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博士号が生かせない…ポスドク問題解消への方策はあるのか

寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(3)ポスドク問題と第二の「寛政の改革」

概要・テキスト
若者の「博士離れ」とともに「高学歴ワーキングプア・学歴難民」の新語が流行して数年。博士号取得後のポスドク問題も高齢化するばかりで、解消の道は見えない。博士号が優秀な若者から敬遠されていては、日本の競争力はさらに減退する。高等教育復権は、第二の寛政の改革として喫緊の課題である。(全3話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:13
収録日:2024/04/11
追加日:2024/12/29
≪全文≫

●高等教育の復権が必要な現代日本


―― (寛政の改革で「科挙」がモデルになったような)仕掛けが必要でそれがあればいいのですが、今は優秀な人のロールモデルがなくて困っている時代ですよね。優秀な人に対するロールモデル(を社会)が提供できなくなっていると。

中島 いろいろな世界の学者とお話をさせていただいて、つくづく思うのは、海外の企業のトップなどの多くの方が博士号を持っていらっしゃることです。

―― そうですね。Ph.D.を持たれていますね。

中島 だから、われわれの日本社会と違って、教育にかける時間が長い。その方々の教養というのは、先ほどおっしゃったリベラルアーツが中心です。しっかりそれを持っている上で、政治や経済、社会に対する大局観をお持ちになっているわけです。

 私は、日本もまず最低限、そこから始めてもいいのではないか、もう少し大学院で学んだり博士号を取ったりすることを尊重してもいいのではないかと思います。自分が大学の先生で、学生を抱えているからそう見えているのかもしれませんが、やはりもう少し学部教育の上でさらに学ぶことの意義を社会が受け入れ、尊重していく方向にいったほうがいいかなと思います。そういう意味では、第二の寛政の改革が必要なのではないかという気もいたします。

―― おっしゃる通りですね。1980年代ぐらいまでの日本の教育はけっこう進んでいたのですが、この40年くらいは経済がデフレによって停滞するのと同じように、教育もけっこう置いてけぼりになっている感が(あります)。


●Ph.DやMBAで昇進するアメリカ、ポスドクを放置する日本


中島 大学院に投資することも非常に大事だと思いますし、もう一つ大事なのは博士を取った後のことです。博士を取った後、どこかのポストに就職するまでの間はよく「ポスドク」といわれますが、ここが弱い。ここにちゃんと投資をしていないので、せっかく博士号を持っても生かせないわけです。

―― アメリカはあからさまな学歴社会なので、Ph.D.を取り、マスターを取ったほうが、明らかに圧倒的に得ですね。MBAをとった瞬間に(待遇が)変わって、2階級ぐらい特進しますね。

中島 はい。日本は逆ですね(笑)。

―― 逆ですよね。MBAプラスPh.D.を持っているほうがさらに(上へ)行きます。あれは、先生のいわれたカルチャーでしょう。「この人はハーバードのMBAだから」「...
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