●高等教育の復権が必要な現代日本
―― (寛政の改革で「科挙」がモデルになったような)仕掛けが必要でそれがあればいいのですが、今は優秀な人のロールモデルがなくて困っている時代ですよね。優秀な人に対するロールモデル(を社会)が提供できなくなっていると。
中島 いろいろな世界の学者とお話をさせていただいて、つくづく思うのは、海外の企業のトップなどの多くの方が博士号を持っていらっしゃることです。
―― そうですね。Ph.D.を持たれていますね。
中島 だから、われわれの日本社会と違って、教育にかける時間が長い。その方々の教養というのは、先ほどおっしゃったリベラルアーツが中心です。しっかりそれを持っている上で、政治や経済、社会に対する大局観をお持ちになっているわけです。
私は、日本もまず最低限、そこから始めてもいいのではないか、もう少し大学院で学んだり博士号を取ったりすることを尊重してもいいのではないかと思います。自分が大学の先生で、学生を抱えているからそう見えているのかもしれませんが、やはりもう少し学部教育の上でさらに学ぶことの意義を社会が受け入れ、尊重していく方向にいったほうがいいかなと思います。そういう意味では、第二の寛政の改革が必要なのではないかという気もいたします。
―― おっしゃる通りですね。1980年代ぐらいまでの日本の教育はけっこう進んでいたのですが、この40年くらいは経済がデフレによって停滞するのと同じように、教育もけっこう置いてけぼりになっている感が(あります)。
●Ph.DやMBAで昇進するアメリカ、ポスドクを放置する日本
中島 大学院に投資することも非常に大事だと思いますし、もう一つ大事なのは博士を取った後のことです。博士を取った後、どこかのポストに就職するまでの間はよく「ポスドク」といわれますが、ここが弱い。ここにちゃんと投資をしていないので、せっかく博士号を持っても生かせないわけです。
―― アメリカはあからさまな学歴社会なので、Ph.D.を取り、マスターを取ったほうが、明らかに圧倒的に得ですね。MBAをとった瞬間に(待遇が)変わって、2階級ぐらい特進しますね。
中島 はい。日本は逆ですね(笑)。
―― 逆ですよね。MBAプラスPh.D.を持っているほうがさらに(上へ)行きます。あれは、先生のいわれたカルチャーでしょう。「この人はハーバードのMBAだから」「...