に社会を作って暮らしているので、どうしたらいいかという「文化的規範」というものを持っています。そういう規範、慣習、掟のようなものがどのように発展してきたかというと、それは文化の変容なので、「文化進化」の研究というものがたくさんあります。

 では、結局「罪とは何か」となると、その社会において利害対立があり、それをどういう行動に至ったかによって犯罪としたり、犯罪ではないとしたりする。

 現代社会のような法律や警察がなかった時代では、みんながその文化や集団の中で一応許容しているものとするか、絶対に駄目だとそれを認めず、リンチのように「これは駄目です」とみんなで排除するのか、そういうことが法律ではなく習慣としてみんなで共有されていたわけです。

 そういうものが一つ一つ大きな文書として書かれ、それに基づくシステムが作られたのが、現在の国民国家であるわけです。

 では、文化とは何でしょう。これについて、動物の行動関係の研究では、「遺伝情報以外で、世代を超えて人々の間で伝えられていく情報の総体」を文化と呼んでいます。ある集団の構成員の全員に共有されていて、それが遺伝ではないのだけれど、そういう知識情報が世代を超えても伝えられていくもの。それを文化と呼びましょうと。

 ある集団に生まれてきた人にとっては、生まれたときからそういう文化があるわけですから、その文化が、適応するべき直接の環境となります。すなわち、日本人は日本文化の中に生まれてくるので、日本文化を取り入れ、それに適応していかなければ、日本社会ではうまく暮らせないことがたくさんあるわけです。

 自然環境に適応しなければいけないのも同様で、暑かったり寒かったり雨が降ったり、いろいろありますが、何よりヒトは自分を取り巻く文化に適応しないといけ...

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